疑似家族のロードムービー。

「なんちゃって家族」(2013米)
ジャンルコメディ・ジャンルサスペンス
(あらすじ) マリファナの売人デヴィッドは、ある日、不良に絡まれていた家出少女ケイシーに遭遇する。その不良にマリファナと売上金を奪われてしまったデヴィッドは、穴埋めとしてメキシコからブツを運ぶ仕事を請け負わされる。そこで彼は、一人で国境を越えるのは怪しまれるからと、家族旅行を装うことにした。メンバーはケイシー、同じアパートに住むストリッパーのローズ、冴えない童貞少年ケニーである。彼らを引き連れてデヴィッドは家族旅行の振りをしてメキシコへと向かうのだが…。
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(レビュー) ヤクの売人が麻薬を密輸入するためにウソの家族をでっちあげて様々なトラブルを巻き起こしていくドタバタコメディ。
全米では1億ドルを超す大ヒットを記録したにも関わらず日本ではさっぱり話題にならなかった作品である。しかし、実際に映画を観れば全米大ヒットも頷ける好編で、こういう作品が出てくるからアメリカのコメディは中々侮れない。
疑似家族を通して家族の在り方という問題が鋭く説かれており、単純にお気楽なコメディで終わっていない所が良い。見終わった後には色々と考えさせられた。
はっきり言って、デヴィッドという男は、白状で独善的で実にだらしのない”ダメ人間”である。そんな彼が、ローズたちと一緒に旅をしていくうちに、いつの間にか情が芽生えていく‥という所がこのドラマのポイントだと思う。これは落ちぶれた男の更生ドラマと言える。クライマックスでは図らずも感動してしまった。
結局、本当の家族とは何なのか‥ということを考えた場合、それは”形”ではなく”中身”で決まるのではないかと思う。
例えば、世の中には心が通わないまったくの赤の他人のような家族もいる。それは只の形式的な意味しか持たない家族である。同じ空間に一緒にいるだけの隣人と何も変わらない。
逆に、デヴィッドたちのような血の繋がりがない赤の他人でも、家族の振りをしていくうちに次第に愛情が芽生え本当の家族のようになっていくケースもある。
本作は笑いを前面に出しているので、こうしたテーマが決して説教じみた嫌らしさになっていない。そこが良い。
物語は、しがないヤクの売人デヴィッドの視点で進行する。
彼は良い年をした落伍者である。冒頭、幸せそうな家族を持って順風満帆な暮らしを送っている級友に再会する。それを見て、未だに家庭も持てない自分の惨めさを思い知る。しかし、気ままな一人暮らしが肌についているデヴィッドはそのくらいではへこたれない。それがどうしたと開き直る。
そんなダメ人間のデヴィッドが、ひょんなことから家出少女と知り合い、更には同じアパートに住む年増のストリッパー、いかにも非モテ系な童貞少年と出会ってウソの家族を作り上げていく。全ては麻薬の密輸をするため‥。何とも馬鹿げた話であるが、この馬鹿さ加減が良い。
こうして彼らはキャンピングカーに乗ってメキシコの旅へ出発するのだが、当然道中では様々なトラブルに見舞われる。そのエピソードが一々面白い。
例えばメキシコのマフィアには怪しい目で見られるし、国境では麻薬犬に怪しまれるし、サスペンス的な面白さがドラマをスリリングに見せている。
また、彼らの旅に同行する中年カップルとのやり取りも面白く観れた。実は、旦那の方は麻薬捜査官で休暇で旅行を楽しんでいるというのが傑作である。デヴィッドたちは彼らの前で嘘の家族を演じながら必死になってキャンピングカーに積んである麻薬を隠そうとする。スカーフで包んで赤ん坊に仕立てた麻薬の袋が大型トラックに轢かれて卒倒する中年カップルが爆笑だった。しかも、この中年カップルは変態的な性癖を持っていてこの設定も笑わせてくれる。
クライマックスはメキシコマフィアの追跡をかわす逃走劇になっている。決してハードなアクションではなくかなり緩いアクションだが、これも全体のコメディ色を考えればまずまずの出来栄えである。
オチも中々洒落ていて良かった。