気の利いた作りで中々楽しめる。
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント (2014-12-03)
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「小悪魔はなぜモテる?!」(2010米)
ジャンルロマンス・ジャンルコメディ
(あらすじ) 校内では目立たない存在だった女子高生オリーヴは、見えを張って初体験を済ませたと周囲に嘘をつく。その噂はあっという間に尾ひれが付いて学内中に広まった。その後、彼女の元に、ゲイのせいで虐められているブランドンという少年がやって来る。自分がゲイでないことを証明するためにセックスしたという嘘をついて欲しいと頼まれ、最初は断るオリーヴだったが、泣く泣く懇願されそれを聞き入れた。すると次の日から彼女の元に続々と童貞男子が集まってきた。こうして嘘のセックスを重ねていくオリーヴだったが‥。
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(レビュー) 不憫な童貞男子のために嘘のセックスをでっちあげる少女が、本当の恋を見つけていく青春ロマンチック・コメディ。
主人公オリーヴの健気な姿が好印象で、実に爽やかに見れる作品だった。意中の男子とハッピーエンドを迎える結末が安易に写ってしまったのは残念だが、終始気持ち良く見れる映画である。青春映画とはかくありなん‥である。
尚、劇中には「緋文字」という小説が登場してくる。これはアメリカの有名な古典文学で何度か映画化もされている作品である。その一番最初の映画化作品が所々に挿入される。しかし、何の説明もないまま引用されるので、一体この物語とどういう関係があるのかが分かりづらい。あらかじめ設定くらいは知っていた方が、今作はより深く楽しめるだろう。
「緋文字」は、姦通の罪を犯した女性が出産して、父親の名前を明かさないまま制裁にかけられてしまう悲劇のドラマである。実は、これはオリーヴの置かれている状況を暗に示したドラマであり、よく計算されている設定だと思った。オリーヴも「緋文字」のヒロインと同じように、嘘の姦通で苦しんでいくのだ。
そして、この映画が爽快な青春映画としてよく出来ているのはラストの処理の仕方である。オリーヴは「緋文字」の主人公と違って、最後に身の潔白を晴らして救われていくのである。このあたりの後味の良さが娯楽映画としてよくまとまっている。
映画の構成も中々上手い。冒頭にオリーヴが画面の手前に向かって話しかけるというショットが出てくる。その後も、ストーリーの合間に、このカメラ主観の映像が何度か登場してくるのだが、それが何を意味しているのかがクライマックスで明かされる。ある程度予想は出来たが、なるほどと思える構成だった。また、このクライマックスには、彼女のこれまでの”嘘が一掃される”というカタルシスがあり、そこに痛快さも覚えた。
演出は全体的に軽妙にまとめられている。一番感心させられたのは、オリーヴの嘘が学園中に拡散する時の演出である。スピード感あふれる早送り映像でスタイリッシュに表現されている。
また、笑える箇所も幾つかあり、個人的には友人のホーム・パーティーで行われる嘘のセックスが一番ヒットした。ブランドンがゲイでないことを証明するために、オリーヴは彼を連れて友人宅の部屋に入っていく。そこで嘘のセックスを演じるのだが、ドアの向こう側には聞き耳を立てる野次馬がわんさかと押し寄せる。二人は彼らにわざと聞こえるように喘ぎ声を出すのだ。しかし、どちらも実際にセックスをした経験がないので全然慣れていない。そのギクシャクしたやり取りが最高に笑えた。
オリーヴを演じるのはエマ・ストーン。とてもチャーミングな女優である。但し、余りにも可愛らしいので、今回のようなパッとしない少女役には不向きだと思った。役柄の割にキュートすぎてしまう。もっとも、彼女の明るさは大変魅力的であり、応援したくなる気持ちが自然と湧いてくるのも確かである。描き方次第では酷く深刻なドラマになってもおかしくない所を、彼女の魅力が上手くすくい取っている気がした。
他に、T・ヘイデン・チャーチ、M・マクダウエルといったベテラン陣が脇を固めている。出番はそれほど多くないが、意外なキャスティングで目を引いた。