FC2ブログ










ぼくたちの家族

難病物だが笑いとペーソスが合わさった独特のテイストが面白い。
ぼくたちの家族 特別版Blu-ray
TCエンタテインメント (2014-11-21)
売り上げランキング: 37,391

「ぼくたちの家族」(2013日)star4.gif
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 東京郊外に暮らす若菜家。主婦の玲子は自営業をしている夫、結婚を機に家を出た長男・浩介、都内で一人暮らしをしている大学生の二男・俊平と、仲睦まじい家庭を築いていた。ある日、玲子が軽度の認知症にかかってしまう。病院で診察した結果、脳腫瘍ができていると宣告される。それを聞いて愕然とする家族たち。浩介は仕事と身重の妻を抱えながら奔走し始める。そんな折、俊平は玲子が作った多額の借金を見つける。

ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ

(レビュー)
 母の病気をきっかけに家族が一つにまとまっていく様をユーモアを交えながら描いた感動作。

 同名の原作を俊英・石井裕也が監督・脚色をして作り上げた作品である。石井裕也と言えば前作「舟を編む」(2013日)が大いに評判を呼び、一躍メインストリームに頭角を現した若き作家である。今回は前作よりも、より普遍的なテーマを追求した所に表現者としての成長が伺えた。

 今作は言ってしまえば難病物である。しかし、それを安易な感動物にせず、かすかなペーソスとユーモアを交えながら巧みに料理した所に氏の才気を感じる。

 例えば、浩介に子供ができた祝いの席で見せる玲子の勘違いな言動。玲子が嫁の名前を微妙に間違えるという、この可笑しさ。劇中ではいたってシリアスなトーンで描かれているのだが、周囲の反応を見ると笑えてしまう。と同時に、このシーンは玲子の認知症が症状として現れた一例となっており、忍び寄る病魔の怖さも感じた。

 あるいは、中華料理屋での携帯電話を巡る浩介たちと店員のやり取り。他のお客様の迷惑になるからと言って、店内での携帯電話の使用を禁じる店員に浩介の父は噛みつく。自分たち以外にお客はいないのに誰に迷惑がかかると言うんだ!と普段は温厚な父が憤慨するのだ。このシーンは傍から見ればコントのようである。そして、浩介が受けた電話からは入院した母のパニックに陥る叫び声が聞こえてくる。このシリアスなトーンへの切り替え方も実に絶妙だった。

 また、仮眠する浩介の元に、玲子の看病で泊まり込んだ父から何度も電話がかかってくるシーンも笑えた。浩介の「もう朝だし‥」に爆笑である。

 このように本作は大筋ではシリアスな感動ドラマなのだが、所々に笑いが絶妙に配分されている所が面白い。当人たちからしてみれば相当深刻な状況であるはずに違いないが、客観的目線で見る我々観客からしてみればどこかブラック・コメディのように楽しめるのである。この笑いとシリアスのバランスが非常に面白い。

 また、余り深刻にならないで済んでいるのは演者の妙縁による所も大きいと思う。浩介を演じた妻夫木聡は終始シリアスな演技を貫ているが、当の玲子を演じた原田美枝子、二男・俊平を演じた池松壮亮の軽妙な演技が全体をまろやかにしている。
 特に、池松演じる俊平は、兄の浩介とは性格が反対で少々だらしない青年である。深刻な状況にあって唯一人、病気の母に明るく接する楽天家である。普段は親のすねかじりをしている不肖の息子だが、案外家族思いな一面を持っていて非常に魅力的なキャラだった。また、終盤で見せる彼の涙にも感動させられた。

 感動的と言えば、玲子が栽培していたサボテンにまつわるシークエンスにもしみじみとさせられた。ご存知の方も多いと思うが、サボテンはどんな過酷な状況においても繁殖する生命力を持っている。これは明らかに玲子そのものの生命を表しているし、また彼女を見守る周囲の家族をも象徴しているように思う。ストーリーの中における、このサボテンの使い方が実に上手かった。

 逆に、今作で今一つだったのは浩介の嫁の存在である。今作は基本的に浩介を中心とした家族のドラマであり、血の繋がりのない浩介の嫁や彼女の両親については余り触れられていない。玲子と嫁の関係は余り良好とは言えず、その確執は何となく見て取れるのだが、しかし嫁が改心して玲子の見舞いに行くというラストが今一つピンと来なかった。彼女の葛藤を追う描写が不足しているからだろう。

 また、玲子の症状が快方へ向かっていく終盤。再検査をすることによって、もしかしたら脳腫瘍ではないかもしれないということが判明する経緯も、説得力という点では物足りなかった。そもそも病院では経過検査という物はしないのだろうか?いくら手の施しようがな末期患者だからといっても、医師は患者の身になって考えて欲しい。更に言えば、「あと1週間が峠です」と簡単に言い放つあたりにも違和感を持った。そんなに簡単に断定して良いものだろうか?
 こうした描写を含め、今作は医療関係に関する描写に手抜き感をおぼえてしまう。もっと説得力を伴う描写をして欲しかった。
[ 2015/10/17 00:40 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/1458-30fc297e