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マリアの受難

「ラン・ローラ・ラン」や「パフューム」を撮ったT・ティクバ監督。これは彼の幻の長編デビュー作品である。すでに彼の才気が伺える。
マリアの受難マリアの受難
(2007/09/07)
ニナ・ペトリ、ペーター・フランケ 他

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「マリアの受難」(1993独)星3
ジャンルロマンス・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 暴君な夫の相手と半身不随の父の介護に追われる主婦マリアは疲弊しきっていた。窓から見える向かいのアパートには実直そうな青年が住んでいる。ある時、2人は視線を交わし接近する。青年との交流に暫しの解放感を得るマリアだったが、”母親”の話が出ると突然怯え始めた。母に関する過去。それが次第に顕になってくる。それは幼い頃に叔母から貰ったお守りの人形に関係していた。マリアはどこにいようと、まるでその人形と一心同体のように心身が繋がっていたのだ。
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(レビュー)
 日本では「ラン・ローラ・ラン」(1998独)でデビューしたT・ティクバ監督。本作はその前に撮られた作品であり、彼の実質的な長編デビュー作品である。長らく未公開だったが「パフューム ある人殺しの物語」(2006独仏スペイン)の公開に合わせて初公開された。

 スタイリッシュな映像演出が特徴のティクバであるが、本作でもその資質は所々に見ることが出来る。
 時計の秒針や昆虫のクローズアップ、斜めのアングル、強烈な照明効果等、神経症的なカッティングの連続がマリアの混乱した心理状態を表現している。また、効果音の使い方も巧みで、マリアの脳内でざわめく雑踏の声、心臓音、ドアを叩く音、やかんが沸く音等、鬱屈した感情が爆発寸前にあることを表現している。作りすぎ、凝りすぎな感はするものの、デビュー作にしてこの卓越したセンスには驚かされる。何より平凡な日常をここまでサスペンスタッチに、時にはホラー映画顔負けのタッチで描いた所に並々ならぬ才能を感じた。

 ただ、ストーリー自体は硬直的過ぎるきらいがあり余り感心できる物ではなかった。過去の回想が長すぎるため、展開の流れを寸断しているのが惜しい。見ていて「早く次に‥」という欲求が先に立ってしまった。

 俺がこの映画で面白いと思ったのは人形の存在である。
 この人形はその外形からしてあからさまに男性器を髣髴とさせる。彼女はこれを心の支えとしているが、抑圧的な家庭からの解放、つまり社会的な意味での独立を考えた場合、それを手放すことは必然的なものになっていく。言わば、この人形は彼女のトラウマを表すものだと思う。夫、父親の象徴であるところの男性器、つまりこの人形を捨て去ることで、彼女はトラウマから開放される。そう解釈して良いだろう。
 やや難解なラストだが、この人形の意味を踏まえて読み解けば、マリアの再生という所に自ずと繋がっていくように思う。

 ”女性の独立”というと、ありきたりなテーマに思えるが、こういっった寓話で切り取ったところは中々ユニークである。この非凡なセンスには脱帽である。
[ 2008/04/23 19:02 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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