全編チープな作りながらSF映画史に残る感動的なラストは必見!
TCエンタテインメント (2015-04-03)
売り上げランキング: 36,002
「ダーク・スター」(1974米)
ジャンルSF・ジャンルコメディ
(あらすじ) 新天地を求めて宇宙を航行する探査船ダーク・スター号。任務中の事故で船長を失ったクルーたちは、不安に襲われながら新星の発見に期待を寄せていた。そんなある日、コンピューターの暴走で爆弾投下装置の起爆スイッチが入ってしまう。焦るクルーたちをよそに、どうにか起爆装置は止まった。しかし、今度はクルーの一人が連れてきた宇宙生物が船内で脱走してしまう。
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(レビュー) J・カーペンターとD・オバノンが学生時代に撮った自主製作映画を自らの手でリメイクした作品。
チープな特撮で作られた”ほのぼの”としたB級SF映画だが、何気に哲学的なメッセージが込められているので侮れない。その辺の低予算映画とは一線を画す重厚さがある。
怠惰な船員たちの生活もどこか深刻で、例えば変わり映えない日常からノイローゼになり日がな一日、星々を眺める者がいたり、ストレスから突然銃をぶっ放す者がいたり、何だかやるせない。
また、ラストの哀愁漂う幕引きには、ある種のロマンを見てしまう。確かに映像的にはバカっぽいのだが、日常からの脱出というカタルシス、あるいは人類の新しい未来への第一歩、はたまた人間はどこから来てどこへ行くのか?という壮大なテーマが裏読みできる。このラストによって、今作は間違いなく普遍的価値のある作品へと昇華している。ジャンル映画でありながら、永遠に記憶に残るような作品となった。
一方、物語自体は決して起伏があるわけではないので、退屈してしまうかもしれない。船員たちの気だるい日々を淡々と綴る中に、ちょっとした騒動が巻き起こる‥という、言わばシットコム形式の作りになっている。一つ一つの騒動がバラバラなので、ドラマ自体が余り盛り上がらない。予算的な制限もあるので派手な特撮シーンも入れられず、今のSF超大作を見慣れている人には少々きついかもしれない。
ただ、逆に言うと、そのデメリットを逆手に取ることで上手い具合に脱力テイスへと結びつけている‥という言い方も出来る。カーペンター作品の極意は、何と言ってもこのB級テイストにこそあり、それがこの作品からも滲み出ている。後の作品では余り見られないオフビートな感覚は逆に新鮮に映った。
また、脱走した宇宙生物を捕獲するシーンと、爆弾投下装置の暴走を止めようと慌てふためくシーン。この二つは中々スリリングに撮られており、全体の間延びした空気を絶妙に引き締めていると思った。こうしたサスペンスが作品に上手く緩急をつけている。
尚、この宇宙生物の追いかけっこは、D・オバノンが原案・脚本を手がけた「エイリアン」(1979米)の原型とも言える。色々な相似点が見つかり興味深かった。
笑い所もかなり用意されていて、一番笑ったのは終盤に登場する船長だった。「今年のドジャースは?」というセリフに爆笑してしまった。
BGMは主にカントリー・ミュージックでまとめられている。宇宙空間のビジュアルとのミスマッチが新鮮である。作品の緩いテイストにも、ほどよくマッチしていた。
そう言えば、昨年見た
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(2014米)も、敢えて懐メロとSFを掛け合わた作品だった。こういう音楽の使い方は監督のセンスがモロに出るので面白い。