fc2ブログ










エリート・スクワッド

麻薬犯罪組織と特殊部隊の壮絶な戦いを描いたアクションドラマ。

「エリート・スクワッド」(2007ブラジル)star4.gif
ジャンルアクション・ジャンル人間ドラマ・ジャンル社会派
(あらすじ)
 リオにローマ法王がやってくることになり、軍警察の特殊部隊BOPEの隊長ナシメントは、法王訪問予定地トゥラーノの麻薬組織を一掃するよう命令される。妻が妊娠中だった彼はこの任務を最後に退任しようと考えていた。そして自分の後継者選びを始める。彼の眼鏡にかなったのは、厳しい選抜試験を乗り越えた新人警官のネトとマチアスだった。しかし、2人とも夫々に過酷な現実の壁にぶつかってしまう。

ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ

(レビュー)
 特殊部隊と麻薬組織の戦いを過激なアクションシーンを交えて描いたアクションドラマ。

 鑑賞は前後してしまったが、本作は「エリート・スクワッド 特殊部隊BOPE」(2010ブラジル)の前作に当たる作品である。先に続編を見ていたので今回はその前日談を確認する…という意味で鑑賞した。尚、キャストとスタッフは一緒なのですんなりと作品世界に入ることが出来た。基本的なテイストはまったく一緒である。生々しい緊張感で描かれるアクションシーン、ドラマチックな人間ドラマが今回も面白い。

 主人公は今回もBOPEを率いるナシメントである。しかし、この前日談は彼以外に二人の若き警官が登場し、ドラマの視座はそこにも重点が置かれている。

 1人目は黒人青年マチアス。彼は軍警察に籍を置きながら大学にも通うインテリである。学内では素性を内緒にしており、いたって平穏なキャンパスライフを満喫している。しかし、NPO活動をしているガールフレンドと恋に落ちたことでその日常は崩れて行く。実はNPO団体は麻薬密売の隠れ蓑になっていて、正義感の強いマチアスはそれを取り締まらなければならなくなるのだ。恋人の愛を失いたくはない。しかし、警官としての職務は放棄できない。映画後半はその葛藤に迫っていく。

 もう一人は白人青年ネトである。彼は警察車両の修理部門に配属されるが、そこで日常的に行われる賄賂を目撃してしまう。彼もマチアス同様、大変正義感の強い青年でそれを止めようと立ち上がる。ところが、賄賂は組織ぐるみで行われており彼一人の力ではどうしようもできない。このあたりの警察内部の腐敗は次作でも描かれていたが、ネトのエピソードにはその原型を見ることが出来た。

 一方、ナシメントのドラマもかなり充実していて、こちらも見応えがあった。妻の妊娠で彼は危険と隣り合わせな今の仕事を引退しようと考える。マチアスとネトという有望な新人警官も入ってきて、これで安心して身を引くことが出来る‥そう思った。だが、現実はそう甘くはなかった。麻薬組織との戦いは益々泥沼化し、結局彼は仕事を捨てることが出来ず、過酷な戦いに身を投じていくようになる。

 以上、本作はこの3つのドラマが並行してい描かれる。普通に考えれば、複数のドラマが乱立することでストーリーが散漫になると思うだろう。しかし、3つのエピソードはスラム街の”闇”を赤裸々に照射する点で共通しており、作品のテーマ。つまり、腐敗した社会の<現実>をより一層克明に記すこととなった。社会派的なメッセージが十分伝わってきて、かなり骨のある作品となっている。見応えは十分である。

 ラストは意外にあっけない終わり方になっている。しかし、この後に続編が製作されたことを考えると、なるほど‥とも思った。次作の冒頭は刑務所の暴動を鎮圧するシーンから始まるが、そこにそのまま繋がるような結末になっている。

 また、このラストは余りにもあっけないが故に、どこか虚無的な印象を観る者に植え付ける。マチアスとネトという若者の運命が理想と現実のギャップに翻弄されながらズタズタにされてしまう残酷さ‥と言えばいいだろうか。麻薬組織に勝利したことによる達成感とは裏腹に奇妙な喪失感も感じられ、実に居たたまれない気持ちになった。

 そして、このビターな結末にこそ、監督、脚本のジョゼ・パリージャが標榜する《正義の辛さ》が訴えかけられているような気がする。彼は非常に現実主義的な作家のように思う。正義を完遂することが如何に難しいことか。そのメッセージがこのラストから伺える。

 パリージャ監督の演出は非常にテンポが良く要所で卓越した手腕を発揮している。氏らしいドキュメンタリータッチが上手くシーンに緊迫感を生み、終始画面に引き込まれた。
 また、本作には幼い少年に対する拷問等、過激な暴力シーンが幾つか登場してくる。しかし、これもパリージャ監督の飽くなきリアリティの追及なのだろう。

 過激と言えば、BOPEに志願する青年達の試験シーンもかなり強烈で、こう言っては何だが観てて笑ってしまうほどだった。初日からいきなり現役の隊員たちから暴行されて度胸を試されたり、手りゅう弾を持たされて授業を受けさせられたり、地面に落ちた腐った残飯を食わされたり等々。ほとんど人権無視の常軌を逸した訓練が延々と続く。

 確かにBOPEの隊員は皆、優秀である。これほど厳しい試験を乗り越えたのだからそれは当然だろう。その説得力が感じられた。
 しかし、翻って考えてみると、そんなエリート揃いのBOPEの中にも賄賂に手を染めるような人間が出てきてしまうのだから、人間とはほとほと性悪なる存在であると痛感させられる。

 痛快なアクション映画とは一線を画す非常にシビアな作品である。
[ 2017/06/30 00:41 ] ジャンルアクション | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/1594-7175f341