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BeRLiN

一人の娼婦を追った人間ドラマ。映画初主演の中谷美紀の魅力が全開。
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「BeRLiN」(1995日)星3
ジャンルロマンス・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 風俗ドキュメンタリーを制作しているクルーが、突然疾走したキョーコというホテトル嬢について取材をする。彼女と一緒に働いていた女性や彼女の常連客だったサラリーマンの証言から、一人の青年の存在が浮かび上がってくる。彼・鉄夫はキョーコの同棲相手だった。早速、撮影隊は鉄夫の元を訪ねる。しかし、彼もまたキョーコの行方を知らなかった。

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(レビュー)
 謎の失踪を遂げた娼婦キョーコと周囲の人間模様を、時制を交錯させながら実験的な手法で描いた寓話。

 映画は、キョーコの足跡を追うドキュメタリー撮影隊の映像をモノクロで、取材対象の証言に基づく回想シーンをカラーで表現している。
 ただ、撮影隊は何のために彼女を追っていたのか?その理由が今一ハッキリとしないのが見てて悶々とさせる。これがセミドキュメンタリーのようなスタイルで統一されていれば少しは本腰を入れて見てみようか‥という気になるのだが、さも記録映像ですよと言わんばかりの作為的な作りが白けるばかりだった。これならばモノクロとカラーの差別化も余り意味がない。普通にフィクションとしてドラマ仕立てにした方が面白く観れるような気がした。

 とはいえ、本作にはキョーコを演じた中谷美紀の溢れんばかりの魅力が詰まっており、そういう意味では彼女のファンにはお勧めできる作品となっている。

 今や日本を代表する魅力的な女優となった彼女が、初めて主演したのが本作である。まだデビューしたての瑞々しい姿は、娼婦という役柄とは裏腹に実に純粋で可憐だ。こんな子が不特定多数の男性に性的な奉仕をしているのか‥と男性諸氏ならばそのギャップに驚かされることだろう。
 そして、彼女の魅力は何も外見のみに留まらない。演技も延び延びとしており、まるで役を通り越してナチュラルな中谷美紀がそこにいるかのような錯覚に捉われる。
 本作は新人女優のアイドル映画として観ればかなり上手く作られているように思う。明らかに狙ったようなグラビア的な画作りもあるのでじっくりと堪能できるだろう。

 物語は、正直序盤は余り興味をそそられなかった。先述したように、現在と過去をカットバックで繋ぐ構成がドラマを散漫にし、尚且つドキュメンタリーっぽい見せ方が変に鼻についたからである。面白く観れるようになるのは中盤。本作のキーマンであるキョーコの元恋人・鉄夫が登場してからである。

 彼は古いアパートに住むフリーター青年で、ひょんなことからキョーコと出会い同棲生活を始める。しかし、ある日を境に彼女は突然姿を消してしまう。原因が何なのかは彼自身にも分からない。キョーコを取材するドキュメンタリー班と鉄夫は、少ない手掛かりを元にその原因を探っていく。

 しかし、映画を観終わっても、どうしてキョーコが失踪したのか?どこへ行ってしまったのか?という答えは判明しない。これがもう少し情報が提示されていれば、色々と想像する楽しみ方も出来るのだが、まるで蜘蛛の糸を掴むようで判然としない。したがって、見終わった後にはひたすら悶々とするしかなかった。

 ただ、唯一キョーコが出ていった理由はこうではないか?と推測できる手掛かりがある。それは映画の冒頭。彼女がベルリンの壁崩壊のニュースを見て何かに気付いたような顔をするシーンである。
 ”ベルリン”は映画のタイトルにもなっているので、この映像が大変重要な意味を持っていることは確かだろう。もしかしたら、この映像はキョーコの何かの琴線に触れたのかもしれない。例えば、自分自身も”壁”を壊してどこかへ行きたい。古い自分を終わらせて新しい自分に生まれ変わりたい‥という風に。

 同じようにベルリンの壁の崩壊をモティーフにした映画で「ウォールフラワー」(2012米)という作品がある。あそこには直接ベルリンの壁の崩壊は出てこなかったが、代わりにそれにまつわる歌としてD・ボウイの「ヒーローズ」が流れていた。つまり、ベルリンの壁の崩壊は主人公青年にとっての人生のリスタートを意味していたことになる。

 このように”壁”というものは、人生において新しい自分に生まれ変わるために乗り越えなければならない障害という意味を持っている。何かを変えたい。新しい未来を見つけたい。そう考える人の前には必ず大きな障壁が立ちはだかり、それを乗り越えることで人は成長していく。

 おそらくキョーコはベルリンの壁が壊される映像を見て、それに触発されたのだろう。男たちの性欲を満たすだけの自分自身のつまらない人生を振り返り、ここではないどこかへ、あるいは新しい自分に生まれ変わるために”壁”を壊したかったのではないだろうか。

 ラストの意味についても、かなり解釈を迷うような所がある。これはハッピーエンドを意味しているのか?”あの場所”は天国だったりするのか?大変抽象的で不思議な終わり方になっている。この地に足のつかない幕切れも映画の鑑賞感を悶々とさせる。

 本作は観客の方から能動的に解釈をしていかなければならないタイプの映画である。そういう意味では一筋縄ではいかない難物である。しかし、逆に言えば何度でも噛みしめたくなるような、そんな不思議な魅力を持った作品という言い方も出来る。

 それとデビューしたての中谷美紀の魅力。それが全て詰っているという意味でも見応えが感じられる作品となっている。ファンならば必見と言えよう。
[ 2017/04/01 03:19 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

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