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宇宙からの脱出

淡々としたドキュメンタリー・タッチが作品の切れ味を研ぎすまし、中々の好編に仕上がっている。
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「宇宙からの脱出」(1969米)星3
ジャンルSF・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 有人ロケット・アイアンマンは、3人の宇宙飛行士ジム、バズ、ストーンを乗せて宇宙ステーションの作業のために打ち上げられた。作業は順調に進むが、思った以上に疲労が蓄積したために早期に帰還することを命じられる。ところが、エンジンにトラブルが発生し彼らは地球に戻ってこれなくなってしまった。管制室の責任者キース博士は救出の計画を決行するが…。

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(レビュー)
 宇宙飛行士の救出を緊張感あふれるタッチで描いたSF映画。同名原作の映画化である。

 余計な音楽や派手な人間模様を一切排したドキュメンタリー・タッチが功を奏し、2時間を超えるランタイムながらダレルことなく一気に観れてしまった。救出に向かうタイムリミット演出、救助に向かうロケットの打ち上げに襲いかかるハリケーンの脅威といったトラブルがサスペンスを上手く盛り上げている。

 尚、本作を見ると俺などはどうしてもR・ハワードが監督した「アポロ13」(1995米)を思い出してしまう。あれは実話を元にした映画だったが、こちらはあくまでフィクションである。仮にこういう事故が起こったらどうなるのか?という仮定に基づいて作られたシュミレーション・ドラマである。
 とは言っても、映画が公開された翌年に、そのアポロ13号の事故は起凝っている。奇しくも本作はそれを予見した映画…ということになる。

 物語は非常にシンプルである。余りにもソリッドなシナリオは、逆に宇宙飛行士たちの帰りを待つ妻たちのドラマを空疎にしてしまった感があるが、そこはドラマを語る上では不要と判断したのだろう。作り手側は実に割り切っているという感じがした。

 白眉は、その妻たちとの会話シーンである。
 3人が乗った宇宙船の空気がどんどん少なくなり、これが最後の別れになるかもしれないという中で、彼らは夫々の妻と通信する。三者三様、宇宙飛行士たちは個性的で相手に対する語り方が全く異なる所が面白い。
 これまでの感謝と愛を囁く者。悲しみが込み上げて思わず口論になってしまう者。様々な夫婦の形が見えてくる。今作は全編ドキュメンタリータッチな演出が浸透した作品であるが、ここだけは僅かにペーソスが感じられ、観てて目が潤んでしまった。

 特撮シーンも、製作された時代を考えれば中々頑張っている。確かに現代のようなCG全盛の映像に見慣れてしまうと稚拙に映るが、これでも当時は相当凄い映像だったのだろう。今作はこの年のアカデミー賞で特殊視覚効果賞を受賞している。
 また、リアリティという点で言えば、ロケットの打ち上げ台を実際のロケで撮影できたというのも大きいだろう。

 一方、演出もきめ細やかに施されていて、宇宙飛行士たちの危機感、孤独、切迫感も上手く表現されていると思った。本作は宇宙船と管制室のやり取りが大半を占めるが、この限られたシチュエーションがキャラクターの心理を濃密に見せている。

 監督は男臭いエンタテインメント作品を撮らせれば天下一品のJ・スタージェス。「荒野の七人」(1960米)や「大脱走」(1963米)、「鷲は舞い降りた」(1976英米)といったイキの良いアクション映画を得意とする監督である。そんな彼がこうしたSFを撮るというのは意外な感じがしたが、しかし元々彼は職人気質な監督でもあった。SFというジャンルに挑戦したことには何の不思議もない。

 それと、このストイックな作風はもちろんスタージェスの手腕以外の何物でもないのだが、一方で脚本家の力もかなり寄与しているのではないかと想像する。
 というのも、今作の脚本メイヨ・サイモンは、それほど多く映画の仕事に携わっているわけではないが、以前紹介した「フェイズⅣ 戦慄!昆虫パニック」(1973米)でも脚本を担当していた人物である。両作品に共通するのは、共にドキュメンタリータッチな作風という点だ。おそらくだが本作のストイックさを決定づけているのは、スタージェスではなくメイヨ・サイモンの作家性なのではないかと思う。

 音楽は名匠E・バーンスタイン。先述したように本作には、ほとんど目立ったBGMは流れない。ただ、時々宇宙空間をバックにアンビエントな音楽が静かに流れるのみである。これが中々緊張感を生んでいて効果的だった。
 そして、面白いことに彼はスタージェスとは「荒野の七人」、「大脱走」でもコンビを組んでいる。この2作品のテーマソングは余りにも有名なので聴いたことがある人も多いと思うが、今回はそれらとは完全に真逆の静かな抑制された音楽で統一されている。同じコンビで作られた音楽がこうも違うのかと驚かされる。

 キャストは、救出作戦の陣頭指揮を執るキース博士役をグレゴリー・ペッグ、宇宙飛行士役をジーン・ハックマン、リチャート・クレンナ等が演じている。夫々に熱演していると思った。
 特に、ハックマンが演じるバズは、少々短気なトラブルメーカー的存在であり、ドラマを要所で盛り上げていて印象に残った。
 一方のクレンナ演じるジムは3人の中ではリーダー格であり、時折見せるペーソス溢れる演技が忘れがたい。
[ 2017/05/31 00:56 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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