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ファインディング・ドリー

記憶を手繰り寄せながら自分の出自を見出していく旅の話はオーソドックスながらよく出来ている。
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「ファインディング・ドリー」(2016米)星3
ジャンルアニメ・ジャンルアクション・ジャンルファンタジー・ジャンルコメディ
(あらすじ)
 カクレクマノミのニモは故郷のグレート・バリア・リーフで、父マーリンと親友ドリーと楽しい毎日を送っていた。ある日、何でもすぐに忘れてしまうドリーが、ひょんなことから幼い頃の記憶を取り戻す。それは離ればなれになった両親との思い出だった。わずかな手がかりを頼りに一行はカリフォルニアの海へと旅立つのだが‥。

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(レビュー)
 2003年に大ヒットを記録したディズニー製作のアニメーション「ファインディング・ニモ」(2003米)の続編。ニモの親友ドリーの冒険をアクションあり、笑いあり、感動ありで描いた痛快エンタテインメント作品である。

 基本的に前作を見た上で鑑賞するのがベストだと思うが、特に知らなくても本作単体でも十分楽しめる。前作を振り返るシーンが少しだけ出てくるので、初見の人はそれを頼りに今回の物語を見るといいだろう。

 個人的には前作「ファインディング・ニモ」は大好きな作品である。監督含めスタッフが一緒ということで、今回の作品もかなり期待して見た。
 ただ、結論から言うと、前作ほどの面白さは感じられなかった。映像的な新味が薄れてしまったというのもあるかもしれない。前作はとにかく海底の美しさに感嘆させられ、これぞピクサーの映像表現の到達点だ!と唸らされたものである。その記憶が残っているせいもあり、今回の世界観にそれほどの感動を覚えなかった。

 また、前作の焼き直しに見える個所が数か所あり、そこももう一工夫欲しいと思ってしまった。

 そして、これが最大の難なのだが、ストーリーの構成の問題である。ドリーが両親を探しに冒険に出て、そのドリーをニモたちが追いかけるという二輪構成は悪くはない。しかし、問題はここからで、この二つが止揚するクライマックスに余りカタルシスが感じられなかった。思うに、ドリーとニモたちの友情に余り”厚み”が感じられなかったのが原因ではないかと思う。彼らの友情が表層的過ぎるきらいがある。ニモとマーリンを絡めた友情ドラマを具体的なエピソードでプレマイズしてあげれば、このクライマックスはもっと盛り上がっただろうと思う。

 ただ、そうは言っても、クオリティの高い映像、ツボを押さえた演出、伏線が見事に集約されていくクライマックスは確かに爽快感がある。このあたりにはディズニー・ピクサーの底力が感じられる。

 また、今回から新たに加わった新キャラも中々の個性派揃いで退屈しない。特に、ドリーの冒険の相棒となるタコのハンクは良いキャラをしていた。何にでも変身できるし、頭も切れる。その上、何だかんだ言ってドリーの事を気遣う優しさも持っていて、これは人気が出そうである。
 更に、ドリーが両親を探して乗り込む研究所には、様々なキャラがいて、こちらも一癖も二癖もある連中で見逃せない。ディズニーアニメを見ると、こうしたキャラクター作りの上手さは、毎度のことながら感心させられる。世界的に愛される、かのミッキーマウスを生んだブランド力は伊達ではない。

 さて、ここから少し偏った持論になってしまうが、こうした見方も出来る‥とうことで読んでいただけたら幸いである。
 今回の「ファインディング・ドリー」は、実は障害者の物語ではないかと思っている。ドリーはすぐに忘れてしまう記憶障害者であるし、彼女の冒険をサポートするジンベエザメのデスティニーは視覚障害者。シロイルカのベイリーは知覚障害者(と思い込んでいる)。タコのハンクは足を1本欠損している。主要キャラは、いずれも何らかの身体的欠損、心の病を持っていて、障害者のメタファーであることを暗に示している。
 したがって、ハンデを持った彼らが力を合わせて何かを成し遂げようとする今回のストーリーは、障害者に対するエール、ひいては障害がある無しに関わらず、観た人全員にに勇気を与えてくれる尊いドラマになっていると思う。それはまるでパラリンピックを見て感動するのと一緒である。障害を乗り越えて頑張る姿に、視聴者である我々は心揺さぶられてしまうわけである。

 くしくも、今年公開されたディズニー映画「ズートピア」(2016米)は人種差別の問題を暗にストーリーの中に仕込んだ社会派的な側面を持った作品だった。今回も只の痛快娯楽作品だけで終わっていない。こうした社会的弱者に対するエールを大胆に取り込むことで、いつの世にも通じる普遍性を持った作品になっている。

 表向きはドリーの両親探しという、ある種親子の絆の再生ドラマとなっているが、その裏側にはこうしたサブテーマが隠されているところにディズニーアニメの真骨頂がある。今回も実に抜け目がない。
[ 2016/08/12 12:56 ] ジャンルアニメ | TB(0) | CM(0)

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