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私の男

近親相姦的な危うい関係が辿る運命とは?終始緊迫感が持続し目が離せない。
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「私の男」(2013日)star4.gif
ジャンルロマンス
(あらすじ)
 奥尻島を襲った津波で家族を失い10歳で孤児となった少女・花は、遠縁だと言う男・淳悟に引き取られることになった。6年後、2人は雪と流氷に閉ざされた北海道紋別の田舎町でひっそりと暮らしていた。淳悟には交際していた恋人・小町がいたが、淳悟と花は他人が入る込む隙が無いくらい固い絆で結ばれていた。小町は嫉妬を募らせ、ついに別れることを決心する。そんな小町を不憫に思った父・大塩は二人を引き離そうとするのだが‥。

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(レビュー)
 天災で孤児になった少女と彼女を引き取った孤独な男。十数年に渡る二人の愛憎をドラマチックに綴った恋愛ドラマ。桜庭一樹の同名小説を映像化した作品である。

 監督は熊切和嘉。脚本は熊切の盟友・宇治田隆史が務めている。この二人は、以前紹介した「海炭市叙景」(2010日)等、よくコンビで映画を撮っている。尚、今回の物語の舞台も「海炭市叙景」と同じく寒々しい曇天が広がる北海道である。

 流氷がオープニングと中盤で登場してくるのが、これなどはいかにも北海道ならではのロケーションという気がした。特に、中盤のシーンはドラマの転換点として大きな事件が発生するので目が離せなかった。流氷という舞台がサスペンスを大いに盛り上げている。

 物語は、震災による津波で孤児となった少女・花の目線で進む。ここで描かれる惨状を見ると、どうしても東日本大地震を思い起こしてしまうが、本作は1993年に起こった北海道南西沖地震を元にしているそうである。あの時の被害も相当なものだったが、皮肉なことに東日本大震災が起こった今となっては、そちらのインパクトの方が大きすぎて、過去の震災の記憶もかすんでしまう。いずれにせよ、この花の登場シーンは何ともミステリアスに演出されていて印象に残った。

 その後、彼女は避難所で淳悟と出会う。この淳悟という男も実に謎めいた男で、どんな仕事をしているのか?家族はいるのか?どんな生い立ちを辿ってきたのか?そういった背景が一切分からない。

 更に、物語の舞台は数年後に移り、現在の花と淳悟の暮らしぶりを追うようになる。
 ここでの二人の関係も実にミステリアスで興味が尽きなかった。2人は表向きは義理の父娘のように見えるが、家庭の中では何となく”男女”の間柄のようにも見える。近親相姦的な匂いをまとう所に淫靡さが漂い、どこか危うい関係に思えてしまう。
 例えば、お互いの指を舐め合う所を、淳悟の恋人・小町に見つかるシーンがある。しかし、2人とも見つかっても動じるどころか笑みを浮かべる。一体この二人はどういう関係なんだ?小町同様、観る者は誰もがそう思うだろう。非常に禁忌的な関係に思えてくる。

 2人の関係が決定的になるのは、物語も1/3進んだ辺りだろうか‥。言ってしまえば、2人は”ある一線”を踏み出すことで、もはや元に戻れぬ関係になってしまうのだ。
 ここでの毒々しく染め上げた鮮血の色彩演出は映像的に非常にインパクトがあった。2人にとってのロマンチックな”夢想”を意味すると同時に、周囲の人々にとっての”悪夢”を意味している。禁じられた愛を、やや過剰ではあるが非常に映画的な表現方法で描写しており印象に残った。また、この鮮血は彼ら疑似父子の”血縁”も意味しているのだと思う。

 このシーンだけを取り出して見ればかつてのATG映画のようなシュールさ。あるいは故・若松孝二監督が撮り上げた青春ロマン作「ゆけゆけ二度目の処女」(1969日)のカラーパート・シーンを彷彿とさせる。このような猥雑さと芸術性が混在するような映画が、過去にはたくさん作られたが、それはロマンポルノと一般映画を股にかけた映画作家たちによる独自の創作姿勢が生み出した一つの”革命”だったように思う。今の時代、こうしう作風はほぼ無くなってしまったが、それをこのシーンから懐かしく感じ取れた。

