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カリフォルニア・スイート

一つのホテルを舞台にした悲喜こもごもを軽妙に綴った作品。
カリフォルニア・スイート [DVD]
復刻シネマライブラリー (2013-03-11)
売り上げランキング: 73,764

「カリフォルニア・スウィート」(1978米)star4.gif
ジャンル人間ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ)
 ハリウッドのホテルに4組の旅行者がやって来る。アカデミー賞の授賞式に出席するために、はるばるイギリスからやって来たベテラン女優ダイアナ。晴れの舞台を前にして不安なダイアナは夫のシドニーと喧嘩になってしまう。思春期の娘を持つ悩める母ハンナの元に分かれた夫がやって来る。娘の親権を巡って言い争いを始めるのだが‥。甥の成人式を祝いにやって来た中年男マービンは、酔いつぶれてコールガールと一夜を過ごしてしまう。そこに妻がやって来て‥。兄弟夫婦でバカンスにやって来た黒人カップル。楽しいはずの旅行はトラブル続きで台無しになってしまう。

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(レビュー)
 一つのホテルを舞台にした4組のカップルの群像劇。彼らの悲喜こもごもを軽妙洒脱に描いたスケッチ風の映画である。

 監督はハーバート・ロス。ニール・サイモンが自身の戯曲を脚本化している。このコンビは前年に「グッバイガール」(1977米)を撮っており、それだけに今回の作品も息がぴったりと合っているという感じがした。

 もっとも、両作品は全くタイプの異なる作風で、「グッバイガール」の方は一組のカップルにじっくりと迫ったドラマだった。それに対し、今作はいわゆるグランドホテル形式のシチュエーション・ドラマになっている。‥とは言っても、夫々のエピソードが交錯するわけではないので、厳密に言うとグランドホテル形式とは言えず、どちらかというと単発のエピソードを4つ集めました‥という方が正しいかもしれない。そして、この作りがドラマ的なカタルシスを失してしまっていることは確かである。「グッバイガール」よりもドラマ性が弱い感じがした。
 しかし、だからと言って今作が前作よりも劣ると言うつもりはない。群像劇としての面白さは十分堪能できるし、軽妙洒脱な会話と演出は相変わらず健在で最後まで飽きなく見ることができた。

 一番印象に残ったのは、最初に描かれるハンナと元夫ビルのドラマである。二人は家出をした娘を巡って喧嘩を始めるのだが、ここでのやり取りが実に面白かった。2人が何者であるか?何を巡って喧嘩をしているのか?そういったものがセリフの端々から徐々に判明してくるような作りになっていて、正に名戯曲家サイモンの面目躍如といった感じである。目の離せない会話劇になっている。
 また、ここではハンナを演じたJ・フォンダの演技も見逃せない。母親としての喪失感、子育てに対する恐れ。更には前夫に対するジェラシー。老いに対する不安。そうした中年女性の複雑な感情を繊細さと大胆さを混じえながら巧みに表現している。この独壇場の演技は絶品だった。

 次に面白く見れたのが、老女優ダイアナのドラマである。いわゆるハリウッドの内幕モノなのだが、何気にアメリカ映画に対する皮肉がちょいちょい出てくるのが可笑しい。また、夫の”ある秘密”には驚かされた。果たしてダイアナは夫のこの性癖を知ってて結婚したのだろうか?こちらもサイモン節全開な会話劇になっていて楽しめる。

 この二つは割とシリアスなエピソードだが、他の二つは完全にコメディ寄りなエピソードとなっている。
 一つ目は、妻に浮気がばれないように奔走する男のドタバタ騒動劇である。これも実にサイモンらしいシット・コムでクスクス笑いながら見れた。よくある話と言えばそれまでだが、男のどうしようもないスケベ心が出ていて微笑ましい。

 もう一つは、黒人の二組の夫婦が散々な目にあうエピソードである。次々と災難に見舞われる様子をスラップスティックに描いているのだが、残念ながらこちらは今一つだった。全エピソード中、最もパッとしない出来である。個々のキャラの掘り下げが甘いのが原因のように思う。

 キャストでは、先述したJ・フォンダの他に、ダイアナを演じたM・スミス、その夫を演じたM・ケインというイギリス陣が印象に残った。また。サイモン映画の常連W・マッソーも、いつも通りの安定した演技を見せている。
 尚、冒頭に劇中劇という形でJ・コバーンがチョイ役で出てくる。彼はM・スミスの夫役として自家用飛行機を操縦して登場するのだが、これが映画のラストに繋がるという構成が実に心憎い。

 また、映画のオープニングの小洒落た雰囲気も好きである。こういうオープニングは今では中々見られなくなったが、昔は結構凝って作っていたものである。
[ 2015/10/11 19:05 ] ジャンルコメディ | TB(0) | CM(0)

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