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見えない恐怖

卓越した演出に引きつけられる。
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「見えない恐怖」(1971英)star4.gif
ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 盲目のサラが病院から退院して叔父一家の元にやって来た。恋人スティーブと久しぶりに再会し、いつもの日常を取り戻すサラ。ところが、スティーブとのデートから帰宅すると家族の気配がなかった。実は一家は全員、殺人鬼に殺されてしまっていた。サラに魔の手が忍び寄る。

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(レビュー)
 盲目の女性が体験する恐怖の一夜を卓越した演出で描いた戦慄のスリラー。

 オードリー・ヘプバーンが主演した傑作「暗くなるまで待って」(1967米)と似たようなシチュエーションだが、こちらも中々どうして。ハンデを持ったヒロインが体験する恐怖感、殺人鬼との息詰まるような攻防、そして犯人捜しのミステリーを含め、大変よく出来た作品である。

 監督は職人監督R・フライシャー。この手のサスペンスはお手の物で、今回も卓越した演出が随所で光る。

 例えば、サラが浴槽にお湯を入れるカットがある。カメラが蛇口を捻る彼女の手元から浴槽へパンすると、そこには叔父の死体が‥。これなどはかなり衝撃的である。サラの目が見えないということを利用しながら上手く臨場感を引き出した演出である。

 また、殺人犯の顔を終始見せない演出も素晴らしかった。カメラは常に犯人の足元、あるいは手元のアップしか写さず、決して犯人が誰なのかを観客に見せない。しかし、犯人の特徴はしっかりと押さえていて、犯人は常に皮のブーツをはいていること。そして、荒っぽい性格であることが手の仕草などから読み取れる。そこから犯人が一体どういう人物象なのか色々と想像できてしまう。

 カメラワークで言えばもう一つ。床に散乱したガラスの破片、犯人が落したと思われるネックレスといった小道具を使いながら、非常にスリリングなアングルが連発されている。見ているこちら側をハラハラドキドキさせる見事なカメラワークだった。

 ストーリーも上手く組み立てられていると思った。映画の序盤に方々を転々とするロマ族が登場してくるが、これが犯人捜しのミステリーを幅広くしていて効果的だった。
 そして、彼らのアップで幕引きさせたのも非常に示唆的である。彼らの存在があることで、本作には社会派的なメッセージが付帯するに至っている。閉塞的な田舎町に特有の排他的な空気感とでも言おうか‥。それを暗に示したことで、単に怖い、面白いというだけの映画にはなっていない。非常に社会派的なメッセージを持ったエンタテインメント作品に昇華されている。

 ただし、犯人の見顕しについては少々肩透かしを食らってしまったが…。このあたりは伏線を張っておくべきだったように思う。どうにも取ってつけたような感じがしてならなかった。

 キャストでは、サラ役を演じたM・ファローの熱演が素晴らしかった。タイトルの「見えない恐怖」を見事に演じきり、同じく主演した「ローズマリーの赤ちゃん」(1968米)に勝るとも劣らない心身薄弱な演技を披露している。見てて同情してしまう程だった。
[ 2016/02/15 00:23 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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