これもまた執念のドキュメンタリー。
マクザム (2008-07-25)
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「蟻の兵隊」(2005日)
ジャンルドキュメンタリー・ジャンル戦争
(あらすじ) 終戦当時、中国に残留して中国国民党軍に編入された日本兵の謎に迫ったドキュメンタリー。
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(レビュー) 終戦後、中国に残って戦っていた日本兵がいたということも知らなかったし、それを白日に下に晒そうとした人物がいたことも知らなかった。ドキュメンタリーの醍醐味の一つに、知らないことを教えてくれるという事がある。本作は正にその欲求を満たしてくれるような作品だった。
それにしても奥村氏の真実追求の姿は見てて実に頼もしかった。一体誰が自分たちに戦うことを命じたのか?中国国民党とどんな密約が交わされたのか?彼は謎の究明に全身全霊をかけてのぞんでいく。倒れていった戦友たちのため、今尚この過去に後悔と憤りの念を抱いている者達のために‥。
奥村を含めた当時の戦友たちは、証拠となる密約を裁判に提出して国を訴えた。しかし、裁判所はそれを取り下げ、奥村たちの主張を退けた。時間だけが虚しく経過する中、奥村と撮影隊は自分たちの力で真実を突き止めようと中国へ渡る。そして、当時の状況を記した証拠品を見つけてカメラに収めていく。これぞジャーナリズム魂である。製作サイドの本気度が伝わってくる。
しかし、奥村の真実追求の旅は思わぬ”負の遺産”を彼自身にもたらす。戦時中に中国人を処刑したという現実が蘇り、その処刑場所を訪れて涙ながらに悔恨するのだ。彼は自ら進んで処刑を行ったわけではない。軍の命令で仕方なく行った。しかし、人を殺したという事実は決して拭うことができないのである。
本作の面白い所はここで、戦争によって運命を狂わされてしまった<被害者>奥村が、戦時中は中国人を処刑していた<加害者>だったという非情な現実をカメラにきちんと収めている点である。
戦争には加害者も被害者もない。この理不尽さが戦争の実態なのである。
尚、この中国残留事件についてはwikiにも詳しく書かれているので参考までにリンクを貼っておく。興味のある方はご参照いただきたい。
中国山西省日本軍残留問題