アウトロー然としたブロンソンの演技が作品に説得力をもたらしている。
Happinet(SB)(D) (2015-09-02)
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「ストリートファイター」(1973米)
ジャンル人間ドラマ・ジャンルアクション
(あらすじ) 1930年代のニューオリンズ。流れ者チェイニーは、うらびれた倉庫で行われている闇の賭け喧嘩試合(ストリートファイト)の存在を知る。彼はマネージャーのスピードに自らを売り込み、ストリートファイト界で次々と対戦相手を倒して有名になって行く。やがて、2人はナンバー1ファイターのジムとマネージャーのギャンディルに勝負を申し込む。死闘の末、ジムを倒した2人は大金を手にし勝利の美酒に酔いしれた。ところが、スピードは根っからの博打狂で、その稼ぎを全部賭けですってしまう。
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(レビュー) 賭け喧嘩の世界でのし上がっていく男たちの友情を熱く活写したバイオレンス作品。
監督・共同脚本はアクション映画界の名匠W・ヒル。主演は「う~ん…マンダム」でお馴染みのC・ブロンソン。男臭いキャラクターを売りにした二人がタッグを組んだのが、この「ストリートファイター」という作品である。別に格闘ゲームの映画ではない。
物語は実にストレートにまとめられている。予想通りの展開を見せ、少々食い足りない部分もあるが、男の”意気”をここまでケレンミタップリに見せられると、正直参りましたと言うほかない。凝縮されたドラマは説得力十分で、何よりブロンソンのフェロモンムンムンな喧嘩ファイトが作品の根底をしっかり支えている。
賭け喧嘩は、薄汚れた倉庫、あるいは貨物船の甲板等、人気のないうらびれた場所で行われる。1930年代という時代背景が上手く効いていて、現代ならすぐに見つかって警察に捕まってしまうだろう。そういう意味では、まずこの時代設定が中々上手いと思った。
そこで行われる賭け喧嘩は正にルール無用、名だたる荒くれ者たちが拳で殴り合う非情の世界である。
正直、ブロンソンは他のファイターたちと比べると体力的にも年齢的にも見劣りしてしまう。どう見ても勝ち目がなさそうなのだが、そんな彼が巨漢を次々となぎ倒していくあたりがいかにも映画的で、その様子は正に”痛快”の一言である。
また、寡黙で冷静、女よりも金が大事というストイックさが凛々しく、正に男の生き様ここにあり!的な頼もしさが感じられた。
逆に悪く言えば、昔気質な男根主義の象徴とも言えるかもしれない。しかし、ブロンソンが演じれば、それすらも嫌味に写らない。自分はヒーローに憧れる少年のような目線で彼の活躍を見ることが出来た。
チェイニーの相棒兼マネージャーとなるのがJ・コバーン演じるスピードである。こちらは女と金にだらしない日和見な男で、一言で言ってしまえば典型的なチンピラである。これをコバーンは実に飄々と演じている。ブロンソンとの対比も面白く、こちらも好演していると思った。
物語はこの二人の友情を軸に据えながら展開されていく。ちなみに、途中から彼らの他に医師免許を持ったカウンセラーが登場してきて、二人のコンビに加わるようになる。こちらも中々良いキャラをしていた。
やがて、彼らは業界を牛耳る宿敵ギャンディルの恨みを買い、窮地に追い込まれてしまう。映画の後半は、この窮地をどうやって切り抜けていくのか‥?そこを中心に描かれていくようになる。
しかして、クライマックスは実にアツい展開が待ち受けていて感動的だった。正に男の友情とはかくありなん!というような、ある種「走れメロス」的なカタルシスによって堂々と締めくくられている。
また、このクライマックスに登場する”敵役”も中々の造形をしていて、ヒールらしからぬ清々しさに好感が持てた。正々堂々とした立ち振る舞いが心憎い。
このクライマックスの手前、チェイニーが恋人の元を訪れるシーンも味わい深かった。実は、恋人とは言っても、彼女は本当に彼の恋人だったかどうかは分からない。流れ者のチェイニーにとっては、単なる遊びだったかもしれない。映画は二人の関係を敢えて伏せており、それがかえってこのシーンを味わい深いものとしている。セリフではっきりと語らない絶妙な二人のやり取りから、色々な事を想像してしまいたくなった。
ラストも実に洒落た終わり方になっている。実は、この映画にはチェイニーの素性は、全くと言っていいほど出てこない。彼がどこから来てどこへ行くのか?家族はいるのか?過去にどんな仕事をしていたのか?そういった全ての情報が不明なのである。このキャラクターの不鮮明さが、ラストの味わい深さに繋がっているように思う。
つまり、さすらう男のダンディズムとでも言おうか…。謎は永遠に謎のまま…というロマンチックな神秘性が加味されることで、チェイニーというキャラクターが妙に愛おしく感じられてしまうのだ。この余韻がたまらない。
W・ヒルの演出は割とアッサリとしている時もあるのだが、今回はジックリと腰を据えて演出しているように思った。喧嘩シーンはもちろんお手の物で、このあたりの捌き方もよく弁えている。
但し、あれだけ激しく殴り合っているのに顔にアザが一つもできないというのは、いただけなかった。もちろん本作は、ブロンソンという俳優を前面に出したスター映画的な側面を持つ作品ではある。しかし、リアリティを追求するのであれば特殊メイクなどを駆使して、このあたりは上手く作り込んで欲しかった。これではせっかくの迫力のアクション・シーンも台無しである。