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シング・ストリート 未来へのうた

個人的にツボに入りまくり!
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「シング・ストリート 未来へのうた」(2015アイルランド英米)star4.gif
ジャンル青春ドラマ・ジャンルロマンス・ジャンル音楽
(あらすじ)
 1985年、アイルランドの首都ダブリン。14歳の少年コナーは、父の失業で優秀な私立学校から荒れた公立学校への転校を余儀なくされた。早速虐めにあうも、めげずに学校に通っていたある日、モデルを目指す少女ラフィーナと出会う。一目惚れしてしまったコナーは、口から出まかせにバンドのビデオに出演して欲しいと頼む。こうしてコナーは学校の冴えない連中と即席のバンドを結成して猛練習に励むのだが…。

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(レビュー)
 好きな女の子のためにバンド活動を始める少年の心の成長を、80年代のヒットナンバーを交えて爽やかに綴った音楽青春映画。

 よくある話と言えば確かにそうなのだが、不況のどん底にあえぐ当時のアイルランドの社会情勢を忍ばせたことにより一定のリアリティを持った作品となっている。単なる夢見がちなチェリーボーイのストーリーだけで終わってない所が良い。

 コナーの鬱屈した感情は冒頭からよく表れている。両親の関係は完全に冷め切っており、いつ別居してもおかしくない状況にある。また、兄は引きこもりの音楽バカ。姉は音楽家になる夢を絶たれて別の仕事に就くために勉強をしている。現状、コナーの家族は決して恵まれているわけではない。当時の不況の煽りを受けて完全にどん底の状態にある。以降、こうしたコナーの複雑な家庭事情がドラマの舞台袖に時々登場してきてドラマにリアリティをもたらしていく。

 一方、コナーとラフィーナの恋愛ドラマはというと、こちらは見ているこちらが恥ずかしくなるくらいファンタジックに描かれている。コナーはバンドを組んで何とかして彼女に近づこうとする。彼の純情な行動は見てて素直に応援したくなった。

 80年代の音楽がバックにかかるというのも好印象である。デュラン・デュラン、ザ・クラッシュ、ザ・ジャム、ザ・キュア等が奏でる数々の名ナンバーが画面を盛り上げている。そして、コナーが組んだバンドのオリジナル・ソングもいかにも80年代的で個人的にツボに入りまくりである。コナー自身が作詞をしているという設定なので、歌詞の中には彼の心情も投影されており、強いメッセージを放っている。見ているこちら側にダイレクトに伝わってきた。
 ストーリーは至ってシンプルである。しかし、このシンプルさを補って余りある楽曲的魅力。それがこの映画の鑑賞感を豊饒な物にしている。

 監督・原案・脚本は「ONCE ダブリンの街角で」(2006アイルランド)で注目された俊英ジョン・カーニー。本作は彼の自伝的要素が入った作品だそうである。実際に彼自身、ロックバンドを組んでた時期があり、音楽に対するこだわりは相当強いものと思われる。「ONCE~」のクライマックスの歌唱シーンには心を揺さぶられた。
 歌唱シーン、楽曲的魅力に関しては本作も然りである。コナーが学校の体育館で初めて行うギグのシーン。暗い現実との対比で描かれたコナーの歌唱と夢想には切なくさせられた。

 また、全体的に展開が軽快なのでストレスなく見れるのも良い。音楽と映像を相関させた演出も手練れていて、この辺りのカーニー監督の手腕には唸らされるばかりだ。

 一方、ストーリー的にやや安易に映る部分があり、そこは少し詰めが甘いという気がした。話をスピーディーに進めるあまり、バンドを結成してから初めてのPV撮影を行うまでが若干性急に感じた。もう少し腰を据えた展開にした方が説得力が生まれたのではないだろうか。
 また、せっかく個性的なバンドメンバーが揃っているのだから、彼らのバックストーリーをもう少し本編に織り込んで欲しかった。

 ラストの締めくくり方は秀逸だった。その後のコナーの運命を見届けたい‥と思わせてくれるような、そんな余韻を残したエンディングになっている。映像上にそのまま表現されていたが、彼の先に待ち受けるのは正しく”荒波”であろう。もしかしたら非情な現実に敗北してしまうかもしれない。しかし、彼はまだ若い。やり直そうと思えばいくらでもやり直せる年齢である。その覚悟みたいなものが彼の強い眼差しから感じられたのが良かった。これぞ青春映画然とした潔い結末…そんな気がした。安易なロマンチズムに堕してない所が◎である。
[ 2016/09/16 07:55 ] ジャンル青春ドラマ | TB(0) | CM(0)

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