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オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分

トム・ハーディーの芝居に惹きつけられる。

「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」(2013英米)star4.gif
ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 コンクリート会社で現場監督の仕事をしているロックは車でハイウェイを走らせていた。彼が向かっているのは遠く離れたロンドンの病院。そこで不倫相手の女性が出産しようとしていたのである。実は、彼には翌朝に重大な仕事があった。そして、この夜は愛する家族との団らんの約束もあった。しかし全てを捨てて彼は必死に車を走らせていく。

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(レビュー)
 順風満帆だった男が全てを捨てて新しい人生を掴み取っていく様を斬新な構成で綴った作品。

 いわゆる1シチュエーション型のスリラーだが、ランタイム90分弱と短く、軽快なテンポで進むので最後まで面白く観ることが出来た。

 また、ロックを演じたT・ハーディーの好演も大いに見応えがある。本作は彼の一人芝居の映画となっている。家族や同僚からひっきりなしにかかってくる電話の対応、過去の自分を回顧しながら自問する芝居は、まさに独壇場といった感じである。その熱演に惹きつけられた。

 物語は、ほぼリアルタイムで進行する一夜のドラマとなっている。ロックは過去に仕事先で一度だけ関係を持った恋人がいて、その彼女が赤ん坊を出産することになる。知らせを聞いたロックは病院へ急行することになる。しかし、翌朝には大事な仕事が控えている。また、その夜は家族との団欒を約束していた。ロックはそれらを全て断って不倫相手の出産に立ち合おうとハイウェイを突っ走る。

 どうしてロックは彼女に対してそこまでするのか?それは映画を観ていくうちに段々と分かってくる。本作はこのあたりの物語構成も中々よく出来ている。

 実は、ロックは過去に父に捨てられたトラウマを抱えている。その時に受けた心の傷が今でも彼の心を蝕んでいるのだ。そして、自分は父と同じような人間になりたくない、生まれてくる子供のために良き父親になろうという使命感が、彼を突き動かしているのである。

 しかし、それでは仕事仲間や愛する家族はどうなるのか?ということになる。ここが本ドラマのミソである。あちらを立てればこちらが立たず。こちらを立てればあちらが立たず。そうした葛藤がロックの胸中に渦巻き90分弱のドラマを見事に牽引しているのだ。

 本作はロックの行動に一定の理を持たせながらも、果たしてそれが正しい選択なのかどうか?という問いかけを常に観客に投げかけている。この映画の面白い所は正にここで、観ている我々もロックの心境に寄り添いながら、彼の葛藤を身近なものとして考えられるのである。

 ギリギリの状況に置かれた人間の心理ほど面白いものはない。本作はその面白さをコンパクト且つ切れ味鋭く詰め込んだ意欲作になっている。

 監督、脚本はスティーヴン・ナイト。元々脚本家として活躍していた人物らしく、監督としてはこれが長編2本目ということである。車中のシーンが延々と続く映画を、画面のメリハリを上手くつけながら飽きなく見せた所に非凡なセンスを感じる。

 ただし、一点だけ不満に思った個所があった。ロックは急いで運転している割に、結構な台数の後続車に追い抜かれていた。このあたりはどう解釈したらいいのか?それが彼の迷いを意味しているとも捉えられるが、そうであるならばもう少しそのあたりの心理を表面化しても良かったように思う。切迫した状況を失する絵面で残念だった。
[ 2017/12/04 00:40 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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