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網走番外地

若き健さんの魅力が存分に詰まった傑作!

「網走番外地」(1965日)star4.gif
ジャンル人間ドラマ・ジャンルアクション
(あらすじ)
 網走刑務所に橘真一が収監される。一緒に収監された権田と共に曲者揃いの雑居房に入れられた真一は、そこで殺人罪で服役中の房内のリーダー依田に目をつけられる。何かと嫌がらせを受けるようになった真一は、ついに我慢の限界に達し、乱闘騒ぎを起こす。真一と依田、そしてその争いに加担した権田は独居房で反省を促された。その後、落ち込む真一の元に、保護司・妻木が妹からの手紙を持ってくる。

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(レビュー)
 ヤクザの数奇な運命を軽快な演出で描いたアクション活劇。

 主演した高倉健の人気もあり、この「網走番外地」はシリーズ化され全部で18本製作された。健さんと言えばニヒルで男臭いアウトローといったイメージがあるが、本作ではまだ若々しい兄ちゃんといった風貌で、後年の渋さはまだない。しかしながら、人情味を醸したキャラクター性は後の役に通じるものがあり、そういう意味では同時代に製作された「日本侠客伝」シリーズと共に、今シリーズは高倉健の俳優としてのイメージを確立させた作品と言っていいだろう。ファンであれば押さえておきたい。

 物語前半は刑務所内を舞台にした群像劇になっている。真一と同じ雑居房で生活する囚人たちは夫々に一癖も二癖もある連中ばかりで、時に激しく衝突し、時に熱い友情で結ばれていく。

 特に、真一と最年長・阿久田の静かな絆にしみじみとさせられた。阿久田の正体が判明する所が一つの見所で、彼は前半部のキーマンとなっている。

 後半からは、いわゆる刑務所物ではお馴染みの脱獄アクションになっていく。北海道の広大なロケーションも相まって、スケール感たっぷりな映像が面白く見れた。

 そして、ここでキーマンとなるのが真一の保護司である妻木である。正直、彼のバックボーンが今一つ掘り下げ不足という気がしたが、とにかくクライマックスの真一との対峙は大変見応えがあった。実にスリリングに活写されている。惜しむらくはエンディングがアッサリしすぎた点だろうか‥。

 尚、後半部における真一の脱獄劇は、一緒に服役した権田と手錠を繋がれた状態で展開されていく。このシチュエーションについては色々と深く考察できる。

 権田は徹底した悪人として描かれており、それに対して真一は悪人から善人へ回帰しようとする人物として描かれている。つまり、権田は悪心を、真一は良心を体現したキャラであり、この二人の逃走劇は言わば「善」と「悪」の対立ドラマとなっている。真一の心の葛藤を炙り出す上では見事なシチュエーションである。率直にドラマとしての見応えを感じた。

 尚、このシチュエーションで思い出されるのがT・カーティス、S・ポワチエが主演した「手錠のままの脱獄」(1958米)という映画である。白人の黒人に対する人種偏見がまだ厳然としてあった時代に製作されたこの映画は、社会派娯楽作品として非常によく出来た傑作だと思う。人種の異なる彼らは反目し合いながら、同じ運命を共にしていくうちに次第に友情で結ばれていく‥という、とても感動的なバディ・ムービーとなっている。

 この「網走番外地」の真一と権田の逃走劇のプロットは「手錠のままの脱獄」と共通するものがある。ラスト直前の真一の”ある行動”は、それまで対立していた二人が一転、同じ方向に向かって歩くという結末に昇華されている。これぞ正にバディムービー的なカタルシス。深い感銘を受けた。
[ 2017/10/15 22:54 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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