可愛らしいネズミの活躍を市川崑がシュールに描いたパペット・ムービー。
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ (2005-09-21)
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「トッポ・ジージョのボタン戦争」(1967日)
ジャンルファンタジー・ジャンルアクション・ジャンルサスペンス・ジャンルコメディ
(あらすじ) トッポ・ジージョは町の片隅で一人で暮らしている孤独なネズミである。ある晩、中々寝付けず夜の街に散歩に出かけた。すると目の前に赤い風船が飛んできて、ジージョはそれに一目惚れしてしまう。二人は一緒に夜の街を散歩することにした。一方その頃、5人組の男たちが銀行強盗を目論んでいた。狙う金庫の中には、ある目的のために作られたボタンが保管されていた。
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(レビュー) イタリアの人形芸術師マリア・ペレゴが生み出したネズミのキャラクター“トッポ・ジージョ”を主役にしたパペット・ムービー。 監督・共同脚本は市川崑。脚本には永六輔などが参加している。
尚、トッポ・ジージョはイタリアのみならず日本でも人気があり1988年と2003年にテレビアニメ化されている(未見)。
何と言っても、トッポ・ジージョの操演が素晴らしい。キャラクターの産みの親であるマリア・ベレゴ自身がトッポ・ジージョを流麗に表現しており、人間との共演も自然に見せてしまうあたり。当代随一の人形師の”技量”である。本作はこれだけでも一見の価値があろう。
一方、ストーリーは若干シンプルすぎるきらいがあるが、アクションあり、ロマンスありとまずまずの出来となっている。ただ、ペーソスに満ちたラストは賛否が分かれる所かもしれない。もし、本作を子供向けに作っているとしたら、この寂しいエンディングは失敗のように思う。もっと明朗なエンディングの方が良かったのではないだろうか?
市川崑の演出は実験的手法を用いながら、この寓話を見事に料理していると思った。
夜の描写が延々と続くため全体的にノワールタッチに拠っている。強盗団のシルエット表現や真っ黒な背景にぷかぷか浮かぶ赤い風船等、どこかアーティスティックな感性で切り取られ、さすがは映像派作家・市川崑と唸らされた。
色遣いも大変気を使っていて感心させられた。例えば、強盗団の靴下の色を夫々、個性的に分けているのは見事だった。中々洒落ている。
市川崑は元々はアニメーター出身の映画監督である。こうした数々の映像センスは、その頃に培われた物なのかもしれない。
また、シュールでナンセンスなユーモアも彼の作家としての大きな資質で、その作家性は今回も色濃く出ている。そもそもネズミが大活躍するという時点で本作は極めてナンセンスなファンタジーなわけだが、それを見事なまでに市川崑独自のシュールな語り口でまとめ上げられている。
但し、クライマックスのアクション・シーンに関しては、その意気込みが空回りしてしまった印象を持った。このあたりはパペット使いの限界が関係しているかもしれないが、もう少し上手く撮って欲しかった。少々”お遊び”が過ぎるように思った。