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さよなら、人類

独特のテイストで紡がれる悲喜こもごもに魅了される。
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「さよなら、人類」(2014スウェーデンノルウェー仏独)星3
ジャンルコメディ
(あらすじ)
 ある日、別々の場所で3人の男たちが死亡した。その頃、冴えないセールスマン、ヨナタンとサムは2人で面白グッズを売り歩いていた。しかし、誰にも相手をされず落ち込む。一方、フラメンコ の女教師はレッスンを受けに来た青年の身体を触りまくって逃げられてしまう。フェリーの船長は船酔いが原因で理容師に転職した。ヨナタン達がよく行くバーの女店主は第二次世界大戦時の記憶に思いをはせた。ヨナタンたちは奇妙な通りに迷い込み、そこでロシア軍と戦う中世時代の軍隊に遭遇する。

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(レビュー)
 この映画はストーリーだけを追いかけていくとかなり散文的で物足りない。一応、中心となるエピソードはヨナタンとサムのエピソードになるのだが、これも淡々と日常シーンが続くだけなのでドラマ性はない。彼らの他に、理容師に転職した元船長、講演を聞きに来て土砂降りの雨にあう不運な男、フラメンコの女性教師、バーの女店主等が登場してくるが、彼らのドラマは一部で重なる部分もあるが、基本的には別個のエピソードで群像劇というわけでもない。だから、ドラマ的にはどうしたって薄みにならざるを得ない。

 このように、今作は変にドラマ性を求めてしまうと、確実に肩透かしを食らう作品である。それよりも、1シチュエーション型のコントの集積‥という割り切りで見た方が楽しめると思う。個人的にはモンティ・パイソンを連想した。ブラックでシュールな笑いが散りばめられているのも、モンティ・パイソンを想起させる。

 出色だったのは、中盤でヨナタンとサムが出くわす不思議な事象である。突然、馬に乗った国王率いる中世時代の軍隊が彼らの前に姿を現す。時空を超えた”怪現象”とも言うべき異常事態に、ヨナタンはもちろん、その場に居合わせた周囲の人々も呆気にとられてしまう。これが非常に可笑しかった。しかも、劇中ではこの怪現象について何の説明もしていない。正しくナンセンス・ギャグの極み。モンティ・パイソン的な笑いである。

 その一方で、しみじみとくるシーンもあった。それは、ヨナタンたちが通うバーで回想される、第2次世界大戦時の思い出である。そこの女店主は文無しの兵士に金の代わりにキスで酒を振舞う。国のために戦う彼らを労う意味か。あるいは、単に女店主の欲求不満の解消か。いずれにせよ、その中の一人であろう老人が、今でも常連客としてこの店に通っている。約70年に及ぶ女店主と老人(元兵士)の交友を想像すると、何とも言えぬ情感が湧いてくる。このあたりの時制の演出には脱帽だった。

 また、ゾッとするような怖いシーンもあって、それは終盤に登場するヨナタンの悪夢だった。帝国主義時代の白人が鎖で繋がれた黒人奴隷を巨大な鉄製の筒に入れて火あぶりにして、それを現代の成金たちが笑いながら見物するという、極めてシュール且つブラックな悪夢である。帝国主義に対するアイロニーか、それとも即物的快楽主義への批判なのか分からないが、タチの悪いジョークでは済まされない不謹慎さがある。

 このように、かなりクセを持った笑い、怖さがあるので、好き嫌いがはっきり分かれそうな作品である。また、全てのエピソードが楽しめたかと言うとそういうわけではなく、中には今一つピンと来ないエピソードもあった。例えば、窓辺で煙草を吸う男女のエピソード、電話で「元気そうで何より」を繰り返す人々、チンパンジーの動物実験、ラストのバス停のエピソード等、どこをどう笑えばいいのか?あるいは、どんなメッセージが隠されているのか?よく分からなかった。

 また、場面によってヨナタンの顔が白塗りになるのだが、これにもどんな意味があるのか分からなかった。映画の冒頭に出てくる3つの死のエピソードでは、死ぬ人が皆白塗りをしていた。もしかしたら死相を意味していたのかもしれない。つまり、あの白塗りは、ヨナタンが生きることに疲弊し死の世界に近づいた‥ということを意味する物だったのかもしれない。しかし、これもはっきりとは断定できない。

 監督・脚本はロイ・アンダーソン。前々作「散歩する惑星」(2000スウェーデン仏)はコアなSFファンの間で評判を呼び、大いに話題になった。氏が作り出す独特の脱力テイストは今回も健在である。抑揚を押し殺した演出、1カットのロングテイクで紡ぐオフビートな笑いは唯一無二の物として中々面白く感じる。

 尚、監督自身は、今回の作品で「散歩する惑星」から続く”人間についての3部作”は完結するということである。自分は第2作の「愛おしき隣人」(2007スウェーデン独仏デンマークノルウェー)が未見なので機会があればいずれ見てみたい。個人的に「散歩する惑星」が今一つ楽しめなかったので躊躇していたのだが、今作を見て俄然前作に対する興味が湧いた。
[ 2015/10/05 01:11 ] ジャンルコメディ | TB(0) | CM(0)

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