ゴジラとの戦いが今から楽しみ。
「キングコング:髑髏島の巨神」(2017米)
ジャンルアクション・ジャンルSF
(あらすじ) 第二次世界大戦時、米軍パイロットが未開の島に不時着した。彼はそこで巨大な生物キングコングと遭遇する。それから30年後、ベトナム戦争が終結を迎えつつある1970年代。米国政府特務機関“モナーク”は南太平洋上に未知の島、髑髏島を発見し調査隊を派遣する。リーダーを務めるのは、ジャングルでのサバイバルに精通した英国陸軍の元兵士コンラッド、ベトナムで米軍ヘリ部隊を率いていたパッカード大佐、勇敢な女性カメラマン、モナークの研究者たちといった面々である。早速、髑髏島に乗り込んだ彼らは、そこでキングコングと遭遇する。その後も様々なモンスターの襲撃を受けながら決死のサバイバルを始める。
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(レビュー) 「GODZILLA ゴジラ」(2014米)を製作したレジェンダリー・ピクチャーズが、当代きっての巨大モンスター「キングコング」をリブートした作品。尚、本作の後にはゴジラとの戦いを描く続編の製作が決定している。
実の所、またキングコング?という今更感があったのだが、ゴジラとのコラボがあるというので何としてもチェックしなければ…という思いで鑑賞した。正直な所、ドラマは今一つ乗り切れなかった。ただ、迫力あるアクションシーンは十分堪能できたので、少なくとも映画館で観れたことは良かったと思う。
今回のキングコングは先に”対ゴジラ”ありきで作られた作品だと思う。だから物語は過去の「キングコング」から大幅に変えられている。時代設定はベトナム戦争が終結する直前。登場人物もこれまでのリメイク作とはまったく異なった布陣で、過去のコングの見所の一つである人間の美女とのロマンスも排されている。全ては後に繋がる対ゴジラ戦に向けた話作りという感じがした。
このタイトルは、古くは1933年に製作された「キング・コング」(1933米)から始まっている。もはや特撮映画の古典として今でも語り継がれる名作だが、このタイトルは以後も様々な形でリメイクされてきた。1976年には大作志向のプロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスによって製作された「キングコング」(1976米)。そして、2005年には「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズを大成功させたP・ジャクソン監督が万感の思いを込めて撮り上げた「キング・コング」(2005米)が作られた。こうしてキングコングという稀代のモンスターは多くの人々によって愛されてきた”キャラクター”である。しかし、今回の作品は過去の設定や物語を刷新し、新たなキングコング像が作り上げられている。まず、そこはかなり挑戦的だと思った。
ただ、こうした新機軸を見せてくれたのは良いのだが、実際に作品自体の出来はというとかなり問題がある。第一、ドラマがシンプルな割にかなり回りくどい。具体的には、島に降りて以降の展開。ここでヘリ部隊はコンラッドのチーム、パッカードのチーム、チャップマンのチームの3つに分かれるのだが、これがドラマの求心力を失速させてしまっている。少なくともこの中の一つ、チャップマンのチームは明らかにストーリー上、不要である。
どうして今回は人間たちのストーリーを分けて展開したのか?その狙いは何となく想像できる。コンラッド率いるチームとパッカード率いるチームに分けることで、共和派と強硬派というイデオロギーの違いを表現したかったのだろう。怪獣退治の映画にこうした人間側の葛藤を盛り込むことは決して珍しくはない。東宝版のゴジラ・シリーズでもやられてきたことであるし、もっと言えば過去の「キングコング」でもそうした人間同士の衝突は描かれてきた。昔から存在する葛藤なのである。それを今回は明確に区分するために、敢えて二手に分けたのだろう。
それは理解できるのだが、しかしそうであるなら本作はこの二つのルートをもっと早めに合流させて、コンラッドとパッカードの対立をドラマの中で上手く熟成させるべきだったのではないだろうか?2つのチームが合流するのは後半に入ってからである。それまでの間、ドラマは分散してしまうので、どうしても見てて集中力が切れてしまう。
後半に入って来るといよいよ髑髏島からの脱出劇となる。しかし、ここからもストーリーの足を引っ張るキャラが登場してくる。それが先述した第3のルートを行くチャップマンである。彼がいることで、更に話はややこしいことになってしまう。
本作はどこからどう見てもアトラクション志向の強い娯楽大作である。こういう映画はもっとシンプルな展開でスッキリと見せた方がいいと思う。
映像は大変見応えがあった。コングの巨大感や迫力は十分に味わえたし、様々なモンスターが登場してくるので観てて飽きなかった。クライマックスなどは良い意味で怪獣同士の”プロレス”を見せてくれているので痛快である。
過去作のオマージュが幾つか見られたのも良かった。例えば、コングが鎖に縛られる所などは明らかに過去作のオマージュであるし、美女とのロマンスということで言えば少しだが女性カメラマンと心が通い合うシーンがあり、そこは観てて心温まるものがあった。リブートとは言っても、やはり長年愛されてきたキャラクターである。このあたりは過去作を観ている人へのサービスだろう。
また、ベトナム戦争という時代設定から「地獄の黙示録」(1979米)へのオマージュも感じられた。前半のヘリで島に乗り込むシーンなどは正にそうであるし、船でジャングルの中をサバイバルする終盤の展開にもそれを感じた。面白いことに、キングコングをカーツ大佐と見立てると、案外この2作品には似ている点が多い。
キャストでは、パッカードを演じたサミュエル・L・ジャクソンが完全に場をかっさらうアクの強い演技を披露しており相変わらず強烈な個性を発揮していた。自分の部下を殺された恨みを晴らすべくコングに勇猛果敢に立ち向かう姿は彼にしかできない演技だろう。そして、彼の十八番のセリフ「マザー・ファッカー!」はいつ出てくるのか?そこも見所である。
尚、エンドクレジットの後にオマケがついているので最後まで席を立たずに見るべし!