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メッセージ

知的好奇心が駆り立てられる異色のSF作品。
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「メッセージ」(2016米)star4.gif
ジャンルSF・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 ある日、宇宙から飛来した巨大な楕円形の飛行体が地球の12ヵ所に現れる。世界中に動揺と不安が広がる中、言語学者ルイーズのもとに、アメリカ軍のウェバー大佐が調査協力の要請に訪れる。同じく軍の依頼を受けた物理学者イアンと共に彼女は飛行体の内部へと足を踏み入れていくのだが…。

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(レビュー)
 女性言語学者が、突如地球にやって来た知的生命体とコミュニケーションを取りながら自らの人生と対峙していくSFサスペンス作品。
 原作はテッド・チャンのベストセラー短編小説「あなたの人生の物語」(未読)。それをD・ヴィルヌーヴが監督した作品である。

 ヴィルヌーヴと言えば、昨今高い評価を受けている気鋭の作家で、これまでにも「Polytechnique」(2009カナダ)「灼熱の魂」(2010カナダ仏)「複製された男」(2013カナダスペイン)と数々の問題作、傑作を世に送り出してきた監督である。
 そんなヴィルヌーヴは実は昔からSF映画にも興味があったらしい。これまでのフィルモグラフィーを見ると意外にも思えるかもしれないが、彼は今回の「メッセーゼ」を完成させた後に、SF映画の金字塔「ブレードランナー」(1982米)の続編「ブレードランナー2049」(2017米)を撮り、更にその後には「デューン/砂の惑星」(1984米)のリメイクにも着手するそうである。いわゆるSF映画史に語り継がれる2作品を、自信の手で再構成するわけだから”SF好き”と公言するのもあながち嘘ではないようである。
 ちなみに、彼がSF好きになったきっかけは「2001年宇宙の旅」(1968米英)だとか‥。そう考えると本作の雰囲気はどことなく似ているような気がする。ある種哲学的な含みを持ったSF映画となっている。

 原作は未読なのだが、SFファンからは以前からかなり高い評価を受けていた短編である。難解な専門用語が出てくるので、少々取っつきにくいらしい。
 しかし、今回の映画を観る限り、決して難解という印象は持たなかった。果たして、どこまで脚色されているのか分からないが、エンタテインメントとして上手く噛み砕いて料理している気がした。

 脚本家のフィルモグラフィーを見ると、これまではリメイク版「エルム街の悪夢」(2010米)や、傑作SFホラー「遊星からの物体X」(1982米)の前日談を描いた「遊星からの物体X ファーストコンタクト」(2011米)といったホラー作品を主に手掛けてきたライターである。どちらも未見なので何とも言えないが、これらの作品はオリジナル版ありきの作品であり、本当の意味での力量を量るには少々不向きな作品である。
 本作はアカデミー賞の脚色賞他、数々の映画賞でノミネートされた。それがこのシナリオライターの実力によるものなのか。それとも優れた原作ありきで評価されているのかは分からない。しかし、少なくとも今作の緊密に組み立てられた構成、クライマックスにかけての盛り上げ方などを見ると、各方面から絶賛されているのも分かるような気がした。

 もっとも、クライマックスは下手な監督が撮れば、いたずらに戦意高揚を煽るだけの陳腐なSFアクション作品になりかねなかっただろう。そこを派手なアクションを抜きにして描いたヴィルヌーヴ監督の手腕は見事であり、間違いなく彼の優れた演出力があるからこそ作品としての完成度の高さは維持されたように思う。どこか格調高さを備えたSF映画となっている。

 物語は、ルイーズの娘が生まれてから死ぬまでのストーリーで始まる。これは後々の展開を見れば、実に巧みに仕組まれた構成だと分かる。とはいえ、こうした構成術は特段目新しい物ではなく以前にも観たことがあって、例えばかつてのG・リッチー監督などはこの構成を多用していた。時制の妙ということで言えば、タランティーノも好んで用いることがある。
 こういう構成はわざとらしく感じてしまうと興醒めしてしまうし、逆に上手く分からなように仕組まれているとハマってしまうものである。今回は場合は後者で、自分も正にまんまと「してやられた!」という感じだった。

