バイカーたちの刹那的な青春を描いた快作。
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2007-08-25)
売り上げランキング: 86,800
「ワイルド・エンジェル」(1966米)
ジャンル青春映画
(あらすじ) 暴走族エンジェルのリーダー、ブルースは、親友のルーザーを誘ってツーリングにでかけた。ところが、その先で対抗するグループと遭遇し激しい抗争となる。その最中にルーザーは駆けつけた警官に撃たれて病院に運ばれてしまった。ブルースは仲間と共に警察の手からルーザーを救い出そうとするのだが…。
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(レビュー) バイカーたちの生き様を鮮烈に描いた青春映画。
監督・脚本がB級映画の帝王R・コーマンということで、いかにもチープな作りの作品である。しかし、キャストは今見るとかなり豪華な布陣で興味深い。
いわゆるコーマン門下から出たスターたちは何人かいるが、彼らは夫々に今でも師のことを敬愛し大切に思っている。そのあたりのことはR・コーマンのこれまでの映画創作を追ったドキュメンタリー
「コーマン帝国」(2011米)を観るとよく分かる。
そんなスターたちが実際にどういう下積みのキャリアをコーマンの下で積んだのか?その片鱗を観ることが出来るという意味で、本作は興味深い作品となっている。
主人公ブルースを演じるのはP・フォンダ。彼はこの後にアメリカン・ニューシネマの代表作「イージー・ライダー」(1969米)に出演することになるが、その原型を本作に見ることができた。オープニングでさっそうとハイウェイを走るピーターの姿は、「イージー・ライダー」にそのまま引き継がれているような気がする。ひたすらニヒルな佇まいを貫き通すダンディズム。哀愁に満ちたラストの姿が印象に残った。
そして、ルーザーを演じたB・ダーンも印象に残った。彼はその名の通り仕事を転々とする負け犬(ルーザー)で、うだつの上がらない人生から逃れるようにバイクにのめり込んでいく。しかし、運悪く警官に撃たれて重傷を負ってしまう。情けないと言えば余りにも情けない人生である。仲間たちが見守る中、自らの人生を述懐するシーンの熱演が素晴らしかった。
更には、ブルースの恋人役を演じるのは、あのF・シナトラの実娘ナンシー・シナトラである。正直、映画俳優としては今一つパッとしなかった女優で、ここでも余り印象に残らない役所だったが、演技自体は決して悪くはない。
このように本作は中々興味深いキャスティングとなっている。それを見れるだけでも本作の価値は十分にあるように思う。
また、当時はバイカー・ブームというのがあって、本作はその流れに乗って作られた作品である。元々こうしたバイカー映画は、古くから作られており、その聖典がM・ブランドが主演した「乱暴者(あばれもの)」(1953米)と言われている。権力に抗う不良のイメージを強烈に体現したブランドの存在感は圧倒的で、この作品がヒットしたからこそ、その後のバイカー映画は作られ続けた。キャストが身に着けるファッションを含め、当時の風俗を知るという意味で、この手の作品は興味深く観ることができる。
先述したように、本作は低予算で作られたB級映画である。ストーリーはシンプルで食い足りないし、妙に間延びした展開も気になり、正直な所、退屈する映画だった。
ただ、世のバイカー達のために明確なコンセプトが打ち出されており、そこにはジャンル映画に通じるような潔さが認められる。そういう意味において、観客のターゲットを絞った映画作りをモットーとしたR・コーマンの創作姿勢はここでも貫通されているような気がした。
損をしない映画作り。彼にとって最も重要なのはこの部分である。それが本作でもきちんと実践されているところに、この人は本当にブレないなぁ‥と実感される。これもまたクリエイターとしての一つの姿勢であろう。