映画ありのまま

こんにちはorはじめまして、ありのと申します。 ここは見た映画について気ままにレビューを垂れ流すブログです。

ありがとう、トニ・エルドマン

2017.08.04(00:59)
ちょっと長すぎる気もするがクライマックスが白眉。
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「ありがとう、トニ・エルドマン」(2016独オーストリア)star4.gif
ジャンル人間ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ)
 ドイツに暮らす悪戯好きで人の良い初老の男ヴィンフリートは、ルーマニアでコンサルタント会社に勤める娘イネスのもとをサプライズ訪問する。大きな仕事を任され忙しく働くイネスの姿を見て不安になったヴィンフリートは、一旦帰国するが、心配になり再び彼女の前に現れる。変なカツラを被って“トニ・エルドマン”という別人を名乗り、イネスが行く先々でバカバカしい悪ふざけを繰り返していく。

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(レビュー)
 仕事一筋のキャリアウーマンの娘と悪戯好きな父親の愛憎をユーモアを交えて描いたヒューマン・コメディ。

 随所でクスクスと笑わせながら、最後には人生にとって大切なものは何なのかということ教えてくれる良質な作品である。

 長時間労働でストレスが溜まり自殺をしてしまう、いわゆる過労死のニュースが昨今珍しくは無くなったが、巷で言われるこうしたブラック企業で働いているような人にはぜひ見てもらいたい。本作のイネスが他人事のように見れないのではないだろうか?

 イネスは正に絵に描いたようなキャリアウーマンである。コンサルタント会社で人員削減の仕事を任されている。リストラというのは、する方もされる方も決して気持ちの良い物ではない。
 このあたりはG・クルーニー主演の「マイレージ、マイライフ」(2009米)を観るとよく分かる。この映画のクルーニーはリストラマンとして各地を渡り歩く孤独な男だった。そんな彼が逆にリストラの危機にあう‥という所が皮肉めいていて非常に面白く観れる作品だった。

 このようにイネスは言わば”汚れ仕事”を一身に引き受けながら、昇進を目指して日々孤軍奮闘している女性である。そんな彼女の姿を見て、父ヴィンフリートは居たたまれない気持ちになってしまう。
 ある時、イネスに対して「お前は人間か?」とキツイ言葉をかける。それが彼の正直な感想なのだろう。仕事と割り切って”私”よりも”公”を、”情”よりも”功”を優先させるイネスが、まるで血の通っていない会社の歯車のようにしか見えなかったのだと思う。

 元々、この父娘の関係は決して良好ではない。過去にどんな経緯があって今のような状態になったのかは映画を観ていても分からないが(それを示唆するヒントは出てくる)、少なくとも長年疎遠でろくに交友もしてこなかったのだろう。二人のやり取りは常にどこかぎこちない。

 しかし、ヴィンフリートにとってイネスは、やはり可愛い娘である。仕事一辺倒の生活で押しつぶされそうになっている彼女にアレコレ世話を焼くようになる。

 本作の肝は何と言っても、このヴィンフリートという特異すぎるキャラである。彼は普段からイタズラをしたり人を楽しませたりするのが大好きで、何かやらかすと「またか‥」と周囲に呆れ果てられる。リアルにいたら非常に迷惑な老人だが、フィクションの中で見る分には面白い。

 彼は、心労極まって落ち込むイネスをどうにか勇気づけようとして、あるアイディアを思いつく。かつらと入れ歯をしてドイツ大使館の”トニ・エルドマン”という架空の人物に成りすまして、彼女の前に現れて突拍子もないことをやって笑わせようとするのだ。当然、仕事やプライベートの邪魔をされてイネスは憤慨する。しかし、それも徐々に打ち解けてきて、最終的には彼女に自分の人生を見つめ直させるヒントを与えていく。人生にとって大切なのは仕事じゃない。人生を有意義にするのはユーモアだよ‥ということを”態度”で示していくのだ。

 クライマックスが良い。仕事のしがらみから解放されたイネスのきっぷの良い”行動”が痛快である。明らかに常軌を逸したこの行動には、周囲はもちろんこの映画を観ている観客も度肝を抜かされるだろう。イネスが古い自分の”殻”を破った瞬間‥そう思えた。

 また、その手前。二人がパーティーで知り合った夫人の家に慰問しに行くシーンも良い。ヴィンフリートのピアノの伴奏でイネスがホイットニー・ヒューストンの「GLEATEST LOVE OF ALL 」を熱唱するのだが、ここは見てて胸が熱くなった。歌詞の意味を探っていくと、この歌が父の娘に対するメッセージのようにも聞こえてくる。そして、この歌詞はイネスに、今の自分の生き方に疑問を植え付けたに違いない。

 ラストは一応ハッピーエンドとして幕を閉じる。しかし、これだけで問題が解決したわけではなく、その後のイネスの人生はどうなっていくのかは分からないままである。最後にイネスはどこか前を強く見据えるような眼差しをしていた。これからも彼女は生きいくだろう。父緒が教えてくれたユーモアを胸に‥。そんな彼女の意気込みが感じられた。安易にオプティミズムに堕さなかった所が好感を持てる。

 また、本作はルーマニアを舞台としたドラマである。これについては色々と複雑な社会的事情も読み取れた。
 かつてルーマニアは石油産出国として経済発展をしてきたが、昨今それが頭打ちになりどんどん景気が悪くなっているという。イネスの顧客である油田会社は不況の煽りを受けて人員削減を余儀なくされている。これはこうした社会状況を反映させたものだろう。

 更に、本作ではEUにおけるルーマニアの経済状況についても触れられている。長年独裁政権が続いていたルーマニアがEUに加盟したのはかなり遅く2007年になってからのことである。ドイツやフランスなどに比べれば後進国であり、立場も相当弱い。昨今の不法移民問題からも分かるが、EU内部における経済格差は開く一方である。そうした国際情勢などを踏まえて観ると、本作は更に興味深く鑑賞できるだろう。

 難は上映時間が長いことだろうか。2時間40分強あるのだが、さすがにこのストーリーにこの時間はかけ過ぎという気がしなくもない。一番の要因は演出が丁寧過ぎることである。
 例えば、エレベーターを待つシーンはもっと短縮しても良い。あるいは、パーティーシーンにおける乱痴気騒ぎも冗漫だ。終盤のぬいぐるみの頭を取ってもらうシーンも不要だろう。

 それと、これは構成的に不要と思ったのだが、イネスと同僚の関係は別にラブシーンを描かずとも十分に伝わるので要らなかったのではないだろうか?このシーン自体かなり下世話すぎるのも問題だ。

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