「黒いジャガー」と並び評されるブラック映画の代表作。
ワーナー・ホーム・ビデオ (2013-11-06)
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「スーパーフライ」(1972米)
ジャンルアクション・ジャンルサスペンス
(あらすじ) ニューヨークの黒人街で麻薬の売買でのし上がったプリーストは、そろそろ今の仕事から足を洗おうと考えていた。そこで相棒エディと最後の大仕事に取り掛かろうとする。ところが、部下のフレディが殺人事件を起こして警察に睨まれてしまい‥。
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(レビュー) いわゆるブラックスプロイテーション・ムービーの代表作「黒いジャガー」(1971米)と並び評される作品。
黒人公民権運動以後、芽吹いたこの潮流は、確実にアメリカ映画に一つの時代を築いたと思う。もちろん、それはS・ポワチエという黒人俳優が1963年に
「野のユリ」(1963米)でアカデミー賞主演男優賞を受賞するという偉業あればこそであるが、しかしポワチエの俳優的イメージを考えた場合、必ずしもこの二つが直結するわけではないように思う。
ポワチエが演じる役柄は、白人の映画の中で造形されたキャラクターであって、どこか”作られた黒人”という枠に収まっていた。ある時は優等生的な黒人、ある時は可哀そうな黒人といった具合に、彼は白人が作ったイメージから抜け出せない俳優であったように思う。
そんな時に、黒人が撮った黒人の映画、ブラックスプロイテーション・ムービーが誕生した。それまであったポワチエの”作られた黒人”ではなく、道端の隅っこにいる”本当の黒人”を映画の中に登場させたのである。
本作の監督は「黒いジャガー」の監督ゴードン・パークスの息子である。もしかしたら父の仕事ぶりを傍で見ていたのかもしれない。この両作品は作りがよく似ている。
例えば、オープニング・シーン。ニューヨークの大通りのロケーション、そこを闊歩する主人公、バックに被さるソウルミュージック。ほとんど「黒いジャガー」のデジャヴ感が漂う。全体がハードボイルドな作りになっているのも共通していて、今作と「黒いジャガー」には明らかに同じテイストが感じられる。
この格好良いオープニングの後には、ハーレムの裏路地を舞台にした追跡劇が展開される。ここのアクションは中々切れがあって良かった。このシーンを筆頭に今作にはアクションシーンが度々登場してくる。そこはアクションが少なめだった「黒いジャガー」には無い魅力が感じられた。
そして、このアクションを支えているのが、主役のプリーストを演じたロン・オニールであることは間違いない。彼は劇中で空手も披露しており、クライマックスでは大立ち回りを演じて見せている。
尚、ロン・オニールはこのヒットを受けて何本か映画に出演している。しかし、いずれもB級アクション映画ばかりというのが嘆かわしい‥。身体能力はかなり高い俳優だと思ったので残念である。
演出的な面で言えば、中盤のモノクロのスチール写真を使った”語り”にセンスの良さを感じた。BGMとの合わせ方も絶妙で、まるでPVを見ているかのようだった。
反面、編集の粗さ、長回しにおける演技の拙さは残念である。
例えば、フレディの取り調べとプリーストのデートを繋げるカットバックは間延びしすぎて退屈してしまう。また、劇中にしばしば登場する長回しもチープな印象が拭えない。いかにも即興的というか、その場で一発撮りしたような安っぽさがある。キャストに実力派が揃っていれば、それなりに見れる物となろうが、いかんせ今作は全てが芸達者な俳優で固められているわけではない。低予算の映画なのでそのあたりは仕方がないだろう。
尚、70年代後半に入ってくるとブラックスプロイテーション・ムービーは徐々に衰退していく。テレビへの人材流出が原因の一つとも言われているが、結局、今作や「黒いジャガー」、パム・グリアが主演した「コフィー」(1973米)等の後続が出なかったことが最大の原因のように思う。
ただ、ブラックスプロイテーションは、後のS・リー監督等を中心とした80年代の”ニュー・ブラック・ムービー”に多大な影響を与えたことも確かで、アメリカ映画史を語る上では欠かせぬ重要な潮流だったことは間違いない。
「黒いジャガー」を撮ったパークス父と、今作を撮ったパークスJr.。この父子が残した功績は大きいように思う。