驚異のアニメ―ションに目をみはるばかり。
「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」(2017米)
ジャンルアニメ・ジャンルアクション・ジャンルファンタジー
(あらすじ) 病気がちな母と2人でひっそりと暮らしている少年クボは、三味線の音色で折り紙を自在に操る不思議な力で大道芸を披露していた。そんなある日、何者かに命を狙われ、間一髪のところを母の犠牲によって救われる。一人になってしまったクボだったが、そんな彼の前に厳しいけれど世話好きなサルと陽気な弓の名手のクワガタが現われ仲間となる。クボは自らの出自と一族を巡る秘密を探る過酷な旅へと出る。
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(レビュー) 「コララインとボタンの魔女」(2009米)を製作したスタジオライカが放つ驚異のストップモーション・アニメ。
古い日本を舞台に、数奇な運命に翻弄される少年の道程をアクションと感動で綴った冒険活劇である。
まず何と言っても、画面のクオイティの高さが尋常ではない。観ている最中唖然としっぱなしだった。キャラクターや美術に至るまで、まるでCGと見まごうほどのなめらかな動きで感心させられた。「コラライン~」のアニメーションはまだ人形っぽさが残っていたが、今回はそれをはるかに超えるクオリティである。これだけのアニメーションを作り上げたスタッフの努力と気概にまずは拍手を送りたい。
一方、ストーリーはというと、こちらはシンプルで誰でも入り込みやすい内容になっている。
旅のお供となるサルとクワガタの掛け合いも良い味を出しているし、アクション・シーンもケレンミがあって痛快である。
欲を言えば、黒幕である月のミカドの存在をもう少しフォローするのと、母の妹たちの存在意義をドラマの中でもっと絡めて欲しかった。「コラライン~」の所でも書いたが、ライカの作品はストーリー上、色々と突っ込み所がある。敢えて説明をしないで想像の余地を残しているようにも思えるのだが、この2点については重要な点なので詳細に語って欲しかった。
それと細かいことを言えば、黒幕の造形が若干中国寄りになっているのも気になった。
ただ、こうした不満は残るが、全体としては中々よく出来たドラマだと思う。何と言っても、サルとクワガタの見顕しにきちんと感動できたことが大きい。予想通りではあるが、映像の力によってそれが何倍にも感動的な物に見えてくる。
また、自分は今回の作品からクボの成長というドラマ以外に、もう一つのテーマを読み取ることができた。それは”物語る”ことへの執着である。
クボは母から自分の出自の話を聞いて、それを大道芸で披露している。しかし、母は記憶障害で肝心のラストが分からない。したがって、クボはいつまでたっても結末を語ることができない。今回のクボの冒険も出自を探る旅で、それは母が語る物語のラストを探ることを意味している。
つまり、この映画の物語は”物語”のラストを追い求めることがテーマとなっているのである。
昨今の終わりの見えないシリーズ化作品、特にアメコミ大作等が人気を博している。興行的に成功している以上、製作側は次々と続編を作ってお客の興味を引き続けなければならない。最近自分は、この傾向は如何なものだろうか‥と思うことがある。お客は物語を見に映画館へ行く。それは最後がどうなるかを楽しみに見に行くものだと思う。しかし、ラストで当面の敵を倒して一件落着。エンドロールの後に次回作の伏線が登場して終わる。これでいいのだろうか?自分などは、いつまでたっても終わりのない物語を見せられているみたいで釈然としない気持ちになってしまう。
本作にはそんな昨今の映画産業に対するアンチテーゼが込められているのではないだろうか?自分はクボの”物語る”ことへの執着にそれを感じ取った。
物語は終わりがあるから面白いのであって、終わりのない物語はつまらないものである。