 また、物語の進行は全編ルイーズの視点で設定されており非常にミニマムに作られている。これも小品ならではの良さが上手く出ていると思った。先に述べたように、下手な監督が演出すれば、ひたすら大仰な音楽とアクションに乗せて強引に盛り上げるだろうが、今作は静かにゆっくりとエイリアンとのコンタクトを盛り上げている。
 ルイーズの知らない所で何が起こっているのか、政治や軍はどう動いているのかといったマクロ的な視点が一切介入しないのでストーリーが非常にスマートで、且つ息詰まるような臨場感も生まれている。
 そして、ルイーズの視点に絞ったことで、本作はSF映画であると同時に彼女の内面を描いた人間ドラマ的な趣も喚起される。

 このように本作の脚本は非常によく出来ていると思う。派手さには欠けるかもしれないが、地道にゆっくりと観客の心の中にルイーズの葛藤、切迫していく現場の状況といったものが入り込んでくるように巧みに作られている。

 さて、映画は後半から、ルイーズとエイリアンのコンタクトを描きながらいよいよ問題の核心に迫っていくようになる。どうして彼らが地球にやって来たのか?それをルイーズたちが探るサスペンスとなっている。

 しかし実の所、映画を観終わってもその理由はハッキリと分からない。そもそも彼らに関しては色々と謎が多く、どこから来てどんな生態なのかも皆目見当が付かない。
 はっきり言うと、今作は全ての謎に回答を求めたがる人にとっては退屈する映画と思う。
 逆に、残された謎を色々と想像することを楽しめれば非常に面白い映画だと思う。これもSF映画を観る上での一つの”ロマン”と言えなくはないだろうか。

 尚、自分の解釈では、彼らは人類を救いにやって来た”使者”という風に捉えた。敢えて12の地域にバラバラに降り立ったこと。そして人類の知恵を試すかのように彼らの”言語”を突き付けてきた所に、”世界の和”を教えんとする彼らの意志が伺える。彼らの一連の行動は人類の未来を案じた彼らなりの”やり方”だったのではないだろうか。

 また、いわゆるファーストコンタクト物の映画ということで言えば、自分はS・スピルバーグが撮った「未知との遭遇」(1977米)を連想した。あれも宇宙人からメッセージを受け取った男が数奇な運命に呑み込まれていくSF映画だが、本作のルイーズも然り。エイリアンからメッセージを受け取ったことによって、彼女自身の人生は変わってしまう。言うなれば、本作は21世紀版「未知との遭遇」と言って差し支えない作品だと思う。

 ただ、エイリアンがルイーズに託したメッセージは極めて残酷なものであり、そこは「未知との遭遇」と大きく異なる部分である。ルイーズはそのメッセージを託されたことで人類を救ったヒーローになったかもしれない。しかし、それと同時に彼女は決して抗うことができない大きな代償も背負ってしまった。ネタバレを避けるために書かないが、このことを考えると一抹の悲しさが込み上げてきてしまう。

 本作は撮影の美しさも必見である。特に、広大な草原にそびえたつ飛行体のシュールさ、美しさは印象深い。監督が日本公開に向けたビデオメッセージで「あの物体は日本の菓子『ばかうけ』からインスパイアされたんだよ」という冗談を言っていたが、そうした視覚的に飛び込んでくる強烈なイマジネーションは実はSF映画の場合は大変重要である。いわゆる”オブジェ”というヤツで、「2001年宇宙の旅」で言えば”モノリス”がそれに当たる。映画に対する好奇心を駆り立てたこのインパクトは見事なやり方だった。

 キャストでは、ルイーズを演じたエイミー・アダムスの好演を評価したい。娘を失う母の苦悩。未知なる知的生命体とのコンタクトの中に科学者としての生きがいを見出していく凛とした佇まいが印象的だった。
[ 2017/05/26 01:03 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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