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エクス・マキナ

この視覚効果は一見の価値あり。
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「エクス・マキナ」(2015英)星3
ジャンルSF・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 世界最大の検索エンジンを運営するブルーブック社で働くケイレブは、社長ネイサンの別荘に招かれた。ケイレブはそこでネイサンが作った人工知能を搭載した女性型のロボット、エヴァのチューリング・テストに協力する。試験を行う過程でケイレブは次第に彼女に惹かれていく。

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(レビュー)
 人工知能を搭載した女性型ロボットを巡って展開されるSFサスペンス作品。

 様々なニュースで目にするようになってきたAIロボットであるが、これはその怖さを描いたスリラーである。ロボットがいつか人間を上回るような知恵を獲得した時、果たして世界はどう変わるのか?ロボットに支配される日が来るのではないか?そうした科学技術の進歩に対する警鐘は古くからSFのジャンルでは描かれてきたが、この「エクス・マキナ」のテーマも正にそこにあると思う。

 本作に登場するAIを搭載した女性型ロボット、エヴァは、ボディの半分は機械が剥き出しの状態でどこからどう見ても間違いなくロボットである。しかし、ケイレブと話す時にはいたってナチュラルで、少々表情が硬いことを除けば、ほとんど生身の人間と変わりはない。ケイレブはそんなエヴァと会話を重ねるうちに、ロボットであることを忘れて少しずつ惹かれていくようになる。
 そんな馬鹿な‥と思ってしまうが、映画を見ているとそれがごく自然の流れのように思えてしまうから不思議だ。それだけエヴァの造形や映像視覚効果が素晴らしいという事だろう。

 物語が後半に差し掛かってくると、このチューリング・テストを仕組んだネイサンの本性が露わになってくる。ケイレブを取り囲む環境が一変し、そこからドラマは俄然サスペンス色を増しながらスリリングに展開されていくようになる。

 しかして、クライマックスでは二重三重のどんでん返しが用意されていて、見終わった後には良い意味で”やられた”という感想である。
 おそらく、ハッピーエンドとして終わらせることも出来た映画だと思う。しかし、本作は敢えてそうしていない。作品が発するメッセージ、つまり科学技術の進歩に対する警鐘というテーマを重視したからに他ならないからだろう。そういう意味では、製作サイドの意識は非常に尊いと思う。

 監督・脚本はA・ガーランド。D・ボイル監督の”走るゾンビ”映画「28日後…」(2002英米オランダ)など、数々の作品で脚本を手掛けてきた才人である。本作は彼にとっての監督デビュー作となる。

 流石に脚本家出身だけあって、ストーリーテリングの上手さが光る映画だと思った。例えば、ケイレブとネイサンの会話一つとっても、実に興味深く見れる。初めて二人が出会うシーン、ネイサンはケイレブに友達のように接してくれと言うが、まさか自分の会社の社長相手にフランクに接することなんて出来ない。すでにここからしてネイサンの尊大さ、独善性が伺える。

 また、ネイサンの傍にいる日本人女性の容姿をしたロボット、キョウコの立ち回らせ方も後半の謎解きのヒントとしては上手いやり方だと思った。キョウコは英語が話せないのでセリフが一言もない。この”制限付き”の設定が、ネイサンの計画を一層ミステリアスに見せている。

 一方、演出はかなり抑制されている。まるでS・キューブリックのような均整の取れた空間。あるいは、人間とロボット、両方から見た視点をオーバーラップさせるような眩惑的な映像。テクニカルなシチュエーションを淡々と紡ぎながら不穏な空気を作り出している。目を見張るようなキラーショットはないが、ジワジワとくるような怖さが感じられた。

 とはいえ、映画中盤までは会話劇が中心となっているので、少々退屈してしまうのも事実だった。中盤のダンス・シーンのような、ちょっと笑えるようなユーモアは効果的で、こうした工夫がもっと散りばめられていれば、もう少し飽きなく画面に集中できただろう。

 それと幾つか説明不足の箇所があったのも残念だった。
 例えば、最後のヘリのシーンである。ネタバレを避けるために書かないが、ここは遠景のショットしかないので怠慢な演出に思えてしまった。ご都合主義、あるいは”逃げ”の演出に写る。
 また、エヴァが手に入れたボディの色が顔の肌の色と違うのではないか?という疑問も残った。
 そして、これが最大の突っ込み所なのだが、人里離れた別荘とはいえ、大会社の社長を誰も案じないのか?ということである。いくら隠匿生活を送っていても世界を牛耳るほどの大企業の社長である。警察やマスコミは放っておかないだろう。だとすれば、最後だってケイレブはあそこまで焦らずとも助かるのではないか?と勝手に想像してしまった。

 それにしても、エヴァに骨抜きになるケイレブを見ると、現代に生きる我々にも同様のことが言えるのではないか?と思えてしまう。例えば、生身の人間に見向きもせず二次元の異性にしか恋が出来ないとか、アイドルのCDに何万もの大金をつぎ込むとか、このあたりは近からず遠からずである。あるいは、ネイサンはロボットに性器を取り付ける研究もしていた。これなどは完全に現代のラブドールの進化形である。
 ここで描かれる物語を笑って見てばかりいられない。ゾッとするような怖さも感じられる。
[ 2016/07/19 01:03 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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