映画ありのまま

こんにちはorはじめまして、ありのと申します。 ここは見た映画について気ままにレビューを垂れ流すブログです。

そこのみにて光り輝く

2017.09.09(01:45)
どこか郷愁を覚えるドラマ。キャストの魅力も全開でドラマもミステリアスで面白い。

「そこのみにて光り輝く」(2013日)star4.gif
ジャンルロマンス
(あらすじ)
 北海道の小さな港町。そこに”ある出来事”をきっかけに仕事を辞め、無為な日々を送る男・達夫が住んでいた。ある日、彼はパチンコ屋で拓児という青年と知り合う。拓児は前科者のチンピラだったが、気心の良い奴で憎めなかった。彼の家には姉の千夏と寝たきりの父、父の介護をする母が住んでいた。千夏はまだ若かったが、年齢の割に随分と疲弊した様子で、達夫はそれが気になった。その後、彼は夜の町で体を売る千夏と再会する。

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(レビュー)
 鬱屈した日常の中で不確かな愛を探り当てながら、やがて運命の波に翻弄されていく男女の姿をドラマチックに綴った作品。

 陰惨なドラマなので好き嫌いがはっきり分かれると思うが、個人的にはかなり面白く観ることが出来た。まるで昔のATG映画のような薄暗さ。社会の底辺で泥まみれになって生きる人物たちのリアルさ。そうした所に、現代とはかけ離れた、時代錯誤と言っても良い懐かしさを覚えてしまう。ドラマの舞台は現代であるにも関わらず、何故にここまで”貧乏臭さ”を再現することが出来たのか?これは作品全体を包み込むトーンなのか?それともストーリーそのものに触発されて生まれ出た懐かしさなのか?理由はよく分からないが、少なくとも自分にとっては、何とも言えぬ郷愁に魅せられてしまった。

 原作は「海炭市叙景」(2010日)の佐藤泰志の同名小説である。今回も「海炭市叙景」同様、彼が生まれ育った北海道を舞台にした物語となっている。

 本作は何と言ってもストーリーの組み立てが非常に上手いと思った。全体的にミステリアスさを前面に出した構成になっていて、それによって見る側をグイグイと引き込んでいく。

 物語の前半は、寡黙で陰気な達夫のバックストーリを伏せながら進行する。彼は一体どこから来て、どんな過去を持っているのか?どうして他人と関わらないような生活を送るようになったのか?そのあたりの謎がドラマの求心力を作っている。

 中盤に入って来ると、達夫の謎は徐々に解明されていく。しかし、それによって見る側の興味が失われるということはなく、今度は千夏との恋愛がフィーチャーされていく。ここから物語の第三者、千夏のヒモが登場してきて達夫との間でひと悶着起こり、ドラマは更に複雑化していく。

 後半から、そのヒモと拓児が”ある事件”を起こし、それによって達夫と千夏の恋愛も暗転していく。ここでは千夏と拓児、ヒモ男の複雑な関係が非常に面白く観れた。三者の関係は、ある意味で損得勘定に則った合理的な関係とも言えるが、支配する側と支配される側という風にはっきりと力関係が出来上がているので、どこか”やるせなさ”を感じてしまった。

 監督は呉美保。今回初見の監督さんだが、演出はじっくりと端正に組み立てられており大変見やすかった。非常に安定感がある。

 例えば、序盤の達夫と拓児の出会いから始まる一連のシークエンス。歩く達夫と自転車に乗った拓児が交わす会話から徐々に二人の距離が近づいていく”アクション”に乗せた”語り”。これなどは大変上手いやり方だと思った。
 また、宅児の母親が寝たきりの父親の性処理をしていることを襖越しに分からせる繊細な音の演出。これも上手い。
 決して派手さはないが、いずれも計算され尽くされた演出の”妙”が感じられる。

 かと思えば、その一方で時折繰り出されるカットバックは不意をついた演出で非常にインパクトがある。
 例えば、達夫が見る夢(ハッパの爆発)と現実の海を結ぶカットバックには度肝を抜かされた。山と海という舞台の違い、土埃と水の色彩ギャップが強烈である。
 極めつけはラストシーンである。この映画は光と影の使い方が大変上手いのだが、ここも正にそうで、薄暗い拓児の屋内から朝焼けの光が広がる屋外への移動をワンショットで捉えている。この明暗のギャップは、達夫たちの背負ってきた暗い人生と、これから目指すべき光り輝く人生の対比を暗に表しているようで感動的だった。

 また、本作は基本的には達夫と千夏の恋愛ドラマである。当然、二人のベッドシーンも登場してくるのだが、その描き方もじっくりと演出されていて、スタッフとキャストの気概が感じられた。

 一方で、雑と感じた箇所が1箇所だけあって、そこはもう少し丁寧に描写して欲しかった。それは千夏がヒモから解放されて小さな工場で働くことになった経緯である。劇中では、具体的に彼女がその工場で働くことになった経過が一切描かれていない。そのため少し唐突に映ってしまった。

 キャストも皆、好演している。
 達夫役は綾野剛。中盤までは前髪を垂らして表情を余り表に出さない造形を貫いている。素性の分からない青年という役所に暴力性と神秘性を取り入れた所がGood。暗い過去を引きずるキャラクターに特有のニヒリズムも様になっている。

 千夏を演じた池脇千鶴も熱演している。先述した濃厚なベッドシーンにも果敢に挑み、その役者魂はアッパレの一言。しかも、若くしてここまでの疲弊感を出せるのは、彼女をおいて他にはいないだろう。また、これだけ熱演してしまうと、普通であれば過剰に映りかねないのだが、そこをギリギリの所で上手く抑制しているように思った。

 そして、拓児を演じた菅田正輝の愛嬌のある演技は、場を和ませるという意味では最も強く印象に残るキャスティングだった。まるで一人だけ映画の世界から飛び出してくるような活き活きとした演技が抜群である。そして、そんな飄々とした彼も後半の”ある事件”をきっかけにシリアスに転じてしまう。人生の明暗をドラマチックに見事に演じて見せており、その演技力も高く評価できる。
 今や日本人若手俳優のトップにまで上り詰めた彼だが、その才覚は本作と同年に製作された「共喰い」(2013日)の中にすでに見て取れる。今後の更なる活躍が楽しみである。

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