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サスペリアPARTⅡ

「サスペリア」と銘打っているが続編ではない。
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「サスペリア PARTⅡ<完全版>」(1975伊)星3
ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 透視能力を持つテレパシスト、ヘルガが超心理学会の壇上で、来場客を相手にその能力を披露していた。その最中、突然彼女は席の中に殺人者がいると叫んで気絶してしまった。その夜、彼女は何者かによって殺されてしまう。その現場を、偶然ロンドンから来ていたピアニスト、マークが目撃していた。警察の取り調べが始まる中、彼は女性記者ジャンナと知り合い、この殺人事件を捜査していく。

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(レビュー)
 イタリアのホラー作家D・アルジェント監督が撮ったスリラー作品。

 タイトルが「サスペリアPARTⅡ」となっているが、同監督作の「サスペリア」(1977伊)と話が続いているわけではない。まるで続編のような邦題を付けたのは、「サスペリア」の大ヒットを受けた配給会社の東宝東和である。そもそも今作は「サスペリア」の前に製作された作品である。タイトルに騙されないように。
 尚、今回見た完全版は劇場公開版よりも20分ほど長い2時間7分版である。この手のジャンル映画としては長尺となっている。

 さて、本作は「サスペリアPARTⅡ」というタイトルが付けられているが、決して「サスペリア」のようなオカルト映画ではない。どちらかと言うと、それ以前にアルジェントが撮ってきた「歓びの牙」(1969伊)「私は目撃者」(1970伊)「4匹の蝿」(1971伊)といった初期作品のようなスリラー・タッチな映画となっている。というか、設定やストーリー仕立ては、「歓びの牙」の焼き直しと言えなくもない。

 主人公が旅行者であること。偶然殺害現場を目撃してしまうことで捜査に首を突っ込んでいくこと。犯人の殺害動機の裏には過去のトラウマが関係していること等。いずれも「歓びの牙」と共通する設定、展開である。したがって、ストーリー自体に決して新味はない。ただ、それでもアルジェントの巧みな演出が冴えわたり、結果的には中々面白く見れる作品になっている。

 例えば、最初の殺害シーン。ヘルガが殺される瞬間を偶然目撃したマークが殺害現場へ急行する。ここには犯人に繋がるヒントがすでに隠されている。鏡を利用した映像トリックである。よく見ていれば一発で分かるかもしれないが、こうした図像的アイディアは大変面白いと思った。
 他にも、バスタブの湯気を使ったトリック、写真を使ったトリック等。アルジェントは随所に技巧的な演出を仕込みながら観客を煙に巻いていく。

 一方でアルジェントと言えば、やはりショック演出である。彼らしいハッタリの効いた演出も今作の醍醐味の一つである。
 例えば、からくり人形を使ったショック演出は相当恐ろしかった。また、赤ん坊の人形や子供の歌声といった小道具を使いながら、見る側に不穏な気持ちを植え付ける演出も見事である。生来のスリラー作家アルジェントの才気が伺える。

 殺害のアイディアでは、ラストの犯人の顛末、マークの捜査に協力する心理学者ジョルダーニの顛末が、かなりえげつなかった。アマンダの死に方には「エンゼル・ハート」(1987米)の元ネタ的な発見も出来る。このあたりの凄惨な殺害シーンの数々はジャッロ映画の大家アルジェントの面目躍如といった感じである。

 また、恐怖の狭間に一服の清涼剤的なユーモアを挟んでくるのも中々良かった。マークとジャンナのやり取り、特に腕相撲をするシーンは微笑ましく見れた。ジャンナが乗る車が中古のフィアットというのも可愛らしい。お喋りな警視のキャラクターも良い味を出していた。こうしたユーモアもアルジェント作品の特徴の一つだろう。

 映像も図像的に計算されたカメラワーク、シンメトリックな構図、豊富な色彩設計が至る所で見られ、これまで以上にアルジェントのこだわりが感じられた。初期三部作から確実にステップアップしていると言える。

 一方で、ストーリー上で首を傾げたくなる部分があり、そこについては少々突っ込みを入れたくなった。それはアマンダが何故殺されなければならなかったか‥である。結局、あの殺害現場に残されていた証拠が原因で犯人は追い詰められることになったわけで、このあたりの犯人の愚行はよく理解できない。今作は推理劇的な面白味を売りにした作品でもある。そこに、こうした犯人の迂闊なミスが出てくるとお粗末と感じるしかない。

 尚、音楽はアルジェント作品の常連ゴブリンが担当している。今回も作品内容にフィットした魅力的なスコアを書き上げており、両者の相性の良さがよく分かる。
[ 2015/10/23 01:38 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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