ギレルモ・ワールドの萌芽が見れて面白い。

「クロノス」(1992メキシコ)
ジャンルホラー・ジャンルサスペンス
(あらすじ) 16世紀、ある錬金術師によって作り出された金色のスカラベ”クロノス”には永遠の命をもたらす秘密の機能が隠されていた。時を経て現代、骨董屋を営む老人ヘススは売り物の天使像の中からクロノスを発見する。手に乗せた瞬間、彼はクロノスによって謎の液体を注入された。一方で、不死を得ようとする大富豪のグァルディアも長年クロノスの研究をしていた。甥のアンヘルからついにクロノス発見の報を受けるのだが‥。
ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) 謎の精密機械”クロノス”を巡るサスペンス・スリラー。
監督・脚本はギルレモ・デルトロ。本作は彼の長編監督デビュー作である。
以降の作品を観ている人なら分かると思うが、すでにこの処女作から彼の独特のテイストは全開である。
例えば、錬金術師によるクロノスのメカニズムは
「ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー」(2008米)のクライマックスシーンで見られたものであるし、ヘススの孫娘アウロラの口がきけない設定は「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017米)のヒロインに通じるものがある。
また、死体を巡るブラック・ユーモアも如何にもギレルモ監督らしいグロさがあり、クスリとさせる。
映像トーンは、随所にダークさが散見でき、後年のギレルモ独特の萌芽がありありと見て取れる。
こうした設定、映像は後の作品の原形となっており、それが確認できるという意味ではとても興味深く観れる作品だった。
但し、本作単体として見ると、クロノスを巡るサスペンスがややこじんまりとしていて食い足りない。グァルディアのことをアンヘルが快く思っていない設定を利用して何らかの事件を起こしたり、アウロラを使ったサスペンス的な盛り上げをはかるなど色々と仕掛けようはあったと思う。しかし、物語は存外シンプルにまとめられていて物足りなかった。
しかし、サスペンス的な不満は置いておくとして、本作はヘススとアウロラの情愛ドラマ。これが中々良く出来ている。
アウロラは両親が他界しておりヘススが一人で面倒を見ている。言葉によるコミュニケーションはとれないが、それでも2人の絆は強く結ばれていることがよく分かる。この交流は中々味わい深かった。
映画のラストも二人の言葉なき会話によって締め括られている。ホラー寄りのサスペンスながら、観終わった後にはどこか心温まる鑑賞感が残る不思議なテイストとなっている。果たしてクロノスによって奇跡の力を手にしてしまったヘススは今後どうやって生きていくのか?色々と想像すると、どこか物悲しさも漂う。
劇中には、近所に住むメルセデスという中年女性も登場してくる。ヘススと彼女の交流も少しだけ描かれているが、こちらはロマンスに発展すわけでもなくその一歩手前で終わっておりサブ的な扱いになっている。中途半端な向きもあるが、この出過ぎない感じも決して悪くはない。
キャストではヘスス役を演じた老俳優の熱演が素晴らしかった。
アンヘル役を演じたR・パールマンも怪演とまではいかないものの、一癖ある造形がやはり印象的である。後にギレルモ監督たっての希望で彼は「ヘルボーイ」の主役に抜擢された。
尚、その「ヘルボーイ」だが第3作の製作は頓挫したということである。代わりに別のスタッフ、キャストでリブートが検討しているようである。果たしてどんな作品になるのか。こちらも気になる所である。