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モンテ・ウォルシュ

去りゆく西部時代を哀愁タップリに描いた佳作。
モンテ・ウォルシュ [VHS]
20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント (1994-04-21)
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「モンテ・ウォルシュ」(1970米)star4.gif
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 流れ者のカウボーイ、モンテとチェットは、かつて訪れたことがある町に戻ってくる。2人は経営難に陥る牧場に雇われ、そこに一時身を置くことにした。様々な面々が集い和気あいあいと仕事が始まる中、モンテは荒馬の調教師ショーティーに一目置く。2人とも銃の腕がピカイチだった。そんなある日、いよいよ牧場の経営が立ち行かなくなり 、ショーティーが解雇されてしまう。寂しく見送るモンテとチェット。モンテは酒場の女でかつての恋人マルティーヌを抱いてその寂しさを紛らわした。カウボーイを辞めて彼女と寄りを戻しても良いかもしれない‥。モンテはそう思うようになっていく。

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(レビュー)
 去りゆく西部開拓史を静かに綴った秀作である。

 派手な銃撃戦もなければヒーローも出てこない。見終わった後にスカッとする爽快感もない。しかし、過去の栄光にすがり付きながら生きるモンテの心情が丁寧に筆致されており、鑑賞後には深い感銘を受けた。S・ペキンパー監督の佳作「砂漠の流れ者」(1970米)に通じるような哀愁がある。

 監督は数々の作品で素晴らしい撮影をしてきた名カメラマン、ウィリアム・A・フレイカー。「ブリット」(1968米)のカーチェイスシーンや、「ローズマリーの赤ちゃん」(1968米)の不穏な映像等で、カメラマンとしての腕は高く評価されている。その彼が初めて監督したのが本作である。初演出ながら見事な仕事ぶりを見せいている。

 例えば、モンテが娼婦のベッドで煙草を吸うシーン。女に邪魔されて中々吸えないというユーモラスなやり取りが何とも可笑しかった。他にもこの手のユーモアはたくさんあって、牧場の専任コックにまつわるエピソード、モンテの髪型や入れ歯に関する小ネタ等。ドラマ自体は非常にシリアスなのだが、ユーモアが要所に配されており、全体的に非常に取っつきやすい作品となっている。エンタテインメントとしてバランスがよく考えられていると思った

 一方、中盤以降はシリアスなトーンが横溢し、テーマが絶妙の按配で強調されている。過疎の町の寂しさ、過去にしがみつくことでしか生きられないモンテの哀愁といったものが抒情的に綴られ、見ながら終始、心に沁み渡った。相棒のチェット、ライバルのショーティー、馴染の娼婦、そして愛するマルティーヌ、皆がモンテの周囲から去っていく所に、時代の流れと古き西部時代の終焉が実感させられる。モンテの心痛が丁寧に描かれているので自然と彼に感情移入できた。

 また、彼が荒馬を乗りこなそうとして町を破壊しまくるシーンも印象的だった。ここは単にアクションとしてのロデオではなく、彼の鬱積した感情の爆発、つまり新しい時代に負けてなるものか!という西部の男の”魂の叫び”のように思えた。荒馬はモンテの前に立ちはだかる「変革」の象徴であろう。そして、それを乗りこなそうとするモンテの凄まじいまでの執念は、己のプライドの表明であろう。このシーンは実に長いシーンとなっている。おそらくフレイカー監督も、このシーンには色々な思いを込めたのだと思う。映像的にもダイナミックで見応えがあった。

 このようにフレイカーの演出は軽妙でありながら、締める所はきちんと締め、実に堅実にまとめられていると思った。初監督でこれだけの仕事をしてのけたのだから大したものである

 ただし、彼はこの後、順調に監督業を続けられたわけではない。未見ではあるが、往年の人気テレビシリーズを映画化し、先頃リメイクもされた「ローン・レンジャー」(1981米)を映画化している。しかし、こちらは余り評価が高くなく、日本でも未公開のまま終わってしまった。その後はTVシリーズなどの監督をしながら、結局元の撮影監督に戻った。一定以上の演出手腕はあるのだろうが、脚本が余り良くなかったのだろう。

 その点、今作の原作は西部劇の名作「シェーン」(1953米)を書いたジャック・シェーファーである。共同脚本は「何がジェーンに起こったか?」(1962米)や「飛べ!フェニックス」(1965米)「特攻大作戦」(1967米)等、いわゆるマッチョな作風を信条とするルーカス・ヘラーが担当している。R・アルドリッチ監督とのコンビが多いのだから当然男臭いドラマを描くことに手練れているのだが、その資質が本作の”昔気質な西部の男”モンテのキャラクター造形によく表れている。今作はこうした才人たちによって支えられたドラマなので、安心して見ることが出来る。

 キャストでは、モンテ役のL・マーヴィンが絶品だった。男の中の男をやらせれば右に出る者がいない名優だが、今回は剛直一辺倒に収まらず、ユーモアを所々で出しながら硬軟自在の演技を披露している。相棒チェットを演じるのはJ・バランス。彼は終始朗らかな表情を貫きマーヴィンとのバランスをはかっている。

 尚、監督がカメラマン出身ということもあり、映像も素晴らしかった。

 今作で唯一難を上げるとすれば、マルティーヌの顛末であろうか‥。ここは少し唐突に感じた。そもそも彼女に持病があるという情報が明示されていなかったし(タバコでむせるシーンがある程度)、最後に至るまでの伏線が少し弱いと感じてしまった。
[ 2015/11/30 00:21 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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