かの「食人族」を現代に甦えらせた作品。
「グリーン・インフェルノ」(2013米)
ジャンルホラー
(あらすじ) 女子大生のジャスティンは、環境活動家グループのリーダー、アレハンドロに好意を抱き、彼らが南米ペルーで行う抗議活動に参加する。その活動は全世界にアピールされ、彼らの目的は見事に達成された。しかし、その帰途で彼らを乗せたセスナ機がジャングルの真っ只中に墜落してしまう。そこはヤハ族の集落だった。ジャスティンたちは恐怖の体験をしていく。
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(レビュー) 大学生のグループが食人族の餌食になっていくホラー映画。
ヤハ族の蛮行に批判が集まり、本国アメリカでは公開が延期されたという曰くつきの作品である。日本でも公開を待ちわびていたファンが多かったと思う。
実際に見てみると、目くじら立てて怒るほどではないように思った。第一フィクションにまでケチをつけてどうしようというのだろう?あくまで映画の中の世界である。しかも、ヤハ族を演じた原住民は、決して嫌々撮影に参加したわけではなく、結構楽しんで演技していたというではないか。実に困ったものである。
さて、日本では80年代に「食人族」(1981伊)という映画が公開され大ヒットを記録した。いわゆるモンド映画ブームの終焉に作られた作品であり、センセーショナルなキャッチコピーとCMで大きな話題となった。
本作はその再来である。劇中に登場する数々のゴア描写は苦手な人にはきついだろう。逆に、この手のホラー映画を見慣れている人にとっては、案外生温く映るかもしれない。
ストーリーは一本調子でシンプルであるが、中々良くまとまっていると思った。登場人物たちの裏切り、衝突、結束といったパワーゲームが盛り込まれているので最後まで飽きなく見れた。
ジャスティンは国連弁護士を父に持つお嬢様で、そのキャラクターがドラマの起点となる。言わば、我々観客の目線だ。彼女はアレハンドロに憧れて今回の活動に参加する。そのグループには様々な人間がいて、ジャスティンに淡い恋心を抱く黒人青年や、狡猾な罠でジャスティンを貶めるアレハンドロの恋人、レズビアンのカップル、お調子者のマリファナ野郎といった一癖も二癖もある連中が揃っている。このあたりの群像劇が面白い。
また、文明による自然破壊がいかに愚かしいことか‥というメッセージも上手くストーリーの中に盛り込まれていると思った。皮肉的なオチが効いている。
ただ、ヤハ族に捕われた彼らが脱出を試みるサスペンスで幾つか突っ込みたくなるような場面があったのも事実で、この辺りはもっと丁寧に作って欲しかった。
監督・共同製作・共同脚本は
「ホステル」(2001米)などで一部のホラー・ファンから熱狂的な支持を受けるイーライ・ロス。露悪的な残酷描写は今回も健在で、かの「食人族」にオマージュを捧げるべく本作を撮ったというのは合点がいく。彼が追求するのは、いわゆる見世物映画なのだろう。それは「ホステル」の時から一貫していると思った。
キャストは、ロス監督の妻がジャスティン役を熱演している。他のキャストも極限下における混乱ぶりを見事に体現していて見事だった。
尚、クレジットが始まって早々に退席してしまった人がいたが、この手のホラーは最後に必ずサプライズを用意しているものである。クレジットが始まったからと言ってすぐに席を立たない方が賢明である。