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刑務所の中

御馳走が美味しそうに見える。しかし、それでいいのか?という気もしてしまう。

「刑務所の中」(2002日)star4.gif
ジャンル人間ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ)
 花輪は銃刀法違反で懲役3年の刑で日高刑務所に収監された。同じ房にはひとクセもふたクセもある4人の受刑者たちがいた。刑務所での暮らしは厳しい規律はあるものの、予想に反して居心地が良かった。休憩時間にはグラウンドで行われる草野球に参加したり、正月には御馳走が振舞われたり、テレビも見れるし雑誌も自由に読めた。花輪にとってはそんな生活が快適なものになっていく。

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(レビュー)
 花輪和一の同名コミックを実写映画化した作品。

 原作は花輪自身が体験したエッセイ漫画で、映画の中で描かれていることの幾つかは実話と言うことである。刑務所内の生活とは一体どういうものなのか?それを知ることが出来るのが本作の一つの見所である。

 監督は崔洋一。脚本には同氏の他に、今や映画監督として活躍する中村義洋が参加している。

 崔監督と言えば、どちらかというと硬派な作家というイメージがあるが、今回は随分と緩いコメディテイストの作品となっている。おそらく原作の妙味を上手く再現しようとして、そうしているのだろう。中々よく出来ていたと思う。

 本作のもう一つの大きな見所はキャストである。個性的な俳優陣の肩の力を抜いたアンサンブルは中々見応えがあった。
 主人公の花輪を演じた山崎努は、飄々とした表情と喋り方で、作品全体のムードを”ゆる~い”感じに作り上げている。それによって、既存の刑務所物にありがちな殺伐としたイメージとは正反対の、終始朴訥としたテイストが漂う。
 花輪と同房になる4人の囚人たちも夫々に個性的な俳優が演じていて興味深く観れた。香川照之、田口トモロヲ、松重豊、村松利史。かなりアクの強い面々が揃っている。彼らのやり取りは、見てて終始飽きなかった。

 例えば、部屋の掃除で見つかった陰毛が誰の物かで言い争いになるシーン。松重の腕に書かれた刺青が「仁義」ではなく「仁議」だったことがバレて皆にからかわれるシーン。金持ちの御曹司である香川がブランド靴のうんちくをイヤらしい顔で自慢げに披露するシーン。こうした何気ない日常の積み重ねが夫々の個性を引き立て、そのキャラクターを愛すべき存在へと仕立てている。

 一方で、刑務所には厳しい規律もある。囚人たちが働く作業工場では勝手な行動は許されず、作業以外のことをする時には一々監視員に許可を申し出なければならない。花輪は落とした消しゴムを拾うために監視員に「願いまーす!」と手を上げていた。

 また、これは理解不能だったのだが、クロスワードパズルをしただけで懲罰房に入れられる囚人もいた。ただのクロスワードパズルが何故いけないのか?その理由が全く不明であるが、ともかくもこの辺りの理不尽さを見ると、まるで軍隊並みの厳しさであることがよく分かる。
 こうした非人間的な扱いを受けるのも、やはり刑務所物のお約束と言える。画面から伝わってくる以上に、実際には相当厳しい面があったのだろう‥と想像できた。

 とはいえ、花輪自信はこうした窮屈な生活を苦痛と感じず、むしろ安息を覚えていくあたりが、この映画のおかしさであり面白い所である。

 思うに、彼は根っからのニヒリストなのだろう。3度の食事はきちんと出るし、メニューも質素ではあるが健康のことを考えれば良質である。これなら外の暮らしよりよっぽどマシではないか‥と、彼は考える。住めば都と言う言葉があるが、まさにそのようになっていくのだ。

 確かに人間は贅沢をしすぎると、かえってありがたみを感じなくなってしまうものである。ある程度制限された中で暮らした方が幸せなのかもしれない。

 花輪たちが食べる刑務所の食事は実に質素なものである。しかし、だからこそ正月やお盆といった年に数回の御馳走がより一層美味しく感じられるのである。そういう意味では、刑務所の生活は極めて健康的とも言える。

 しかし、その一方で自分は花輪が刑務所の暮らしに慣れ親しんでいく所に、何となく怖さも覚えてしまった。
 娯楽も快楽も乏しい生活に飼いならされてしまう人間の脆さと言えばいいだろうか‥。刑務所の暮らしは規則正しくて健康的かもしれない。しかし、それと引き換えに大切な物を失ってはいないだろうか。つまり、これは人間性の喪失なのではないだろうか‥。

 特に、独房でやらされる医療袋を作る作業などは完全に人間性の喪失に見えた。この作業に奇妙な充実感を覚える花輪の姿は非常に危うい。まるで流れ作業をする機械のようで、どこか狂気すら感じてしまう。

 一見ユートピアに見えて実はディストピアだった‥というのはSF映画などではよくあるパターンだが、刑務所の実録をリアルに再現したこのドラマも正にそうではないかという気がした。安穏と観れる中にゾッとするような怖さが感じられる。

 ラストも然り。少々歯切れの弱さを感じるが、おそらく囚人たちの虚無的な暮らしを暗に示したかったのだろう。ハッピーエンドのようには思えなかった。やはりちょっとゾッとさせられる終わり方である。
[ 2017/10/10 04:08 ] ジャンルコメディ | TB(0) | CM(0)

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