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小さいおうち

密やかで静かな恋物語をノスタルジックに綴った名匠山田洋次監督の作品。
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「小さいおうち」(2013日)星3
ジャンルロマンス
(あらすじ)
 大学生の健史は、亡くなった大伯母・布宮タキから彼女が遺した自叙伝を託される。そこには健史が知らない戦前の人々の暮らしと、若かりしタキが女中として働いていた平井家の秘密が綴られていた――。昭和初期、タキは山形から東京に女中奉公にやって来る。彼女が住み込みで世話になる平井家には、会社重役・雅樹と妻の時子、小学生の息子・恭一が暮らしていた。3人ともタキに親切に接してくれて、タキも彼らのために一生懸命働いた。そんなある日、平井家に雅樹の部下・板倉がやって来る。美術学校出身の心優しい板倉に時子は好意を寄せていくようになる。

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(レビュー)
 同名の直木賞原作を名匠・山田洋次が監督したノスタルジックなロマンス作品。

 いかにも山田洋次らしい、しみじみとしたテイストが散りばめられており、古き良き日本人の奥ゆかしさが感じられる美しい作品となっている。

 また、戦前、戦時中の風俗、文化が、そこかしこにしたためられているのも興味深く見れた。例えば、南京陥落でデパートが戦争大売出しセールをしたというのは、この映画を見て初めて知った。当時の日本は何となく暗いイメージしか持っていなっかたのだが、決してそればかりではないということが分かる。
 もっとも、物語の舞台はほとんどが平井家の中である。平井家はどちらかと言うと裕福な家庭であり、いわゆる一般庶民よりも贅沢な暮らしを送っているようにも見える。だから、この映画の明るいトーンは特別な物であり、庶民の暮らしぶりはこれよりもっと粗末なものだったに違いない。

 物語は、現在の健史のドラマと、生前のタキのドラマ、それとタキの自叙伝に書かれた回想ドラマ。この3つで構成されている。時制の往来はカッチリと区分されており、大変見やすかった。
 そして、現代の大学生・健史の目線を通してタキの回想ドラマを描く‥という構成も中々上手い。いわゆる戦争を直接知らない現代人でも、この戦時下のドラマに感情移入しやすいように工夫が凝らされている。これは中々上手い作りだと思った。

 そんな3つのドラマが行き交う中、話の中心となるのがタキの回想ドラマである。
 田舎から出てきたタキが心優しい平井家の人々に囲まれながら幸せな奉公生活を送るのだが、中盤から戦争を背景とした時子と板倉のメロドラマになっていく。少々楽天的過ぎるきらいはあるが、決して下世話な色恋沙汰になっていない所がいかにも山田洋次らしい。ドロドロとした昼メロ路線とは一線を画した、実に奥ゆかしいドラマとなっていて味わい深い。
 また、禁忌に触れた男女の背徳感や戦争の暗雲といったネガティブな要素が徐々に幅を利かせ、後半からシリアス色が強められていく。浮ついた所がなく中々の見応えを感じた。

 一方、現在パートでは、タキの孫・健史を中心としたドラマになっている。タキの生き様を追いかけながら、彼は時子の真の愛を知って行く。終盤にかけてややご都合主義になってしまったのは残念だが、ラストの海のシーンにはウルッとさせられた。演出の巧みさだろう。

 尚、明確に描かれていないが、タキと時子の間に何となく同性愛的なニュアンスが嗅ぎ取れたのは実に興味深かった。
 例えば、タキが時子をマッサージするシーン。ここでの手のクローズアップには、時子のタキに対するセクシャルな好意が僅かだが感じられた。間違いなく意識して描写しているように見える。
 また、その後に続く正月のシーン。平井家に会社の人間が集まって宴会が始まるのだが、それを時子が皮肉交じりにこう語る。「男ってやーね。戦争と仕事の話ばかりで。」穿った見方をすると、これは男という存在に対する彼女の嫌悪感から出た言葉のように思える。
 あるいは、後半に登場する、男装の麗人で時子の親友・睦子の存在。ここにも時子の同性愛趣味が感じられた。

 ただ、今挙げた例は時子の同性愛的感情をハッキリと明示する物ではない。いずれもそれとなく匂わすように演出されており、彼女にそうした性癖があったのかどうかは断定できない。また、時子は板倉と男女の関係にあったことは間違いないわけで、少なくとも彼女は男性を愛することは出来たと思う。細かなニュアンスで表現されているので、見る人によっては全然気付かないかもしれないが、自分はこれがとても気になった。

 キャストでは、時子を演じた松たか子の好演が光っていた。人妻でありながら、夫の部下に惹かれていく複雑な女心を実に的確に演じて見せている。さりげない所作も堂に入っているし、正装時の凛とした佇まいも板についていた。
 晩年のタキを演じた倍賞美津子も安定した好演を見せている。腰を曲げて実年齢以上老け役を見事に演じきっていた。
 若い頃のタキを演じた黒木華は、今作でベルリン国際映画祭の銀熊賞(女優賞)の栄誉に輝いている。確かに好演とは思ったが、松たか子の存在の前には影が薄いと感じた。外国人からしてみれば、今回の奥ゆかしい役柄に古風な日本人女性像という、ある種の理想形を見てしまったのかもしれない。海外の受けが良いのはよく分かる。
 しかし、本作で一番輝いていたのは、間違いなく松たか子の方だと個人的には思う。
[ 2015/10/14 00:22 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

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