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ウォーリアー

総合格闘技界を舞台にしたハードな人間ドラマ。

「ウォーリアー」(2011米)star4.gif
ジャンル人間ドラマ・ジャンルスポーツ
(あらすじ)
 アルコール依存症だった父のせいでバラバラになってしまったコンロン家。二男トミーは14年ぶりに父バディの元を訪ねる。一方、高校教師になった長男ブレンダンは、妻子と幸せな家庭を築いていた。病気の娘の治療費のために、かつて格闘家でもあった彼はファイトマネー目当てにアマチュアのリングに上がる。しかし、このことが学校にバレてしまい停職処分になってしまう。その頃、トミーも大学時代に培った格闘家としての腕を試すべく総合格闘技のジムへ入門した。彼はそこで世界ランカーの選手をノックアウトして周囲を驚かす。

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(レビュー)
 総合格闘技にかける兄弟の壮絶な戦いをエネルギッシュに描いた作品。

 ボクシング映画はよく目にするが、総合格闘技を描いた作品というのは余り無いのではないだろうか?昨今のMMAブームもあってか、今作はそこを舞台にした異色のスポーツ映画となっている。

 とはいえ、あくまで総合格闘技はドラマを成す一つのピースに過ぎず、本文は長年対立していた兄弟の愛憎ドラマである。
 本作最大の見所であろう後半部のファイトシーンは、専門家が観れば色々と突っ込みたくなる部分があるかもしれない。ただ、そうした欠陥があるとしても、ドラマ自体はとても丁寧描かれていて、自分は好感を持った。

 コンロン家はアル中の父バディのせいでバラバラになってしまう。長男ブレンダンは母に引き取られ、二男トミーは父に引き取られる。正に運命のいたずらによって幼い兄弟の人生は別離してしまう。映画の語りは夫々にあり、彼らが辿ってきた過去、因縁が徐々に明るみになっていく‥という構成になっている。

 二人は共にレスリングの選手だったこと。バディはトミーの方に才能を見出し熱心にコーチしていたこと。トミーが戦争に出兵したこと。家族を崩壊させたバディを兄弟とも憎んでいたこと等々。家族のバックストーリーが、兄弟の長年に渡る確執を浮き彫りにし、父の贖罪の意に悲哀の色を滲ませていく。

 少し根気よく見てやらないとしんどいかも知れないが、中々ミステリアスに描かれていて個人的にはかなり引き込まれた。

 やがて、憎しみ合っていた兄弟はMMAのトーナメントで顔を合わせることになる。容易に想像がつく展開ではあるが、それまでの2人の半生が丁寧に描写されているおかげで感情移入も十分。果たしてどちらが勝つのか?トミーの荒んだ心は救われるのか?バディは息子たちに許されるのか?ブレンダンの娘の運命やいかに?といった様々な問題が決着を見せる。このクライマックスの戦いは、流血まみれの派手な格闘となっており見てて興奮させられた。と同時に、なぜ兄弟でここまで争わなければならないのか‥という悲劇性に泣かされてしまった。

 また、個人的には決戦前夜となる夜の海辺のシーンも印象に残った。ここで兄弟は初めて言葉を交わし夫々の胸中を告白するのだが、この時のトミーの苦しみ、悲しみは見てて胸が痛んでしまった。

 監督・原案・共同脚本はギャヴィン・オコナー。初見の監督であるが演出手腕は中々の物である。キャストの熱演のおかげもあると思うが、クライマックスとなるファイトシーンは大変熱気に帯びた映像に仕上がっている。

 ただし、このクライマックス・シーンで1点だけ蛇足かな‥と思う箇所があった。トミーはイラク戦争で戦友の命を救った英雄として周囲から称賛を浴び、彼を応援しようとたくさんの兵士が会場に駆けつける。盛り上げたいのは分かるが、これは無粋である。そもそも、彼の名誉の救出劇がニュースになったのは試合の前日である。あれだけ大勢のチケットをどうやって入手したのだろうか?かなり奇異に映った。
 
 もう一つだけこの映画で不満がある。それはブレンダンの元生徒たちによる応援である。ライブビューイングという形でお祭り騒ぎのように盛り上がるのは結構だが、誰がどうやってあれだけの規模の会場を用意したのだろうか?そこもかなり気になってしまった。

 キャストではトミー役を演じたT・ハーディーの憂いを帯びた演技が素晴らしかった。彼は本作のために肉体改造を施し、この役に望んだと言う。その成果は見事に発揮されている。
 ブレンダン役を演じたジョエル・エドガートンも好演。彼は「キンキーブーツ」(2005米英)で見た時とは打って変わって、対するT・ハーディーに負けず劣らずなタフな身体を作り上げている。
 そして、二人の父親役バディを演じたN・ノルティも渋い演技を見せている。アルコールで身を滅ぼした中年の孤独を淡々と切なく演じている。特に、長年絶っていた酒に手を出してトミーの前で泣き崩れる演技は絶品だった。この時バディとトミーの間に少しだけ父子の絆が戻った‥。そんな風に思えた。
[ 2017/12/09 00:31 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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