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マーサ、あるいはマーシー・メイ

不思議な雰囲気を持った心理スリラー。
マーサ、あるいはマーシー・メイ [Blu-ray]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2014-02-05)
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「マーサ、あるいはマーシー・メイ」(2011米) 星3
ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 山奥の邸宅から一人の少女が逃げ出した。彼女の名前はマーサ。姉夫婦に助けられた彼女は、山奥で起こったことに口を閉ざしながら平穏な暮らしを送るようになる。しかし、過去の記憶は決して拭う事は出来なかった。マーサは次第に情緒不安定になっていく。

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(レビュー)
 閉鎖的なコミューンから戻ってきた少女の心の闇を、眩惑的なタッチで描いた心理スリラー。

 過度な説明セリフや感情を盛り上げるBGMが一切かからないミニマムな作りは、決して娯楽作品とは言い難い内容である。しかし、マーサと姉夫婦の共同生活はまるでドキュメンタリーのような緊張感と不穏さで描かれており、この演出力には並々ならぬものを感じた。ある意味では、見る側の集中力が試される作品とも言える。

 また、物語は精神薄弱に陥ったマーサの視座で進むので、一体どこまでが現実でどこまでが妄想なのかハッキリとしない面がある。これがこの映画全体に独特の浮遊感をもたらしている。

 例えば、劇中に度々登場するコミューンの回想は、実際に体験した記憶なのか、それとも彼女の妄想なのかがよく分からない。

 また、典型的な例がラストである。姉夫婦が運転する車の前に誰かが飛び出して車は急停車する。その間、カメラはずっと後部座席に座るマーサのアップのままである。そのため飛び出してきたのが一体誰なのかは観客にはまったく分からない。おそらくマーサを追いかけてきたコミューンの人間だったのかもしれない。このシーンの手前で、マーサは森の中で黒塗りの車を見つけた。そのドライバーだったとも考えられる。しかし、一方で黒塗りの車もドライバーもマーサの妄想の産物でしかなく、本当は森の動物か何かだった、とも考えられるのである。第一、人間が急に車の前に飛び出すなんて、いくらなんでも不自然過ぎる。

 あるいは、その手前。マーサが湖で泳ぐシーンがある。彼女は対岸に一人の男を見つける。米粒みたいに見えるそれが一体誰なのかは、映画を見ている我々には分からない。マーサがそれを見て必死になって泳いで逃げたことを考えると、おそらくこれもコミューンの人間だったのかもしれない。しかし、彼は実際にそこに存在していたのか?はたまたマーサの恐怖心が生み出した妄想なのか?はっきりとしない。

 このように本作は、そこに存在するもの、あるいは過去の回想が、全て本当にあったこととは断定しにくいのである。大変不思議な映画である。

 監督はこれがデビュー作という新人監督である。独特の感性を持った作家で今後の活躍が大変気になった。系統的にはD・リンチの作風に近いかもしれない。

 また、マーサを演じたエリザベス・オルセンも本作がデビュー作となる。過去の記憶に苦しみながら、唯一の肉親である姉にすがる姿が実に痛々しかった。彼女はこれを機にハリウッドのメジャー大作にどんどん進出しており、先日見た「GODZILLAゴジラ」(2014米)ではヒロインを、「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」(2014米)では新キャラ、スカーレット・ウィッチを演じていた。スカーレット・ウィッチは今後もマーベル作品に登場の予定である。エリザベス・オルセンは、今最も注目すべき若手女優の一人と言っていいだろう。
[ 2016/02/02 00:37 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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