伝記映画にも色々な作品があるが、これは波乱万丈に満ちていて中々面白かった。
「ポロック 2人だけのアトリエ」(2000米)
ジャンル人間ドラマ・ジャンルロマンス
(あらすじ) 1941年のニューヨーク。新進画家ジャクソン・ポロックは、弟夫婦のアパートに住みながら売れない抽象絵画を描いていた。ある日、彼の絵に惹かれた女性画家リーが訪ねてくる。アルコール依存と精神不安定症に苦しむポロックは、彼女と愛を育むことによって徐々に立ち直っていった。その後、リーの働きかけで彼の絵はニューヨークのパトロンの目に止まる。徐々に仕事が増え、二人は静かな田舎町にアトリエを構えて暮らすようになるのだが‥。
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(レビュー) 実在の天才画家ジャクソン・ポロックの半生を綴った人間ドラマ。
監督・主演は名優E・ハリス。10年の構想を経て本作の映画化を実現したそうである。その熱意は彼の演技から存分に伝わってきた。特に、晩年の豹変振りには驚かされた。ここまで体重を増やすとは‥。デ・ニーロも真っ青のカメレオン俳優振りである。
抽象絵画は正直よく分からない。おそらく、見る人夫々が自分の感性でその作品世界に浸ればそれで良いのだと思う。ポロックの作品はかなり独特なことは分かるが、俺には今ひとつピンと来るものが無かった。時代が時代だけに、当時は斬新なものとして注目されたのだろう。
ドラマについては面白く見させてもらった。天才として世間にもてはやされた男の顛末は、予想通り悲劇的なものであるが中々ドラマチックである。
彼はアルコール依存と精神不安定で長い間家族から疎まれてきた。であるがゆえに、家庭の温もりに憧れる。しかし、リーは彼に「夫」であることよりも「芸術家」であることを求めた。夫婦でありながら、相手に求めるものが仕事上のパートナーとは‥。実に不幸な話だ。芸術家が孤独であることはベートーベンしかり、ゴッホしかり。ポロックも彼等と同様で、下手に才能があったために生涯孤独の身だったのだろう。
この映画で一つだけ残念に思った点がある。
それは、晩年のリーの心中に迫る描写が底が浅かったことである。彼女自身、自分の採った選択に後悔していたことは間違いないだろう。しかし、その心中をもう少しフォローしてくれれば、この結末は更にドラマチックになっていたと思う。どうにも描写の仕方が手落ちという気がしてしまった。
余談だが、エンディングロールに流れるトム・ウェイツのテーマソングが心に染みる。彼の歌はそれ単体で聞いてもあまり感動しないのだが、映像と合わさるとこの上なく心に響いてくるから不思議だ。例えば、マンハッタを舞台にした人情ドラマ「スモーク」(1995米日)のクライマックスシーンにかかる彼の歌などは大好きである。