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デリンジャー

実在したアウトローを描いたアクションドラマ。

「デリンジャー」(1973米)star4.gif
ジャンルアクション
(あらすじ)
 1933年、デリンジャー率いる強盗団は方々の銀行を襲撃し、その名は全米中に轟いていた。FBI捜査官パービスは、デリンジャー逮捕に執念を燃やす。そして、ついに彼はデリンジャーの逮捕に成功する。ところが、投獄されたデリンジャーは早々に脱獄してしまう。彼は新たな仲間を従えて再び銀行強盗を繰り返すようになる。

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(レビュー)
 実在した強盗犯をモデルにした犯罪アクション映画。

 この作品はJ・ミリアス監督のデビュー作である。ミリアスと言えばガンマニアとして有名で全米ライフル協会の重役も務める超保守派である。一般的には、かなりゴリゴリなタカ派と言われている。

 彼は監督としてより脚本家として活動が有名で、これまで手掛けてきた作品はC・イーストウッド主演の「ダーティーハリー」(1971米)(ノンクレジット)、S・ポラックの「大いなる勇者」(1972米)、F・フォード・コッポラの「地獄の黙示録」(1979米)、S・スピルバーグの「1941」(1979米)等がある。並べてみれば分かるが男臭い活劇を得意としている作家である。
 まぁ、この中では「1941」だけはコメディで他に比べるとちょっと異色である。ただ、この映画はかなりタカ派的なテイストが入っていて、そこにミリアスらしいカラーが確認できる。コメディ・テイストなのは、おそらく一緒に脚本を担当したR・ゼメキスのカラーだろう。

 本作のデリンジャーも、事実はどうか知らないが、かなりアグレッシブなキャラクターとして造形されている。更に、彼を追いかけるパービス捜査官も実にタフな男で、双方ともに決して相手に弱音を見せない所が実に硬派である。

 尚、デリンジャーを演じるのはW・オーツ。パービスを演じるのはB・ジョンソン。2人ともS・ペキンパー作品の常連俳優であり、共演自体は結構多い。これまで幾多の作品で二人の姿を観てきたので、今回は一体どういうふうに対峙するのか?そこに注目して観た。

 ただ、残念ながら本作で二人が顔を合すのはたったの2度である。しかし、その2度とも大変見応えがあり、自分としてはかなり満足できるものだった。

 一度目は、2人がレストランで遭遇するシーンである。離れた席で互いにディナーを楽しむという、随分と間の抜けたシチュエーションだが、しかしここは中々痺れるものがあった。激しい追跡劇を繰り広げてきた二人がアイコンタクトを交わして、この時ばかりは家族や友人と食事を楽しむのだ。大人の”余裕”と言えばいいだろうか‥。
「せっかくのディナーだ、今日くらいは休戦にしようぜ。」
「いいだろう、今日は見逃してやるが次に会う時は絶対に逃がさないぞ。」
まるでそんなセリフが、このアイコンタクトから聞こえてきそうだった。

 二度目の対峙はラストである。ここは長年にわたって蓄積されてきた2人の愛憎関係が一気に崩壊する瞬間であり、得も言われぬカタルシスを覚えた。極めてドライな演出に徹しているので、呆気ない結末に見えるかもしれないが、その呆気なさがかえって強烈な印象を残す。終焉の美学と言えばいいだろうか。当時のアメリカン・ニュー・シネマらしい哀愁が感じられた。

 また、哀愁ということで言えば、その手前。デリンジャーの仲間フロイドが老夫婦の家で食事を振舞われるシーンも味わい深くて良かった。寂しさと優しさが入り混じった”最後の晩餐”といった感じで哀愁がある。

 ミリアスのシナリオはやや日和見な所はあるが、終始ドキュメタリータッチで軽快に突っ走っていくあたりに上手さを感じた。娯楽に徹した作劇は正に氏の面目躍如である。キャラクターの内面も過不足なく描けているので十分に感情移入も出来る。

 また、デリンジャー追跡劇の傍らで語られる実在の犯罪者たちのエピソードも中々興味深く見れた。
 マシンガン・ケリーの「Gメン」というセリフには「なるほどそうだったのか」というトリビアがある。更に、「俺たちに明日はない」(1967米)で有名なボニー&クライドも新聞記事の中で少しだけで触れられている。二人を指してデリンジャーが青二才呼ばわりするのが可笑しかった。

 アクションシーンも見逃せない。スマートさには欠けるかもしれないが、この泥臭く荒々しい所がいかにも70年代風で良い。今見てもかなりテンションの高い銃撃戦で興奮させられた。

 キャストは先述したW・オーツ、B・ジョンソン以外に、若きR・ドレイファスも登場している。まだ血気盛んなチンピラといった風体で、こういう役を演じるのは中々珍しい。その顛末も含めて見事な存在感を発揮していた。

 尚、このデリンジャーの物語は1990年にテレビムービーとして、また2009年にJ・デップ主演で「パブリック・エネミーズ」(2009米)というタイトルでリメイクされた。機会があればそちらも観てみたい。
[ 2017/07/05 00:41 ] ジャンルアクション | TB(0) | CM(0)

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