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コーマン帝国

B級映画の帝王ロジャー・コーマンとは?
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「コーマン帝国」(2011米)星3
ジャンルドキュメンタリー
(あらすじ)
 B級映画の帝王ロジャー・コーマンについてのドキュメタリー。

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(レビュー)
 B級映画専門の作家ロジャー・コーマンの創作姿勢と、彼がアメリカの映画界に一体どんな影響を及ぼしたのか?それを紐解くドキュメンタリー。彼のことを知っているファンはもちろん、そうじゃない人でも興味深く見れる作品だと思う。

 映画は、彼の膨大なフィルモグラフィーを紹介しながら、彼が辿ってきたこれまでの足跡を紹介している。

 R・コーマンは大学を学位をとるほどのエリートで卒業し、映画に魅了されてハリウッドへ渡った。彼はそこで数本のシナリオを書くが、上層部から正当な評価を得られず独立。すかさず自主製作で映画を撮るとSF、ホラー映画を専門に作っていたAIPにスカウトされ、そこで多数の映画を量産する。やがて、AIPが倒産すると今度は自身の会社を設立。そこで低予算で確実に利益を上げられるB級映画を専門に作っていった。

 本編には彼に縁のある映画関係者が多数登場してきてインタビューに答えている。P・ボグダノヴイッチ、R・ハワード、M・スコセッシ、J・ニコルソン、P・フォンダ、B・ダーン、D・キャラダイン、J・デミ等、錚々たる映画人が登場してくる。彼らは揃ってコーマン門下で、師のこれまでの働きと映画界に与えた功績を称賛している。

 但し、中にはニコルソンのように少し皮肉交じりな批評をする者もいて、そこは見てて可笑しかった。
 彼はコーマンの映画で俳優デビューを果たしたので、付き合い自体かなり長い。しかし、長く付き合っていれば当然、意見の食い違いも出てくる。ニコルソンはコーマンの早撮り、低予算の映画作りに少しだけ遺恨を持っていて、それが今回のインタビューから窺い知れた。
 もっとも、それが彼の愛情の裏返しであることは何となく想像できる。色々と不満を述べても、結局彼もコーマン映画を愛してやまない一人なのだなぁ‥ということは画面を見てひしひしと伝わってきた。

 一方で、Q・タランティーノ、ポール・W・S・アンダーソン、E・ロスといった、コーマンの映画をリスペクトする現代の若手映画人たちも登場してくる。彼らは皆、コーマンから大きな影響を受けたと述べている。確かに彼らの映画を見ていれば、それはよく分かる。

 尚、こうしたコーマンの功績にようやく気付いたのか、先頃のアカデミー賞で彼はようやく特別功労賞を受賞した。遅きに失したという感じもするが、存命中の受賞で良かったと思う。

 そんなコーマンが今は何をやっているかと言うと、相も変わらずB級映画を作っている。本編中では、いかにも手作り感満載なサメの映画を撮っていた。
 下劣、低俗と一蹴されるコーマン映画であるが、彼はいたって真面目に映画作りをしていることが、この現場を見るとよく分かる。彼は常にB級映画を作ることに”こだわり”を持っている。たとえ門下の若手がメインストリートに羽ばたいて行っても、どこ吹く風。来るもの拒まず、去る者追わずで、彼は昔と変わらない方法でB級映画を撮り続けているのである。

 尚、今作を見て初めて知ったトピックが2点ある。
 一つ目は、コーマンが最初で最後に撮った社会派作品がある‥という事である。「スタートレック」で有名なW・シャトナーが主演した「侵入者」(1962米)という映画がそれである。これはコーマンが作った映画で唯一赤字になった作品だそうである。映画の内容が黒人差別を描いた堅苦しいもので、興業的には散々な結果に終わってしまったということである。仮にもしこれがヒットしていたら、どうなっていたのか‥。あるいは、R・コーマンは社会派な映画監督になっていたかもしれない‥などと想像してしまった。

 二つ目は、コーマンがベルイマンやフェリーニの映画をアメリカに紹介したという事実である。彼はただのB級映画専門の映画作家ではない。いわゆるヨーロッパのアート系映画に対する厳しい審美眼も持っていた‥ということは意外だった。

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