全編アクションの連続で見せる実話を元にした戦争映画。
ポニーキャニオン (2016-02-17)
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「ローン・サバイバー」(2013米)
ジャンル戦争・ジャンルアクション
(あらすじ) 2005年6月。アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズが、タリバン幹部アフマド・シャーの暗殺作戦を決行する。マーカスを含めた4人の兵士たちは、アフガニスタンの山岳地帯で敵基地の偵察活動を開始した。ところが、無線の状態が悪く本部との連絡が取れないまま、彼らは山羊飼いの男たちに見つかってしまう。マーカスたちは彼らを捕縛し、その扱いを巡って意見を衝突させていく。
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(レビュー) アフガニスタンで実際に起こった局地戦をハードなアクションシーンで描いた戦争映画。原作は本作の主人公マーカスの体験記ということである。
監督・脚本はP・バーグ。彼は製作にも名を連ね、今回の映画化には並々ならぬ意欲で望んでいる。
彼は以前紹介した
「バトルシップ」(2012米)のような能天気なエンタテインメント作品を撮る一方で、
「キングダム/見えざる敵」(2007米)のようなメッセージ性の高い硬派な戦争映画も撮っている。硬軟分け隔てなく作品の傾向は色々とあるが、粋の良いアクションシーンを撮らせると中々に上手い作家である。
今回の作品も、全編に渡って緊張感が持続するハードなアクション映画になっている。
物語は、偵察任務中のマーカスたちが民間人に見つかり、その処遇を巡って意見を対立させる所から俄然面白くなっていく。彼らを解放すれば敵に自分たちの存在がばれてしまい作戦は台無しになってしまう。しかし、彼らをこの場で殺害するのも居たたまれない。人命を優先させるのか?任務を優先させるのか?彼らは意見を対立させていく。このあたりの葛藤は見ていて実に面白かった。序盤からグイグイと惹きつけられた。
その後、やはり民間人の処刑はまずかろうということでマーカスたちは彼らを解放する。ところが、予想されていたこととはいえ、この判断が彼らを窮地に追い込んでしまう。タリバン兵に通報されて、彼らは険しい山岳地帯をひたすら敗走することになるのだ。
映画はマーカスたちの抗戦をひたすらハードな戦闘描写で綴っている。隊員同士の衝突といったドラマも少しだけ用意されているが、基本的にはアクションシーンを優先させた作りになっていて非常にシンプルな構成になっている。この構成が奏功し、作品のエンタテインメント性はかなり極められている。
加えて、これまで数々のアクション映画で手腕を振るってきたバーグ監督の演出も絶好調で、追い詰められるマーカスたちの絶望感も手に取るように伝わってきた。ある種、戦争追体験映画としてのリアルな臨場感も味わえた。
また、前半でマーカスたちが採った人道的選択が、後半に返礼されるドラマ的”仕掛け”も十分なカタルシスをもたらしてくれる。いわゆる戦場に芽生えた美談ということで、やや鼻に付くこともなくはないが、”訓話”的な意味合いに於いては実に感動的だった。戦争映画を観てこんなことを言うのも変だが、観終わった後には清々しい気分になった。
敢えて言えば、大勢のタリバン兵に囲まれたマーカスたちが崖を転げ落ちて逃げるシーンがあるが、ここはさすがにどうかと思った。かなりの急こう配を転がると言うよりも正しく”落ちる”といった感じで落下している。身体のあちこちを固い岩肌にぶつけているので、普通なら瀕死の重傷を負ってもおかしくはないはずである。しかし、彼らは大して重傷を負うでもなく、その後も平気で戦っている。いくら世界最強と言われる屈強なネイビーシールズでも、あれだけ勢いよく落ちたらただでは済まないと思うのだが‥。
現に、落ちた拍子に頭部を強く打ったアクスが「俺たち死んだのか?」と仲間に尋ねるが、イヤ‥本当に死んでもおかしくないだろう‥と心の中で突っ込んでしまった。
それと、マイケルの最期は抑制を利かせてくれた方が個人的にはしっくりとくる。勇気ある兵士に対するの礼賛ということでこうしているのだろうが、ほどほどにしないとかえってイヤらしく写ってしまうものである。