映画ありのまま

こんにちはorはじめまして、ありのと申します。 ここは見た映画について気ままにレビューを垂れ流すブログです。

デトロイト

2018.02.03(01:31)
衝撃の実話を映画化。画面に額をこすりつけられるような圧迫感!
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「デトロイト」(2017米)星5
ジャンル社会派・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 1967年7月のデトロイト。黒人たちによる暴動が激化し、鎮圧に乗り出した軍や地元警察との衝突で街はまるで戦場と化していた。プロデビューを夢みる人気バンド“ザ・ドラマティックス”のメンバー、ラリーもその暴動に巻き込まれた一人である。彼は近くのモーテルに何とか避難するが、黒人宿泊客の一人がレース用の空砲をふざけて鳴らしたことから悲劇は起きる。それを狙撃手による発砲と思い込んだ大勢の警察官がモーテルになだれ込んできたのだ。ラリーを含めた宿泊客たちは、彼らのおぞましい尋問の餌食となっていく…。

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(レビュー)
 白人警官たちによる黒人への暴行を息詰まるようなタッチで描いた実話の映画化。

 監督はこれまでにも硬派な作品を世に送り出してきたK・ビグロー。このブログでは「ハートロッカー」(2008米)「ゼロ・ダーク・サーティ」(2012米)を紹介した。いずれも女流監督とは思えぬ剛直な内容で、観終わった後にどっと疲れる作品だった。今回の「デトロイト」もその作家性は健在である。

 本作の一番の見所は、何と言っても中盤の白人警官たちによるモーテルの宿泊客達に対する尋問‥というよりも拷問シーンであろう。約50分にも及ぶ長丁場で、このピリピリとした緊迫感は下手なホラー作品を凌駕するほどの恐ろしさである。この延々と続く拷問は一体いつまで続くのか?見てる最中ずっとハラハラしっぱなしだった。

 現場の恐怖、絶望感をビグロー監督は得意のドキュメンタリータッチで上手く切り取っている。恐怖に怯える黒人青年たちの表情に肉薄したカメラワークも上手く奏功していた。

 そして、このシーンから読み取れるのは、未だに続くアメリカの人種差別に対する監督の憤りと提言だ。トランプ現大統領の他民族を排除するような政策に対する非難の意味もあろう。今から50年前に起こった事件を描く意味は、まさにこれである。アメリカは未だにあの頃から変わっていないということを、この作品は訴えかけているのである。
 本作を観た多くの人が、人種差別のおぞましさ、愚かさについて考えて欲しいものである。

 映画は事件に関わった様々な人物たちの視点で描かれる群像劇になっている。加害者、被害者、そしてそれを傍観していた者。大きく分けるとこの3視点になる。

 この中で主要となるのは被害者側の視点である。プロデビューを夢みるドゥーワップ・グループのボーカル、黒人青年ラリーが中心となり、虐げられる側に立った黒人たちの”現実”をシビアに物語っている。彼は今回の事件で夢も親友も失ってしまい心に深い傷を負う。そして、孤独と悲しみを味わった彼は最後に”ある選択”をするのだ。
 現実には人種差別は厳然と存在し続けるが、ひょっとしたら遠い未来、全ての人間が平等に暮らせる日が来るかもしれない。そのために自分が出来ることをしよう‥という、そんな彼の勇気と行動が神々しい。隠滅としたドラマを感動的に掬い上げている。

 一方、加害者側の視点で描くドラマは、差別主義者の白人警官クラウスを中心に語られる。
 序盤からこの映画はカオスと化したデトロイトの風景を切り取っているが、その中で彼は窃盗した黒人青年を背後から撃つ。正当防衛でもなければ、凶悪な殺人犯でもない。ただの窃盗犯である。ちょっと度肝を抜かされてしまうが、彼は根っからの黒人差別主義者なのである。黒人をまるで虫けらのようにしか思っていない、まさに血も涙もない人間の皮を被ったバケモノである。
 ただ、その一方で実に稚拙な一面も持っていて、事の重要性を全く理解せず、一旦自分が不利な状況に陥ると途端に焦り出してその場から逃げ出そうとしたりもする。この幼稚性が更に彼を憎々しげに見せていのは演出の妙だろう。これほど悪役に徹した悪役キャラと言うのも珍しい。

 そして、本作にはもう一人、拷問シーンを傍で見ていた警備員ディスミュークスという黒人が登場してくる。彼は、ある種観客に最も近い存在、つまり事件を傍観するキャラクターとなっている。クラウスたちが拷問をヒートアップさせていくのをどうにか止めようとするのだが、彼自身も黒人という立場から余り強く出れない。結果的に、見て見ぬふりをすることしかできず、事件を拡大させてしまう。その後、彼にはその報いが下りてしまうのだが、元々正義感が強く心優しい青年だっただけに、その顛末は実に気の毒な物に思えた。もし自分が彼の立場だったら、やはり同じように現場では何もできなかっただろう。

 このように本作は3つの視点が入り組んだ構成となっており、更に登場人物も多いため、集中して観続けるのは大変労力を要する作品である。ただ、その苦労に見合うだけの重厚な鑑賞感が残ることは確かで、こういうのを力作と言うのだろう。改めてビグロー監督の臆せず挫けぬ創作姿勢には感服するほかない。
 昨今のアカデミー賞でも、こうした黒人差別を描いた作品が高い評価を得ているが、それにひけを取らないくらいの傑作である。

 ただ、余りにも白人警官を卑下するような内容だったからか、今年のアカデミー賞では完全に無視されてしまっている。自分などはその結果を見て、かつてのスパイク・リー監督の傑作「ドゥ・ザ・ライト・シング」(1989米)の不遇を思い出してしまう。あの時とは時代が違うとはいえ何かの恣意を感じずにいられない。

 キャスト陣の熱演も素晴らしかった。
 特にクラウスを演じたウィル・ポールターが印象に残った。どこかで観たことがある顔だなと思ったら、「なんちゃって家族」(2013米)に出ていたモテない少年役の”あの彼”である。あの時は完全に軽いノリのコメディ演技だったが、今回は一転して鬼気迫る怪演を見せている。今回の役はかなり難しかったと思うが、果敢に挑んだ所に今後の活躍を期待せずにいられない。

 一方、本作で難を言えば、後半の裁判絡みの展開だろうか‥。情報量が多い割に内容自体がよく理解できなかった。本国ではこの裁判は有名らしく、知っている人が多いのかもしれないが、事件そのものすら知らない自分にとっては少し不親切に思えた。

 また、前半のシーンで幾つか気になる点があった。例えば軍が狙撃手と女の子を間違えて発砲したシーンは事実に即したシーンなのだろうか?もしこれが事実だとしたらかなりの大問題であり、そのあたりの真偽も気になる所である。

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