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ソレダケ/that's it

久々の石井流ロック映画なのだが、後半失速。
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「ソレダケ/that's it」(2015日)hoshi2.gif
ジャンルアクション・ジャンル青春ドラマ
(あらすじ)
 父から虐待されて捨てられた青年・大黒は、父に対する復讐心だけで今まで生きてきた。ある日、父の居場所を知っているという戸籍売買のブローカー恵比寿から、家出人やホームレスなどの個人情報が詰まったハードディスクを強奪する。大黒はそれを餌に父の居所を突き止めようとした。ところが、逆に捕まってしまい監禁されてしまう。彼はそこで裏デリの元締め・猪神から逃げてきた風俗嬢・阿弥と出会う。二人は一緒に脱走するのだが‥。

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(レビュー)
 戸籍を失った青年が、父への復讐を果たすために、闇の組織と対決していくバイオレンス映画。

 元々、今作は監督・石井岳龍と音楽を担当した日本のロックバンドbloodthirsty butchersのリーダー・吉村秀樹のコラボ企画から始まった映画ということでる。 しかし、吉村が1913年に逝去し、企画が暗礁に乗り上げてしまった。それから2年後、石井監督が吉村の意志を受け継いで本作を完成させたということである。そういう製作経緯もあり、映画の上映後にはbloodthirsty butchersのPVが3本上映される。この映画を一緒に作り上げた吉村への追悼だろう。

 監督の石井岳龍は、元々、石井聰互という名前で、初期時代にはかなり尖った映画を撮っていた。商業デビュー作である「狂い咲きサンダーロード」(1980日)、サラリーマン一家に起こる反乱をエネルギッシュに描いた不条理コメディ「逆噴射家族」(1984日)等、彼の映画には必ずロックが流れていた。パンク、ロックは石井作品の重要なモティーフである。そして、その作家性は現在も変わることなく続いている。今作もオープニングからエンディングに至るまで全編、bloodthirsty butchersのノイジーなサウンドが流れている。

 物語は至ってシンプルである。戸籍の無い青年の刹那的な生き様を、ひたすら体育会系的なノリで活写した、いわゆる青春暴走映画である。ラストの人を食ったオチ、中盤のどんでん返しを含め、中々楽しめた。

 ただし、前半は渋いモノクロ映像でソリッドな石井ワールドが完全再現されているが、後半から”ある事件”によって突然、カラーに切り替わってしまう。これが個人的にはかなり残念だった。テレビドラマ的なツルッとした画面が余りにも綺麗すぎて、前半にあった凶暴性、ザラついた危険性が失われてしまった。
 確かに映画を見ていれば、このトーンの切り替えにちゃんと意味があることは分かる。しかし、仮にカラーに変えるとしても、今はデジタル処理でいくらでも加工が可能であろう。それくらいはやって欲しかった。

 加えて、後半に入るとストーリーも停滞してしまう。前半は畳み掛けるようなスピーディーなアクションでグイグイと画面に引き込まれたが、中盤の”ある事件”によって大黒と阿弥の愛憎関係が一段落ついてしまう。そのため、見ている方としてはテンションが落ちてしまう。

 また、後半に入って興が削がれる原因がもう一つある。それは敵役・千手を演じた綾野剛の演技である。セリフ回し、演技がまるでナルシスティックな中二病患者のようで、とても見てられなかった。彼がいくらハードに演じようとも寒いギャグにしか映らない。この役作りが石井監督の演出による物なのか、それとも綾野剛本人による物なのかは分からない。しかし、少なくとも俺にとっては映画全体の雰囲気をぶち壊すほどの大誤算だった。

 もっとも、今作は所々にブラック・コメディのようなテイストが確信犯的に入っているので、このあたりも敢えて笑いを取りに行っている‥という穿った見方が出来なくもない。

 他にも、千手の部下がチープな悪の秘密結社風だったりするのも、敢えて狙ったものなのだろう。また、クライマックスの大黒たちの無双っぷりも、いかにもコミック・ブック・スタイル的であり、劇中に登場する「デストロイヤー」という架空のマンガのノリをそのまま再現したものである。スプラッタのオンパレードで派手な殺戮が繰り広げられていても、余りにも非現実的で笑ってしまうしかない。

 このようにバカ映画的なノリが所々に混入されるので、千手というキャラも敢えてマンガチックに造形した‥という風にも考えられる。
 だとしても、俺にとっては、笑うに笑えない”イタい”キャラだったのだが‥。ギャグは受け取る側の感性次第だから難しい。

 キャストでは、大黒を演じた染谷将太の佇まいが印象に残った。死んだ魚のような目が、彼の辿ってきた荒んだ人生を見事に表している。彼が主演した「ヒミズ」(2011日)と同様の狂気性が今回も感じられた。

 ヒロイン・南無阿弥を演じた水野絵梨奈も中々の熱演を見せている。時折、小劇団っぽい臭みが出てしまうのはご愛嬌だが、ハイテンションな染谷と堂々と渡り合った所に彼女の気概を感じる。尚、彼女は染谷と一緒に「悪の教典」(2012日)にも共演していたことを、後になって知った。申し訳ないが、その時には彼女の印象は全く残らなかった。それくらい今回の演技はインパクトがあり、まるで別人のようだった。
[ 2015/07/31 02:47 ] ジャンルアクション | TB(0) | CM(0)

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