親子二世代に渡る復讐の連鎖を描いた骨太な人間ドラマ。
Happinet(SB)(D) (2015-02-03)
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「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」(2012米)
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 移動遊園地で曲芸バイクショーを演じながら各地を転々とするルークは、久しぶりに元恋人ロミーナを訪ねる。彼女が自分との子供を密かに生んでいたことを知り、ルークはその土地に腰を落ち着けることにした。ところが、ロミーナにはすでに新しい恋人がいて、今は子供と一緒に彼の家に住んでいるという。ロミーナと子供を取り戻そうと、ルークは真面目に働くことを決意するが‥。
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(レビュー) 親子二世代に渡る復讐の物語を傑作
「ブルーバレンタイン」(2010米)の監督デレク・シアンフランスと主演R・ゴズリングのコンビで描いたシリアスな人間ドラマ。
物語はルークのパートと、彼を撃った正義感溢れる警官エイブリーのパート、彼らの子供たちのパート。3つに分かれている。夫々のドラマが相関しながら最後は衝撃的な結末を迎え、見終わった後には色々と考えさせられた。実に濃密にして繊細な語り口が貫通され、個人的には前作「ブルーバレンタイン」よりもクオリティは高いと感じた。
但し、シナリオに関しては若干物申したい。第2章のエイブリーのエピソードが少々退屈した。それまでの主役ルークが退場し全てのドラマが放出されて、まったく新しいドラマが仕切り直される。ドラマの求心力が緩み、ストーリーへの興味が一気に失われてしまった。また、今作を見た目的がルーク演じるR・ゴズリングだったため、彼不在のストーリーにどうしても興味をそそられなかった。更に言えば、このパートで描かれる警察内部の腐敗といったテーマもありきたりで、自分にとってはさして関心を引く物ではなかった。
親子二世代に渡るドラマであるのなら、第1章と第2章は完全に分けるのではなく、まとめてしまえばよかったように思う。被害者ルークを追うドラマと、加害者エイブリーを追うドラマを並行して描きながら、第3章で描かれる復讐というテーマに結び付けていけば更にドラマが強く押し出されたように思う。今回は構成に問題ありと思った。
しかし、こうしたドラマの”中だるみ”はあるものの、第1章と第3章については文句なしの出来栄えで、終盤は画面にグイグイと引き込まれた。
第1章はゴズリングがこれまで演じてきたキャラクターを当て書きしたようなエピソードになっている。いわゆる甲斐性無しな父親という設定は、同じシアンフランス監督の前作「ブルーバレンタイン」で演じたキャラと同系統である。あるいは、ゴズリングの名を一躍有名にした
「ドライヴ」(2011米)との関連性も感じられる。いずれにせよ、孤独の淵でもがき苦しみながら、刹那的な人生を歩むしかない男の”哀しさ”というものがじっくりと味わえた。
第3章は、ルークの息子ジェイソンとエイブリーの息子AJの関係に迫ったドラマとなっている。二人は父親の因縁を引きづりながら、やがて衝撃のラストを迎えていく。重厚なタッチが奏功し、夫々の葛藤に目が離せなかった。
デレク・シアンフランスの演出は全編に渡って手堅くまとめられている。前作ほどのスタイリッシュさは無いが、オープニングのロングテイクに見られるように、今回も技巧的な演出が各所で冴えを見せている。その一番良い例が、ルークがバイクの曲芸を演じるまでを1カットで捉えたオープニング・シーンである。映画の”引き”としては申し分なく、一気に作品世界に引き込まれた。ただ、どちらかと言うと今回は抑制を効かせた演出に寄り添っており、前作のようなスタイリッシュさを期待してしまうと若干物足りなさが感じられるかもしれない。
キャストでは、やはりルークを演じたR・ゴズリングが印象に残った。ブロンドの髪、顔の傷、両腕にタトゥーという造形は少々作りすぎな感じもしたが、この劇画タッチがハマる俳優というのも今のハリウッドでは錚々いないだろう。ジョニデ、ブラピくらいではないだろうか?とにかく、今回もクールな佇まいに痺れさせられた。
そして、ジェイソン役デイン・デハーンのセンシティブな演技も素晴らしかった。彼は
「クロニクル」(2012米)の主演で注目されて以降、次々と話題作に出演している。今後も期待の若手俳優である。