これぞジャームッシュの真骨頂。
「パターソン」(2016米)
ジャンル人間ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ) ニュージャージー州のパターソンに、町名と同じ名前のバス運転手パターソンが住んでいた。愛する妻ローラと愛犬マーヴィンに囲まれながら趣味の詩を書きながら平和な日常を送っていたが‥。
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(レビュー) 平凡なバス運転手の日常を淡々としたタッチで紡いだヒューマン・コメディ。
監督・脚本はJ・ジャームッシュ。80年代に「ストレンジャー・ザン・パラダイス」(1984米西独)、「ダウン・バイ・ロー」(1986米西独)といった作品で一躍世界的に注目された気鋭も今ではすっかり還暦を超えたオジサンである。その独特の作風は健在に昨今は円熟味、深みが増し、若い頃に比べてどこか余裕というか、良い意味で力の抜けた作品を撮り上げ様々な映画祭で高い評価を受けている。
例えば、カンヌで審査委員特別グランプリを受賞した「ブロークン・フラワーズ」(2005米)などは年輪を重ねたからこそ出せる渋さがあった。
ただ、その後に撮った
「リミッツ・オブ・コントロール」(2009米)、「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」(2013米)の2作品はスタイルに懲り過ぎて個人的には今一つだった。アートとサブカルネタの流露も鼻についてしまう。
それらに比べたら今回の「パターソン」は実に素朴で親しみがわく作品になっている。まるで初期時代を思わせるようなシンプルさで観てる最中ずっと心地よかった。
パターソンの平凡な生活を繰り返しの展開で見せながら、そこに芽生えるかすかなサプライズと奇跡を静かに語る作劇は、決して今風な作品とは言い難い。しかし、ジャームッシュのファンにとっては正に「これこれ!」と思わずにいられないのではないだろうか。
パターソンと妻ローラの対照的なキャラクターも良い。
パターソンは詩を書くという趣味を持っているがそれはあくまで趣味の範囲であり、家の地下室に籠って秘密のノートにしたためているだけで満足している。
対するローラはかなり自己顕示欲が強い女性である。例えば、部屋の内装をモノクロのトーンで塗ったり、自作のパンケーキをフリーマーケットで売ったり、突然カントリー歌手を目指してネット通販でギターを購入したり等々。パターソンと正反対で行動力が人一倍強い。
パターソンにとっては時にそれがちょっと迷惑だったりもするのだが(まだ乾かないペンキがシャツの袖についたり、キャベツとチーズのパイを夕食に出されて困惑したり)、基本的にはそんな彼女を誰よりも深く愛し、一緒に居られることに喜びを感じている。おそらくそれは平凡な自分に”生”の活力を与えてくれる大切な存在だからなのだろう。決まりきった日常に様々な潤いと変化をもたらしてくれる。それがローラなのだと思う。決して口に出しては言わないが、二人の暮らしぶりを見ていると彼のそんな気持ちが自然と伝わってきた。
二人の間に挟まる愛犬マーヴィンも良いキャラクターをしている。実は、この犬は単にマスコットキャラ的な役割ではなく、終盤で大きな”事件”を起こすキーになっている。この起用も意外性があって良かった。立派なメインキャラである。
この他に様々なサブキャラが登場してくるが、いずれも親しみやすく造形されていて好感が持てた。チェス好きなバーの主人、恋人を追いかける黒人青年、愚痴をこぼすパターソンの同僚、夜中のコインランドリーでラップをする男、そして所々に登場する双子の人々(!)等々。どこにでもいそうでどこにもいない‥そんな登場人物たちの悲喜こもごもがクスリとさせる。
やがて映画が終盤に入って来るとパターソンの日常に変化が訪れる。マンネリ化した日常から少しずつ逸脱していく様は、ある種サスペンス映画的な面白さも感じさせてくれる。そして、あの”変わらず”の平穏な日常をどこか懐かしく感じさせるのである。平凡が一番‥そんな言葉がこれほどしっくりくる映画もそうそうないだろう。
ラストのオチも中々ユーモラスで良かったと思う。少し解釈に戸惑う所もあるので、もう少しはっきりとしたメッセージにした方が良かったかもしれないが、物語の循環構造を見事に形成している。しみじみとした感動が味わえた。
キャストでは、パターソンを演じたA・ドライヴァーの存在感が印象に残った。ジャームッシュの演出意向もあるのだろうが、淡々とした演技を貫き、先に観た
「スターウォーズ/フォースの覚醒」(2015米)のカイロ・レンのイメージを完全に払拭している。
また、ジャームッシュ作品では「ミステリー・トレイン」(1989米日)以来となる永瀬正敏が重要な役として登場してくる。こちらは中々美味しい役所だと思った。
突然の訪問、失礼いたします。
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