竜巻を描いたパニック映画は色々とあるが、本作はアイディアという点で中々よく出来ている。
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント (2015-08-05)
売り上げランキング: 33,582
「イントゥ・ザ・ストーム」(2014米)
ジャンルアクション・ジャンルサスペンス
(あらすじ) 竜巻の撮影に執念を燃やすピート率いる撮影隊は、アメリカ中西部に竜巻が発生したという情報を聞きつけ現場へ急行する。メンバーの気象学者アリソンは、現在の気象状況から、かつてないほどの巨大竜巻になる可能性を示唆した。その頃、近くの高校では卒業式の準備が執り行われていた。教頭のゲイリーが見守る中、無事に式が始まるが、その途中で暴風雨に見舞われてしまう。ゲイリーは息子で生徒のドニーが行方不明になったことを知り、救出に奔走することになる。
ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) 小さな町を襲う巨大竜巻の恐怖を迫力の映像で綴ったパニック映画。
有名俳優が出ているわけでもなく、ランニングタイムも90分弱と短いのでB級感が漂うが、中々どうして。竜巻の描写はCGIを駆使しながら迫力のある映像に仕上げられており余りチープさは感じられない。大作ではないかもしれないが、娯楽映画として十分楽しめた。
また、本作はPOV形式の映画である。POVとは一人称の視点で描く、いわゆる疑似体験型のアトラクション映画などでよく使われる手法で、これまではホラー映画でもてはやされてきた。しかし、今回のようなパニック映画でこの方式を採用するのは大変珍しいのではないだろうか?
ホラー以外では、ブライアン・デ・パルマ監督がイラク戦争を一兵士の視点で描いた問題作
「リダクテッド真実の価値」(2007カナダ)や、超能力少年たちの戦いを描いたインディペンデント映画
「クロニクル」(2012米)、J・J・エイブラムスが製作した怪獣映画
「クローバーフィールド/HAKAISHA」(2008米)などが思い出される。この中で言えば、本作は「クローバーフィールド/HAKAISHA」に近いタイプの作品かもしれない。
そんなPOV形式の本作は、様々な映像で構成されているが、主となるのがピートのチームメンバーが撮影するカメラである。彼らが遭遇する竜巻を臨場感たっぷりに描いており、まさにその場にいるかのような疑似体験が味わえた。
この他には、彼らが乗る”対竜巻専用車両タイタス”の車載カメラ、ドニーが卒業式を撮るために使用するカメラ、目立ちたがり屋の2人組のユーチューバーが使うスマホのカメラ、ニュース映像や学校の監視カメラといった様々な映像を駆使しながらストーリーは展開されていく。
但し、一部でこれは誰が撮った映像?と思しき物も混ざっていたので、この辺りはスタイルに一貫性がない。突っ込みを入れたくなるようなカットが幾つか見られた。
とはいえ、そのあたりの小さな突っ込み所は見ててそれほど気にはならない。ストーリーの展開が早い上に、巨大竜巻を捉えた迫力の映像がこうした不満を一掃してしまう。
実は、自分は本作をテレビで観たのだが、正直これは映画館で観ておくべきだったな‥と後悔した。これほど臨場感たっぷりに描かれた映像だと、テレビの小さな画面サイズ、音量では圧倒的に迫力が足りない。更に言えば、4Dで体験するのもありかもしれない。いまさら言っても仕方のないことだが、今作の面白さを十分に満喫できるのは間違いなく映画館だろう。
一方、ドラマの方は非常にシンプルにまとめられている。ゲイリーと息子の父子愛、巨大竜巻をどこまでも追いかけるピートの執念の戦い、窮地に立たされたドニーとクラスメイトの女子のサバイバル、命知らずな2人組のユーチューバーのコミカルな姿。こうした群像劇が同時並行で展開される。
映像に特化した作品なので、夫々にアッサリとしたドラマであるが、必要最低限の葛藤はそつなく描かれているので最後まで面白く観ることが出来た。
尚、ピートたちが乗り込む”対竜巻専用車両タイタス”のデザインは、近未来感全開でかなり良い出来栄えで惚れこんでしまった。実際にタイタスは映画のクライマックスで大活躍を見せてくれる。
また、映画のオチも洒落ていて気に入った。まるで冗談みたいなオチだが、本作にはこれくらいのバカバカしさが丁度良い。