 ともかくも、こうして花と淳悟は”ある一線”を越えたことで罪を背負う者となる。周囲の人々を不幸に陥れながら、社会から背を向けて逃避し続ける。もはやここまで来れば二人を待ち受けるのはメロドラマにありがちな悲劇だろう‥と思うのだが、しかしこの映画はそんな予想をあざ笑うかのように意外な形で締め括られる。正直、これには驚かされた。
 観る人によっては納得がいかないという意見があるかもしれない。しかし、自分は次のように解釈した。

 淳悟は花と出会ったことで、温もりに満ちた”家族”を持ちたいと願ったのだと思う。それは”妻”と言い換えても良いかもしれない。このことは彼の不幸な生い立ちから何となく想像できる。劇中では詳しくは描かれてなかったが、彼の家庭環境は非常に荒んだものだった。

 これに対して、花は淳悟に対して初めは”父親”であることを望んだのだと思う。しかし、一緒に暮らすうちに疑似家族的な愛は異性愛へと変わった。それは”夫”であることとは別の意味での異性愛である。

 このように相手に求めるものが違う以上、二人が辿るこのラストは必然だったように思う。そして、この必然の原因は何だったのかと考えると、おそらく花が淳悟にとっての”娘”から”女”になったことによる心境の変化だったのではないか‥と想像できる。逆に言えば、花にとって淳悟は”父親”から”男”になったということなる。

 大塩は花に対して「(お前たちを)神様は許さない!」と言う。
これに対して花が「私が許す!あれ(淳悟)はあたしの全部だ!」と切り返す。
この辺りのやり取りにはゾクゾクするような興奮を覚えたが、彼女はそこまでの覚悟をして淳悟と一生を共にしようと決心した。この時の彼女はまだ子供だった。まだ淳悟の”娘”だったわけである。しかし、時が経てば人は成長する。”娘”だった花は、周囲の男たちに恋をし、自分のキャリアを磨き、大人の”女”へと成長していった。その結果、彼女の心は淳悟から離れて行ってしまった。陳腐な表現になってしまうが、正に”魔性の女”そのものである。

 したがって、このラストは自分にとっては意外な結末ではあったが、非常に納得のいくものでもあった。そして、花の変貌には、変な言い方かもしれないが、彼女の成長と恐ろしさ、したたかさ、気丈さが伺え、何とも言えぬカタルシスも覚えた。

 本作は、男女の愛憎を描く恋愛ドラマであるが、同時に女性の成長と半生を描いた映画としても実によく出来ていると思う。

 熊切監督の作品は割と見ている方だが、今回の演出は淡々としたトーンを基調としながら、先述した鮮血のシーンや中盤の流氷を舞台にしたシーン等、時折猛々しい演出が併用されている。こうした過激な演出も氏の得意とするところであり、今回の作品は上手くそのバランスが取れているように思った。作品のトーンに緩急をつけながら上手く1本の作品として作り上げている。

 そして、今回の作品で特徴的だと思ったのはカットバックの多用である。オープニングを中盤に繋げてみせたり、ふいに1カットだけ時系列を前後させて挿入して見せたりしながら、少しテクニカルな構成になっている。ただ、これについては、個人的には1カットだけ切り替えてみせる演出は余り感心しなかった。いたずらにシーンを分断してしまうだけで効果的とは思えない。

 キャストでは、何と言っても花を演じた二階堂ふみの好演が素晴らしかった。10代らしいあどけなさを残した前半。年頃の女性に成長していく後半。見事な演じ分けで花の成長を体現している。また、中盤の流氷のシーンで見せた激昂の演技も凄味があった。
 淳悟を演じたのは浅野忠信。こちらはいつも通りの演技でこれと言って語るべきものはないが、ただラストで後頭部が剥げていたのは役作りのためにそうしたのか、あるいは自然とそうなったのか気になる所である。某育毛シャンプーのCMに出演していたので知っている人も多いと思うが、彼には元々薄毛という噂があった。それを敢えてここでカミングアウトしたのであれば大したものである。落ちぶれた中年男の”やさぐれ”感がよく出ていた。
[ 2016/12/10 02:34 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

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