移民をテーマにしたメロドラマ。
ギャガ (2014-11-05)
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「エヴァの告白」(2013米仏)
ジャンルロマンス
(あらすじ) 1921年、ニューヨークのエリス島。戦火のポーランドからエヴァが妹と一緒にアメリカの叔母の元を訪ねてきた。しかし、妹が結核と診断されて隔離されてしまう。そこをブルーノという男に助けられ、エヴァだけがひとまず入国することになった。実は、ブルーノは移民の女性たちを劇場で踊らせて売春を斡旋するヤクザだった。敬虔なカトリック教徒であるエヴァは妹の治療費のために仕方なく体を売ることになるのだが…。
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(レビュー) 不幸な移民女性とヤクザのメロドラマ。
1920年代を再現した映像が素晴らしく、文句のつけようがない出来栄えで感心させられる。CGが普及した現代だからこそ可能な映像マジックで、このあたりは物語のリアリティ面を強固に支えていると思った。
ただ、その一方でドラマはシンプルで食い足りない。エヴァの不幸の身の上を、ただひたすら追うだけで、クライマックスもストレート過ぎて余り驚きもない。
加えて、ドラマ上の転換点とも言うべき、ブルーノの”改心”に至る展開が弱い気がした。あれだけ傍若無人を繰り返してきた男にしては、随分と素直に”改心”したものである。そもそも彼に信仰心は無かったはずだが‥。このあたりの説得力が伴わいと、見ている方としても感情移入し辛い。
彼の”改心”を描くのであれば、警官に襲撃された後の方がスムーズだったのではないだろうか?あれだけ痛い目に合えば、いくら彼でも自分の”過ち”に気付くだろう。
もっとも、そうなると「エヴァの告白」という邦題はつけられなくなってしまうだろうが‥。尚、原題は「THE IMMIGRANT」=「移民」である。
また、エヴァが惹かれるマジシャンが登場してブルーノを含めた三角関係に発展していくが、これもマジシャンのキャラが余りにも善良過ぎて魅力に欠けた。そもそも過度な善良は逆に怪しさを増す物である。どう考えても胡散臭いし、エヴァはどうして彼にそこまで惹かれてしまったのだろうか?マンガやコメディではないのだから、もう少し年相応の成熟したロマンスを見せて欲しい。
というわけで、今作の見所は先述したプロダクション・デザインである。
そして、もう一つ。エヴァを演じたM・コティヤールの演技も見応えがあった。本来、熱演派タイプであるコティヤールが、今回は役所に沿った抑えた演技を貫いている。
例えば、初めて客を取らされた夜。空虚な眼差してブルーノを蔑み、そして自分自身までをも否定する所などは貫録の演技である。エヴァの喪失感が痛いほど伝わってきた。
そうかと思えば、不法滞在が見つかり収容施設に収監された夜、自分の指を切ってそこから出た血で口に紅をつけるシーン。これには凄味も感じた。鏡に写る自分自身を鼓舞するように頬をひっぱたく逞しさ‥。いやはや大した女性である。
一方、ブルーノを演じたJ・フェニックスは相変わらずコッテリした演技で、余り変わり映えがないのが残念だった。