この齢にしてこの執念は凄い。
トランスフォーマー (2013-06-07)
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「ニッポンの嘘~報道写真家 福島菊次郎90歳~」(2012日)
ジャンルドキュメンタリー・ジャンル社会派
(あらすじ) 報道写真家・福島菊次郎の半生を、彼が撮った写真と共に綴った社会派ドキュメンタリー。
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(レビュー) 90歳にしてこのエネルギッシュな姿勢には感嘆する。
映画のラストは東日本大地震の現場へ向かう菊次郎の姿で締めくくられるが、この情熱は一体どこから来るのだろうか?『生涯現役』。そんな言葉が思い浮かんでくる。ジャーナリズムは死なず、である。
映画は彼の過去と現在の姿を通して、日本の近代史、彼の生い立ちが振り返られていく。
幾つかターニングポイントとなる事件が紹介されているが、最も印象的だったのは広島の原爆被害者を撮影した時の話である。映画やドラマなどを見て知っていたつもりだったが、やはり本当の被害者の姿を映した写真を見せられると衝撃的である。彼らが地獄のような苦しみの中でのたうち回って死んでいったことがよく分かる。これこそ嘘偽りのない真実のレポートである。
菊次郎自身も相当、苦悩しながら撮影したようだが(撮影中に精神病院に入院した)、そのかいあって真に迫るものが感じられた。
また、彼は広島の原爆傷害調査委員会(ABCC)についての写真も撮っている。これも衝撃的だった。米軍の命令で原爆被害者の解剖を堂々とやっていたというのは、今では考えられない事実である。完全に人権を無視した蛮行で何ともやりきれない思いにさせられた。
戦後直後の原爆スラム街の写真も然り。
映画の前半は、概ね広島の原爆にまつわる話が続き、一つ一つのエピソードに彼の思いと歴史の重みが痛感させられた。
中盤から、菊次郎の話は”熱き学生闘争の時代”に突入していく。しかし、これは余り新味が感じられなかった。というのも、これこそドラマや映画でたくさん見てきたからである。知らない人が見れば面白く見れるかもしれないが、自分には今一つ興味が持てなかった。
更に、映画は菊次郎のプライベートを追いかけている。彼の生い立ちを振り返りながら、現在の生活をオーバーラップさせていくのだが、こちらも今一つ面白味が感じられなかった。もしかしたら、過去と現在を対比させることで<人間>=<菊次郎>を立体的に炙り出そうとしたのかもしれないが、彼自身が語っているように、彼はいわゆる平凡で孤独な独居老人である。それを見せられても‥という感じはした。