ファムファタール物の決定版!
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント (2005-09-28)
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「上海から来た女」(1947米)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 元船員のマイケルは、ある夜、公園で暴漢に襲われていた美しい人妻エルザを助けた。彼女の夫は弁護士をしているバニスターという男だった。夫婦は旅行を計画していたが、そこにマイケルを連れていくことにした。旅が進む中でマイケルは次第にエルザと親しくなっていく。そんな二人を、バニスターが雇った探偵グリズビーが監視をする。
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(レビュー) 美しい人妻に翻弄される元船員の災難をスリリングに描いたロマンス・サスペンス。
いわゆるファム・ファタール映画だが、序盤はよくある展開で余り面白くはなかった。設定説明がこなれてないため、ちょっと分かりづらい面がある。
しかし、本作は序盤のグダグダっぷりを除けば、中盤以降はかなり持ち直していく。マイケルがグリスビーから”ある計画”を持ちかけられてからの展開が秀逸で、終盤では思わぬドンデン返しが待ち受けている。クライマックスの銃撃戦、虚無的なエンディング等、実に抜け目のない作りが徹底されており、グイグイと画面に引きつけられた。
製作・監督・脚本はO・ウェルズ。聞くところによれば、この映画は約1時間近くカットされて公開されたらしい。どうも人物の出し入れに不自然さを感じたのは、そのせいかもしれない。
「黒い罠」(1958米)を見た時にも思ったのだが、O・ウェルズはストーリーを”語る”という事に関しては、あまり関心がないのかもしれない。
一方、所々の演出には唸らされる物があった。中でも、語り草になっているのが、クライマックスの遊園地の鏡の部屋で行われる銃撃戦である。この眩惑感、高揚感とカタルシスは、映画史に残る名場面と言っていいだろう。尚、このシーンは様々な映画でもパロディ化されている。一番有名なのが「燃えよドラゴン」(1973香港米)のクライマックス・シーンである。あれはここから発想が来ている。
他にも、不安感を煽る歪な画面構図や、チャイニーズ・シアターにおける追跡劇の緊迫感を煽るタッチ等、様々な場面でウェルズの卓越した映像センスが見られる。彼の”画作り”に対する執着が存分に味わえた。
キャストでは、エルザ役のリタ・ヘイワースの美しさに見惚れた。彼女の代表作は前年に製作された「ギルダ」(1946米)を挙げる人が多いと思う。確かに「ギルダ」ではリタの歌とダンスが堪能できる。しかし、容易に想像できてしまうラストや、ストーリー展開の凡庸さを含めると、本作に比して見劣りしてしまう。作品としては本作の方が出来が良いと思った。
尚、リタはO・ウェルズと結婚していたが、本作の公開後に離婚した。生涯5度の結婚をしたリタは正に恋多き女優だった。