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ルーム

長期監禁されていた母子が辿る非情な運命を感動的に描いたヒューマン・サスペンス。
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「ルーム」(2015米)star4.gif
ジャンルサスペンス・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 母ジョイと息子ジャックは外から隔離された小さな部屋に住んでいた。部屋の扉が開くのは週に一度だけ。男がジョイたちの食糧を配達しにやって来る時だけだった。ある日、ジョイがその男から暴行を受ける。その後、部屋の電気を止められてしまった。二人は寒さに凍えながら外に向かて助けを呼ぶのだが‥。

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(レビュー)
 長年監禁されていた母子の非情な運命をシリアスに綴ったヒューマン・サスペンス。同名原作の映画化である。

 母子の私生活を淡々と紡ぐ序盤からして何とも不穏な空気が流れている。部屋には小さな天窓しか付いておらず外は一切見えない。しかも壁は防音加工されており音も遮断されている。この異常な状況の中で、二人はいたって普通の暮らしを送っている。ジャックにいたっては、この部屋が自分の世界の全てだと思い込んでいる。すでにこの生活に慣れてしまっているのだろうか?

 映画前半は、2人が何のために、誰によって監禁されたのか?その謎が、幼いジャックの視線を通してジワジワと解明されていく。彼の視線に固定した演出が奏功し、実にスリリングに見れた。

 しかして、その謎は中盤で判明する。この事実には心を痛めてしまった。2人にはぜひ助かって欲しい‥。そう思わずにはいられなかった。

 映画はここから監禁部屋の脱出劇となり、一気にサスペンス・テイストが加速されていく。自分はここが一番テンションが高まった。初めて触れる外の世界の衝撃と感動を、ジャックの五感で語らせた演出が実に巧みである。自由を手に入れたと言う喜び。この開放感と高揚感に自然と胸が熱くなった。

 そして、ここまでだったらこの映画は、よくある普通のサスペンス映画で終わっていただろう。本作が凄いのはここからで、救出された二人のその後を描く第二幕へと入っていく。

 後半は一転してシリアスな人間ドラマとなっている。外に出たジャックの戸惑い。マスコミと世間に晒されるジョイの苦悩。更には、ジョイと両親の軋轢関係といったドラマがシリアスに綴られている。

 そこから導かれるテーマは実に明快にして普遍的だ。
 タイトルの「ルーム」とは、もちろん彼らが監禁されていた「部屋」を表したものであるが、もう一つ、彼らが生きる「世界」という意味も込められているように思う。監禁部屋という小さな「世界」から外の「世界」へ旅立つ彼らの生きる眼差し。それを謳い上げたのが、この「ルーム」なのではないだろうか。

 ちなみに、本作は基本的に前半はジャックの視座、後半から母親であるジョイの視座も交えて描くドラマとなっている。自分がここで興味深く観れたのはジョイの葛藤の方である。

 実は、ジョイ自身も7年間、この犯人に監禁されていた被害者である。7年前と言うと、彼女もまだ世間知らずな少女だったはずである。つまり、ジョイという女性は外界を知らないまま育った”未成熟”な少女のままだったわけである。その幼さは両親に対する憎しみの言動やインタビュアーの嫌らしい質問に対するヒステリックは反応といった物から見て取れる。
 そして、彼女は外の世界に出て精神的に追い詰められていくと、幼いジャックにまで八つ当たりをするようになる。子を持つ母親とは到底思えない言動である。同じ運命を味わった我が子なのだから、どんなに自分が苦しくても彼だけは守ってやろう‥。そう思うのが普通の母親である。しかし、心の弱い”未成熟”な彼女は自分のことだけで精いっぱいで、ジャックのことまで気が回らない。
 このジョイという母親は、その辿ってきた不幸な人生のせいもあろうが、ひどく幼く造形されており、それゆえ一般的な母親にはない特有の葛藤が見られて面白かった。

 彼女に比べると息子のジャックの方は、外の世界に適合し何とか上手くやって行こうという気持ちが見られる。特に、ラストの行動が実に立派なものに思えた。ここでジャックは、ある場所で”お別れ”の言葉を言う。これはかつての狭い「世界」に対する決別宣言であり、新しい「世界」へ歩もうとする意思表示と捉えられる。まだ幼いと思っていたジャックが、自分の置かれている状況をきちんと把握し、未来を見つめて行こうという意思を言葉に表した所が実に感動的だった。

 そして、おそらくだが、ジョイも彼のこの成長を目の当たりにして、本当の意味での母親になれたのではないか‥。そんな風に思えた。
 ジョイとジャック、どちらが欠けても成り立たない母子の絆がそこには存在する。母は子を見て学び、子は母を励まし‥。そんな熱い絆がこのラストから読み取れた。母子の成長を暗に示したこのラストは、人間ドラマとして見た場合、見事な着地点を見せている。

 本作の難は、若干サスペンスの演出に詰めの甘さが目立つところである。
 例えば、ジョイが考えた脱出計画は余りにもずさんであるし、監禁犯も余り頭が良いとは思えない。こんな犯人ならすぐにボロを出すだろうと‥と思えてしまったのは残念だった。割とスムースに脱出できてしまうので呆気なく感じられる。

 キャストは、ジョイを演じたブリー・ラーソンの熱演を評価したい。今回の役所は、前作「ショート・ターム」(2013米)と共通する部分もあるが(今回は子を持つ実母、前作は子を持たざる職場上の母親)、どちらも母性を体現したという点では中々の演技を見せいている。
 ジャック役を演じた子役も素晴らしかった。こう言っては身もふたもないが、邦画に登場する子役と比べると雲泥の差がある。こういう所でも日本映画は負けてるなぁ~と悔しい思いにさせられた。
[ 2016/04/28 01:26 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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