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キングスマン

軽快な作りが心地よい。しかし、思っていたのと違っていたのは少し残念。
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「キングスマン」(2014米)星3
ジャンルアクション
(あらすじ)
 国際的なスパイ 組織“キングスマン”のエージェント、ハリーは任務中に同僚を死なせてしまう。遺族に謝罪するが拒絶され、後悔の念に駆られた。それから17年後、亡き同僚の息子エグジーは荒んだ暮らしを送っていた。ある日、彼は町のチンピラと揉め事を起こして警察に捕まってしまう。ハリーは自責の念から自暴自棄になるエグジーを引き取り、新たなキングスマンにさせるべく養成所にスカウトした。その頃、IT富豪のヴァレンタインは水面下で恐るべき陰謀を進めていた。

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(レビュー)
 国際的な犯罪組織と戦うスパイ組織”キングスマン”の活躍を描いたアクション映画。

 原作はマーク・ミラーの同名ノベル。監督・共同脚本はM・ヴォーン。このコンビで思い出されるのが、なんちゃってヒーローの活躍を描いた青春アクション・コメディの傑作「キック・アス」(2010米)である。だからと言うわけでもないが、今回のドラマはほとんど似たような構成になっている。

 俺は、てっきりハリーを演じたコリン・ファースが主役だと思っていた。現に宣伝でも彼がプッシュされてたように思う。しかし、実際には彼が主役ではなく、キングスマンだった亡き父の後を受け継いだ青年エグジーの成長物語だった。これは「キック・アス」の主人公デイヴがビッグ・ダディの意志を受け継いで真のヒーローになっていくのと、ほとんど同じシノプスである。したがって、個人的には今回のストーリーに余り新味は感じられなかった。

 加えて、ハリーがヴァレンタインと対決していくプロットと、エグジーが養成所で猛特訓を受けるプロット、この二つが並列的に展開されるのでドラマの求心力も弱い。本来であれば、エグジーが主役なのだからそこに比重を置いて描くべきであろう。「キック・アス」は、最初からデイヴが主役として確立されていたので感情移入もしやすかった。残念ながら、今回はストーリーが散漫と言わざるを得ない。

 もっとも、こうした不満はあるものの、映画自体は軽快なテンポで進むので退屈することなく最後まで楽しめた。それは、やはりハリーというキャラクターが際立っていたからだと思う。

 キングスマンの組織は表向きは仕立て屋をしており、裏では様々な秘密兵器を駆使して世にはびこる巨悪を退治している正義の地下組織である。そして、舞台がイギリスという事もあり、その出で立ちや立ち振る舞いは大変紳士的である。どんな難局に遭遇しても冷静沈着、クールでシニカルな言動で乗り越えてみせる。

 これをハリー役のコリン・ファースが実に華麗に演じている。これは、もはや”キャスティングの妙”としか言いようがない。彼はイギリス出身の俳優で「英国王のスピーチ」(2010英オーストリア)でオスカーを受賞したこともある演技派である。その彼がスタイリッシュにアクションをキメまくるのだから、たまらない。かつての「007」シリーズのようなシックな雰囲気も併せ持っており、往年のファンなら懐かしい思いもするだろう。実際、彼が携帯する秘密兵器などは決して派手ではないが、気の利いた小物が多く初期「007」シリーズを想起させる(残念ながら車だけはなかったが‥)。

 彼が奮闘するアクション・シーンも素晴らしく、特に序盤のパブのシーン、中盤の教会のシーンは演出の切れも相まって実に格好良かった。尚、パブのシーンは、その後の伏線となっている。こうした気の利いた作りもケレンに満ちていて好印象である。

 ただ、先述したように、本作は彼が主役というわけではない。あくまで彼の意志を受け継いだエグジーが主役であり、コリン・ファースは中盤で退場してしまう。物語はここからエグジーが一人前のキングスマンになっていく過程を描く、言わば成長ドラマとなっている。

 確かに、エグジー役の青年は若い頃のブラピに少し似ている所や、どこかアンニュイな所も悪くないと思った。下層階級の出自という設定も上手くハマっていたし、同じイギリスでも、どちらかと言うとK・ローチ監督の作品に出てきても不思議じゃない魅力的な俳優だと思った。クライマックスのアクションも相当頑張っていたし、キングスマンのリーダー、アーサー役を演じた名優マイケル・ケインとも堂々と渡り合っていた。今後も活躍を望まれる若手俳優だと思う。

 しかし、前半であれだけクールなコリン・ファースを見せつけられた後だと、どうしても役柄的に食われてしまう。子供が無理して紳士ぶっていて余り格好良いとは思えなかった。可愛いらしいという表現ならシックリくるが、この映画に求める物はそうではないだろう。

 どうやら今作は全米でスマッシュ・ヒットを飛ばして続編の製作が進んでいるらしい。もし実現すれば、その頃には彼ももう少し貫録が増しているかもしれない。そういう意味では、彼に関しては続編に期待したい。

 M・ヴォーンの演出は今回も非常に安定している。特に、アクション演出に関しては、毎回新しいアイディアを出してくるので感心させられる。
 例えば、序盤の後ろ向きのカーチェイスに始まり、先述した教会のド派手な長回しアクション。更には、エグジーが受ける養成所の試験の数々、パラシュートのクダリなどはハラハラドキドキさせられた。クライマクスの”花火大会”も、ここまで悪ふざけが過ぎると痛快である。観客を楽しませようというサービス精神が存分に感じられた。フレッシュなアクション演出が大いに楽しめる映画である。
[ 2015/11/05 02:50 ] ジャンルアクション | TB(0) | CM(0)

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