大ヒットを驀進中。今年を代表する1本になるであろう。
「君の名は。」(2016日)
ジャンルアニメ・ジャンルロマンス・ジャンルSF
(あらすじ) 千年ぶりの彗星の接近を1ヵ月後に控えた飛騨の山中。田舎町で鬱屈した日々を送る女子高生の三葉は、度々自分が東京の男子高校生・瀧になって都会生活を満喫している夢を見ていた。一方、東京に住む瀧も同じように夢の中で三葉として田舎暮らしを送っている夢を見ていた。戸惑いつつも夢の出来事を現実のように捉えて行く2人。次第に彼らの中で淡い恋心が芽生えて行く。
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(レビュー) 彗星の接近によって心が入れ替わってしまった少年と少女の数奇な運命を美麗な映像で描いたアニメーション作品。
すでに今年の映画興行収入ナンバー1の大ヒットを記録し社会現象まで起こしている本作。監督・脚本を務めたアニメーション作家・新海誠に俄然注目が集まっているが、おそらく彼にとってもこの作品は氏を代表する1本になるのではないだろうか。内容的に言っても、これまでの集大成のような作品となっている。
新海誠が注目されたのはアマチュア時代に発表した自主製作アニメ「ほしのこえ」(2002日)からである。ほぼワンマンで製作されたこの作品は、離れ離れになった少年・少女のすれ違いを壮大なスケールで描いたSF作品だった。また、その後に製作された
「秒速5センチメートル」(2007日)もこの系譜に入る作品で、やはり男女のすれ違いを独特のテイストで描いた淡いロマンス作品だった。
これまでの作品の全てではないが、少なくとも自分が観てきた作品は必ずと言っていいほど男女の”すれ違い”がテーマとなっていた。ここまで、こだわりを持って作品を作り続ける人と言うのも大変珍しい。ある意味で、非常に作家性の強い監督と言うことが出来る。
また、演出スタイルも非常に独特で、透明感あふれる映像やモノローグで紡ぐスタイリッシュな話法には、この人ならではの表現法がある。そこが好きと言う人も入れば、逆に受け付けないと言う人もいる。確かに自分も過去の作品に関しては臭すぎてダメだった口である。しかし、これは仕方がないことである。夫々に好みというのがあるのだから、自分には合わなかったのだろう。
いずれにせよ、ここまで独自の世界観、テーマを追い続けることができること自体、大変驚きである。
独創性の強い作品と言うのは、それだけ市場規模も狭まってしまうものである。実際、これまでの作品はいずれも公開規模が小さく、決して商業的には成功したとは言えないものばかりであった。いわゆるコアなアニメファンからは支持されていたが、広く一般に認知される所まではいかなかった。
それが今回の大ヒットである。彼の前作
「言の葉の庭」(2013日)の評でも書いたが、これは新海作品の多くを手掛けるコミックス・ウェーブ・フィルムという製作会社があって初めて可能となったプロジェクトだったのではないか‥という気がする。この製作会社は新海作品をバックアップしてきた会社である。彼らの熱意がついに実を結んだ‥と言うことが出来るのかもしれない。
また、同じ男女のすれ違いのドラマでも、今回はこれまでのような中編、短編作品ではない。長編ならではの厚みのあるドラマ性、キャラクターの”行動”がドラマが紡いでいくという構成は、これまでの作品で自分が抱いた空疎感がまったく感じられなかった。これまでは内省吐露と雰囲気だけで語る作品が多く、今一つ自分には入ってこなかったのだが、今回はキャラに感情移入しやすく作られている。いわゆる劇映画として立派に成立している所に、新海監督の成長と、広く観客に門戸を広げようという強い意思が感じられた。
映像表現、テーマ、ドラマ性の充実はこれまで以上のクオリティで、まさに新海作品の集大成のような傑作になっている。
ただ、確かに娯楽性は満点で申し分ないのだが、シナリオ上幾つか穴があるのは残念だった。深く追求しながら見てしまうと、そのあたりはどうしても気になってしまう。
まず、どうして三葉と瀧が巡り会わなければならなかったのか‥という点である。運命の恋人だからなのか?ただの偶然なのか?
三葉が選ばれしヒロインであることは、後半の祖母の口から少しだけ説明されているので納得できる。言わばこれは代々引き継がれてきた”宿命”のようなものであり、それが三葉というヒロインを確立している。
しかし、一方で瀧の方はどうして選ばれし少年だったのだろうか?見終わった後に疑問が残ってしまった。彼に三葉を引き寄せる”何か”があれば、このメロドラマは俄然説得力が増したと思うのだが、そのあたりがどうしてもピンと来なかった。
もう一つは、瀧が3年前の”事件”をどうして知らなかったのか‥という点である。彼の周囲は皆知っていたし、おそらく事件そのもののインパクトからすれば日本中が大騒ぎするくらいにはなっていただろう。それなのに瀧だけがこの事件のことを知らなかった。これも不自然に思えてしまった。ご都合主義と言われても仕方ない脚本上の穴である。
更に言えば、終盤、瀧が三葉の親友を偶然見かけるシーンがある。ここも細かい所であるが、余りにも偶然すぎる。
全体的には上手く作られていると思うのだが、こうした突っ込み所が幾つかあるのが惜しまれる。
本作もタイムパラドクス物の一種だと思うが、やはりどうしてもこの手の作品は色々とケチがついてしまうものである。もっとも、展開が軽快な上に、映像がことのほか素晴らしい出来なので、全てそれに丸め込まれて余り気にならない程度にはなっている。後から考えたら、ここはヘンだという不満は出てくるが、見ている最中はほとんど気にならなかった。新海監督の演出、作画陣が作るクオリティの高い映像が見事だったということだろう。
クライマックスの盛り上げ方も実に堂に入っている。ここは新海監督の図像センスが炸裂した名シーンであろう。”誰彼(たそがれ)”時に立つ2人の儚げなシルエットだけで、この作品のテーマが見事に表現されており脱帽である。
さて、ここまで大成功を収めてしまうと、新海監督の次回作が気になる所である。巷では早くも、ポスト宮崎駿などと言われているが、おそらく本人もかなりプレッシャーがかかっている事と思う。しかし、彼には彼にしか表現できないテーマがある。それがこれまで描いてきた男女のすれ違いを描くドラマなのか、あるいはまったく新しいジャンルになるのか。それは分からないが、周囲の声に左右されず、これまで通り独自のレールを歩んでいってほしいと願う。せっかく自分の世界観を持っているのだから、これは大切にしていってもらいたい。
ありのさんお久しぶりです今晩は。僕は昨日109シネマズグランベリーモールの9番シアターのimaxデジタルシアターで見てきました。どうしてもこの作品をimaxで見たいと思っていましたし・・・。イオンシネマ新百合ヶ丘で初めてこの作品を見た時全身に衝撃が走ったしその上ただ物ではない!という見えないオーラを感じました。でも、109シネマズグランベリーモールと商業施設グランベリーモールが今年の2月12日に改装工事のために3年間一時休業するのは辛いですね。
>にょろ~ん。さん
個人的に最近はIMAXで観たい映画が余り無くて残念です。当初はワクワクしたんですけどね。
映画館の閉鎖は辛いですよね。でも首都圏では新しく映画館も出来るみたいです。今は再来年開業予定の池袋のシネコンに注目しています。
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